表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
王国への復讐と悪魔
94/194

<六剣>所持者の魔法

 第二防壁は第一防壁よりは強度は弱いが、フロキル王国の技術とアイテムをふんだんに使用して作成された堅牢な防壁だ。


 魔法耐性、物理耐性を併せ持つ防壁となっており、魔族であってもかなり特殊な特化能力を持っていない限り突破することは難しい。


 もちろん、大量の魔族が一転集中型の攻撃をしてしまえば破壊されるだろうが・・・


 そんな防壁に対して、それぞれの位置に散った場所から魔法攻撃を仕掛ける<六剣>所持者達。


 ヘイロンの<炎>、ナユラの<光>、スミカの<水>、アルフォナの<土>だ。


 彼らは剣を顕現させていない状態での魔法発動を行っている。


 魔法の制御は剣を顕現させていない状態の方が難しくなるため、修行もこの辺りを重点的に行ってきたようだ。


 ヘイロンの担当している防壁は、全てが溶かされて跡形もなくなった。


 魔法の直撃を免れている防壁は、壁がマグマの様になっている。


 もちろん地面もマグマの様な状態になってしまっているので、これでは、ある程度の時間をおかないと魔獣はこの場所を通ることはできないだろう。

 

 ナユラの担当している壁は、光の収束によって射出されたレーザーの様な物で切り出された。


 壁に大きな穴が開いている状態で、切り取られた箇所は非常に奇麗になっている。なぜハートマークの形に切り抜いたのかは後で聞いておこう。


 スミカの担当している壁は、津波のような大量の水によって壁が破壊されていた。

 水がある一定の範囲を外れることなく、集中的に同じ個所に水が押し寄せた結果だ。


 テスラムさんによればスミカももう少し修行を行えば、ナユラのように水を一点集中させたレーザーの様な物を使えるらしいが、ここまでには至っていないとの事だ。


 最後にアルフォナの担当している壁。


 ここは何とも言えない微妙な感じなのだが、防壁の下の地面を土魔法で根こそぎ空洞にしてしまい、特化能力の<重力>で上から防壁を叩き潰していた。


 これで第二防壁の四ケ所は大きく破壊された。


 魔獣の群れは突然目の前で破壊された防壁の穴に殺到したが、ヘイロンが作った穴だけは魔獣が第二防壁を超えることなく死に絶えてしまった。


 マグマ状態になるほどの高温にやられたのだ。

 魔獣は本能の赴くままに行動するので仕方がない結果ではある。


 もう少しすれば、この場所も魔獣達が通れるようになるだろう。


 他の三か所については魔獣が問題なく通過できており、第二防壁内にも多数の魔獣と魔族で埋め尽くされ始めた。


 これで残りは第一防壁だけだ。


 同じように第一防壁外に移動した<六剣>所持者達。

 ここで、第二防壁破壊時の判定がテスラムさんによって発表される。


『今回の魔法の発動に関しては、威力、速度共に全員問題ありませんでした。しかし、ヘイロン殿。魔法攻撃後の状態は良くありませんな。目的は魔獣達を通過させることです。あれでは、ある意味罠になってしまっています。この部分は大きな減点です。ナユラ殿は中々の表現力でした。能力を使いこなせている査証ですな』


