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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
王国への復讐と悪魔
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絶望を与える

 暫定ではあるが、クズの親玉である冒険者ギルドのギルドマスターが目の前で喚く。


「おい、貴様ら・・・いや、そこにいるのはロイドか。アルフォナもいるな。<六剣>を強奪した大罪人が何をしている」


「見ての通り食事だが?」


「そんなことはわかっている」


 唾を飛ばしつつ喚くギルドマスター。


 商人崩れは俺達を囲うように移動しており、手には貴族の邸宅から奪ったであろうそこそこの武器を持っている。


「フム、かなりのレアドロップもありますな。これは中々良い状況です」


「勘弁してくれ。おいお前達、攻撃するならもう少し後にしろ。わかったな!」


 防壁を破られないギリギリの範囲を維持しなくてはならないヘイロンにとって、レアドロップでの攻撃は非常に調整が難しくなる。


 その部分だけ強度を上げる必要があるからだ。

 一気に全ての膜の強度を上げてしまうと、通常の武器を持った商人が逆に怪我をしてしまう可能性がある。


 その時点でスペシャルコースの修行が決定する。


 それがわかっているヘイロンは、レアドロップを持っている商人崩れに攻撃をしてくるなと必死で警告しているのだ。


 少々時間を稼げば、他の<六剣>所持者が膜を張る番になると思っているのだ。


 だが、飢えている連中にそんな言葉は届かない。

 容赦なく一斉に攻撃し始めた。


「ぐ・・・クッ・・・こいつら、後にしろと言っただろうが!」


 ヘイロンは苦しそうな声を出す。

 決して攻撃を受けて苦しんでいるのではない。


 膜の強度調整に必死で声が出てしまっているのだ。


 他の<六剣>所持者達、俺もだが、そんなヘイロンンと周りにいる盗賊崩れの無様な様子を見つつ、食事を進めている。


「ヘイロン殿!<六剣>を顕現させた状態でそのように苦しんでいるのでは、無詠唱で発動できたとしてもまだまだですな。この程度であれば、悠々と食事をとれるくらいでないと困ります」


