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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
王国への復讐と悪魔
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第三防壁の現状

 俺は既に人のいなくなった謁見の間から、正に魔獣の群れとフロキル王国の復讐対象者が住んでいる場所を隔てている第三防壁の映像に目を移す。


 第三防壁の上には第四防壁内の状況を把握し、必要に応じて攻撃できるような十分な広さが確保されている。


 そこに集まっているのは、第三防壁内部に住んでいるSランク冒険者、商人等だ。


「これほどの魔獣の群れ、見たことがないぞ。この増え方は尋常じゃない。このままでは、幾ら第三防壁と言えども突破される可能性がある」


「じゃあどうする?」


 今会話しているのはSランク冒険者だ。商人は絶望の表情を浮かべるだけで会話はしていない。


「俺達である程度間引きする必要があるだろうな」


「あん?なんでSランクである俺達がわざわざそんな事をしなきゃなないんだ?」


「その通りだな。第四防壁で燻っている冒険者共が死ぬ気で討伐すれば良いではないか?」


「その第四防壁内部がこのありさまだ。当然誰一人として生きちゃいないさ」


 第四防壁にあるギルドは、冒険者や住民達が全員出国してしまった事をSランク冒険者に伝えていない。


 そして、Sランク冒険者達は自分から情報を得ようともしていない。


 ギルドは、収入源が無くなったことをSランク冒険者達に伝えていないようだ。

 彼らを恐れて秘匿していたと言った所だろう。


「そうだったな。するとあそこの住民達は全員魔獣の餌になった・・・と」


「なんだ?誰か気になるやつでも住んでいたのか?」


「そんな訳はないだろう。あんな場所に住む連中に興味はない」


「そりゃそうだな」


「だが、このままこんな場所で喋っていても仕方あるまい。ここから出来る範囲でこいつらを間引かないと、この防壁も危うくなるぞ」


 そう言いつつ、レアドロップであろう武具をそれぞれが手にする。

 現役時代に得た産物だろう。立派な物だ。


 だが、それを持つ彼らの体躯は見るも無残だ。

 肥え太った体から、一切厳しい環境に身を置いていなかったことがわかる。


 だが、腐ってもSランクとレアドロップ。多少の魔獣であれば討伐することは可能だろう。


「おいおい、あいつらがSランク様か?随分と見た目麗しいじゃねーか」


「全くだ。あんなぶよぶよでは肉の壁にもならんな。本当にこの国の連中は騎士道精神がわかっていない」


「私のプルちゃんの方が素敵なぷよぷよ具合ですよ」


 最後のナユラは、自分に与えられたスライムと比較している。

 その程度と比較されてしまう程の見てくれになっているのだ。


 やがて、遠距離攻撃ができるSランク冒険者達が攻撃を始めた。

 魔法、弓、遠距離斬撃などだ。


 まあまあの威力ではあると思うが・・・何かが違う。

 思わず怪訝な表情をしてしまったのか、テスラムさんが説明してくれた。


「ロイド様、彼らの今の実力は手持ちの武具の性能に頼り切っております。そのため、武具のみの力での攻撃になってしまっており、想定以下の威力に感じられたのでしょう。あのような攻撃、同じ武具さえあれば赤子でもできますな」


 実際に、防壁上部から放たれた攻撃はそこそこの攻撃ではあり、一回の攻撃で魔獣が数匹ほど倒れている。


 しかし、攻撃が届いている範囲は防壁に近い場所のみで、少し離れた場所に攻撃が届くことはなかった。


「グハハ、なんだこいつら!さんざん大物ぶっておいて、このヘナチョコ攻撃は!これならレアな武具を持っていない状態のあの御仁の方がよっぽど強いんじゃねーか?いや、比較する事すら失礼だな」


「私もそう思うぞ。見てみろ、丁度あの御仁が魔獣の溜まり場に攻撃しておられるが、手にしている槍は何の変哲もない槍だが威力が根本的に違う。そして付き従っている騎士達もかなりの強さだ。連携も見事としか言いようがない。流石は騎士道精神の何たるかを理解しているお方だ。尊敬に値する」