『嘘だろ~!!』


『やった!!!』


 減点されて悔しがるヘイロンと、喜ぶナユラ。


『それではヘイロン殿は反省点を活かして、第一防壁の対処をお願いします』


『ふっふ~ん、ヘイロンさん。私もテスラムさんから問題ないとお墨付きが出ましたよ。良いでしょ~?』


『フン、まぐれだ、まぐれ!!俺も次こそは合格点になるんだよ。見てろよスミカ!!』


 気合十分のヘイロンと共に、全員が魔獣達と同じく第一防壁に向かう。


 再び壁に向かって攻撃を始める<六剣>所持者達。

 ヘイロンは特に慎重に力を制御しているようで、真剣な表情だ。


 今回は力任せに魔法を放つのではなく炎の発現箇所を限定的にすることによって、マグマの様な状態の範囲を狭めることにしたらしい。


 短くも、かなり濃い修行を行っていた六剣所持者達。


 そのおかげか、第一防壁の破壊は誰も問題なく行うことができていた。


 だが、第一防壁は防御力が相当高いので問題が見えなくなっただけなのかもしれない。


『よっしゃ見たかスミカ!俺も本気を出しゃこんなもんだ』


『凄いじゃないですけヘイロンさん。やればできる子だったんですね?』


『ったりめーだっ!!』


 言葉とは裏腹に、相当嬉しそうなヘイロン。

 今回もテスラムさんに認められなければ追加の修行になる予定だったらしいので、そのせいだ。


 魔獣の群れに点在している魔族は、突然第二防壁と第一防壁が部分的に破壊されたのを見て不思議そうな顔をしているが、罠とは認識しなかったようだ。


 第二防壁のヘイロン担当の場所は図らずも罠のようになってはいたが、時間の経過とともに問題なくなっている。


 本能で行動を行う魔獣達は、一斉に第一防壁を超えてきた。

 第一防壁内部は王城が存在しているので、その中にもなだれ込んでいる。


 その様子を暫くの間観察していた魔族も安全だと思ったのか、徐々に第一防壁内に移動を始める。


 この状態を作り出した<六剣>所持者達から帰還の意思が示されたので、<空間転移>でリスド王国に引き戻した。


「お疲れ。少し見ない間にかなり<六剣>の力を使いこなせるようになっていたんだな」


「そりゃそうだろう。ロイドは知らねーだろうが、あの修行をすれば誰でも技術は上昇するぜ?」


 そんな感想をヘイロンから聞いていると、俺の予想通り姉さんと仲良くなっていたナユラが、


「それでは、私はリアナ様の所に行ってきますね」


 と退出していった。


 正直、これからフロキル王国の惨状を見るより、ナユラには姉さんと一緒にいてもらった方がお互いに有意義だろう。


 姉さんとしても初めての異国の地での生活で、気疲れしていると思う。


 そこに、ナユラは元王族で意識も同じくした気の合う友人として接してくれているのだから、是非ともそちらを優先してもらいたい。


 残された俺達は、テスラムさんが準備した映像を見る。


 すでに魔獣の群れは宝物庫の前に到着しており、床で苦しんでいる豚共はなすすべなく魔獣に蹂躙されている。


「ば・・ぐぁ~・・・」


「ここを開けてくれ!!」


「ひぃ・・・助けて!!」


 これが豚の最後の言葉だ。


 一方この声や魔獣の群れによる振動、騒音を聞いている宝物庫の中にいる近衛騎士隊長であるコギン。


「何故こんなに早く第一防壁まで突破されているのだ!!もしや、この宝物庫も危険か?だが・・・これ以上安全な場所はない。大丈夫だ。ここは大丈夫なはずだ」


 ガタガタ震えているので、十分恐怖を味わっているのは確認できる。

 このままの状態では、魔獣共には宝物庫の扉を破壊することは不可能だ。


 だが、魔族が集まればその限りではない。


 そんなに簡単に集まることは無いと思うが、少なくともその期間は最大の恐怖を味わいつつ宝物庫の中で震えて生活することになる。


 睡眠もまともに取ることはできないだろう。


「だが、俺にはこの武器がある。大丈夫だ。大丈夫だ」


 呪文のように呟き続けている近衛騎士隊長であるコギン。


 だが、俺の予想に反してコギンの最後はかなり早くやってきた。


 そう、この辺りが安全であると判断した魔族の大半が、宝物庫の扉に集結してしまったのだ。


 魔獣からは発することのない別格の強さ。

 宝物庫の扉を介してもその力の奔流は少しは感じ取れるようで、コギンの震えは大きくなった。


 以前の近衛騎士隊長であれば、魔族の力を感じることはできなかっただろう。


 だが、ここしばらく、武具を使用した魔獣討伐を行ってしまったことによって精神が研ぎ澄まされてしまったのが仇になっている。


「大丈夫だ・・・大丈夫だ」


 武器を手にして扉を見つめるその目は血走っている。


 やがて、コギンの思いはむなしく扉は破壊された。


 すかさずコギンは杖を使った最大の魔法攻撃を行った。

 扉から侵入した最初の魔族は直接魔法を食らってしまい、あっという間に絶命した。


 だが、魔族は後から容赦なく宝物庫に侵入してくる。


 コギンも槍を投函し魔法でも継続して攻撃しているが、魔族側も十分に動ける広さのある宝物庫の中に入ってしまっているので、容易に躱してくる。


 やがてコギンは、背後から迫ってきた魔族の一撃を食らい昏倒する。


 そして・・・既に抵抗する術を持たないコギンは魔族の餌になり果てた。


「ロイド、これでフロキル王国の復讐は完了したな」


「ああ、復讐を始めてからここまで来るのに、思ったほどの苦労はなかったな。やはりテスラムさんの加入が大きい」


「恐れ入ります」


 だが、俺の復讐は終わっていない。


 次は魔王だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