 必死の形相で膜を維持しているヘイロンだが、テスラムさんの評価は厳しい。


「もう少々この状況で、実地の修行と行きましょうか」


「ぐ、クッソ・・・こいつらのおかげで・・・」


「ヘイロンさん、頑張ってくださ~い。モグモグ」


 まだ自分の番が来ていないからか、余裕の表情で食事を楽しんでいるスミカ。

 俺の予想じゃ、お前もヘイロンと同じ状況に陥ると思うがな。


 ギルドマスター率いる盗賊連中は、食事を得ようと必死の形相で最後の力を振り絞っている。

 そもそもが戦闘職ではなく、飢えにより体力を奪われている状況なので攻撃は長くは続かなかった。


 膜の外で力なく座り込んでしまい、一部はそのまま膜にもたれかかってしまっている。


「ふぃ~、何とかなったぜ。クッソこいつら後にしろと言ったのを無視しやがって」


 額に浮かんだ汗をぬぐいつつ、椅子に座るヘイロン。


「フム、まあ、おまけして及第点と言ったところでしょうか」


「よっしゃ~!!」


 ヘイロンの喜びようは凄まじい。


 実は、ヘイロンがこちらに戻ってきている最中に膜を張る力は解除している。

 膜に凭れていた盗賊・・・いや、元商人はそのまま地面に倒れ伏した。


 ギルドマスターだけは腐っても戦闘職の元締めなのか、未だに殺気のこもった目で武器を構えてこちらを睨みつけている。


 だが、膜が解除されたとは思っていないようで、突撃はしてこない。


「では、かなり難易度が下がっていますがスミカさんの番ですな」


「ふぁ~い・・モグモグ」


「おいスミカ。飲み込んでから返事しろや!」


 ヘイロンが食事に手を伸ばしつつ、スミカを叱る。

 そんなスミカは、食事に未練がある様子を見せつつも<水剣>を構える。


 そして、ヘイロンと同じように薄い水の膜を生成した。


 今度は赤ではなく透明だが薄い青色だ。

 ヘイロンと言い、スミカも無詠唱で素早く膜を生成し終えている。


「な、今度は青い防壁だと?」


 ようやくヘイロンの赤い膜がなくなっていたと分かったギルドマスターが、続けざまに青い膜を張られてしまって悔しがっている。


「く~、うめ~!!この飲み物もこの食事に合うじゃねーか。サイコーだ!!そう思わねーかアルフォナ!!」


「うむ、そうだな。非常に良い食事だ」


 ヘイロンはギルドマスターを煽っている。

 俺もだが、直接不利益を与えられた相手なので怒り心頭だからだ。


「こんなうめー食事を食べられるんなんて幸せだなー。そこのクズもそう思うだろ?ギャハハ、なに涎垂らしていやがるんだ。汚ねーな」


「く、貴様・・・ヘイロンだな。ギルドマスターであるこの私に向かってそのような口をきくとは・・・」


「いやいや・・・この国の連中は現状を理解できないやつらが多いな。お前、今の状況がわかってるか?外には出られない。外から助けも来ない。そして、王城側・・・中にも行けない。当然助けも来ない。お前が迎える未来は、餓死か他の盗賊崩れから襲われて死亡だな。ざまあみやがれ」


「バカを言うな。確かに魔獣に囲われて外に行くことは難しいだろう。だが、そうだとしたらなぜ貴様らはここにいる。外から侵入するのは何かしらの方法があるはずだ。そう考えると、他国からの援助ももう間もなく届くと言う事だろう」


「ギャハハハ、お前本当にバカだな。いいか、せっかくお前の目の前で顕現させてやったんだ。今のスミカの手にあるのはなんだ?」


 ギルドマスターは、改めて今現在膜を張っているスミカの手元を見る。


「あれは<水剣>。お前も窃盗したのか?」


「おい!クズ!!!そんな訳ねーだろーが!!。そもそも<六剣>を使えるのは<六剣>に認められた者だけだ。たとえ所持者から奪ったとしてもその力を使う事・・・いや、その前に剣にまともに触れることすらできねーんだよ!!!」


「嘘をつくな。誰も証明できていない事をグダグダと!貴様ら程度が<六剣>に認められるわけがないだろうが!!」


 あまりに認めないので、ヘイロンは無視を決め込むことにしたようだ。


「ロイド様、この際ですからこやつに現実を知らしめますか?試しに今スミカ殿が手にしている<水剣>を膜の外に置いて状況を分からせますか?」


「ああ、俺は良いが・・・スミカ?お前も良いか??」


「はい、問題ありません」


 さすがに<六剣>を離すと膜は維持できないのだろうか、膜を消した後にその場に<水剣>を置いて一旦俺達の方に戻ってきたスミカ。


 それを見て、俺はギルドマスターに僅かな希望を与えてやることにした。


「ギルドマスター崩れのそこの盗賊!!ヘイロンが言っていたことを証明してやる。そこの<水剣>を手にしてみろ!!<水剣>所持者のスミカ以外が触れたらどうなるか、実際に剣を持てるか自分自身で試してみろ」


「バカな奴だ。この俺が<水剣>所持者になったら貴様らを排除した後に第四防壁の魔獣・魔族を討伐して一気に英雄になってやる」


 バカはお前だ・・・とは言わないでおく。


 こっちには<六剣>所持者が全員いる。つまり、手元に剣を持っている者が五人いるんだ。

 そこに、万が一お前が<水剣>を持ったとしても一対五だ。


 とは言え目の前に開放されている<六剣>が一剣<水剣>がある為に興奮しているのか、こんな簡単な考えも思い浮かばないようだ。


 あんなに強気なセリフを吐きつつも、震えながら<水剣>に手を伸ばす。

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