 アルフォナが感動の言葉を漏らすと、ナユラとスミカが追随する。


「確かに凄い迫力ですね、キュロス辺境伯様一行は」


「ええ、あのお方達は常に魔獣と向き合ってきたお方ですから。あの程度は造作もないでしょう」


 確かに、キュロス殿一行は互いをフォローし華麗なまでの連携を見せて、危なげなく魔獣を討伐している。


 一方、ある意味安全な位置にいる防壁上から攻撃しているSランク殿は、無様としか言いようがない。

 更には、久しぶりの攻撃の結果が魔獣数匹という悲惨な状態なので、互いを貶しあっている。


「おまえ、真面目にやっているのか?あの程度の攻撃で魔獣共の間引きなんぞできないだろうが?」


「それならば、お前がやってみろ?」


「おれは近距離攻撃専門なんだよ」


「ならば、今からこの下に降りて突撃すれば良いだろうが?」


「ふざけんな。俺が突撃したとしても、一人でこの数を全滅などできるわけがないだろう。その上、撤退時にこの防壁の門が空いている保証がどこにある?」


 と、こんな感じだ。

 

 連携もクソもあったもんじゃない。互いの足を引っ張るか自分の安全を担保するかだ。


 当然、Sランク達が討伐する魔獣よりも辺境伯が討伐する魔獣の方が数が多い。


 つまり、Sランクが討伐した魔獣が間引かれている傍から、新たな魔獣がこの場に沸いている可能性が高いのだ。


 そうなると、Sランクが倒した魔獣も再びこの場に顕現するという悪循環になる。

 俺達にとっては好循環だが。


「おい、後から魔獣共が湧き続けてるぞ。このままではまずい。出し惜しみなしで一気に攻撃するぞ」


 腐ってもSランク。実際に修羅場をくぐった経験は有るだけに、危機的状況であると把握できた瞬間に気持ちを切り替えることができたようだ。


 だが、気持ちに体がついて行くかは別問題だ。


「Sランク殿の本気、楽しみじゃねーか」


「ヘイロンさん、なんで棒読みなんですか?」


「いやスミカよ、お前、こいつらがいくら本気になったとしても大した攻撃は出来ねーだろ?」


「それはそうですね。でも、立派な武器をお持ちですから・・・もしかしたらがありえるかもしれませんよ?」


「そうなりゃ良いがな。僅かな希望を与えて、そして落とす。理想なんだが・・・こいつらには期待できそうにねーぞ」


 一方、防壁上部に位置しているSランクの連中は力を溜めている。

 魔法使いは長い呪文を唱え始め、弓には魔力を込め始め・・・と言った具合だ。


「行くぞ!」


 誰かがそう言ったとたん、全ての力が一気に開放されて魔獣に襲い掛かった。


「ほう、これはあの冒険者達の力が乗った攻撃ですな。先ほどのちゃちな攻撃よりも遥に力は上がっているでしょう。あくまで先ほどの攻撃と比べればですが」


 テスラムさんの厳しい指摘の通り、彼らの攻撃後に倒れたであろう魔獣はパッと見百匹程度に見える。


 この大量の魔獣達のほんの一部だ。


「こ、これはまずいかもしれんな」


 一人の魔導士が冷や汗を搔きながら呟いている。


「おい、ロイド!!お前ら!!全員こいつの胸元を見ろ!!」


 何故かヘイロンが焦った声で騒いで、独り言を呟いた魔導士を指さしている。


「む、これはまずいですな。こやつが身に着けているのは高位の魔道具・・・おそらく転移系統でしょう」


「そうか、王族達の魔道具は使えないようにしたが、まさか第三防壁にもそんな物を持っている連中がいるとはな」


「どうするロイド?今すぐに破壊しに行くか?」


「いや、防壁が破壊されるにはもう少し時間がかかるだろう。あいつもそう判断しているに違いない。だとすると、あいつは一旦住居に戻って退避の準備をするはずだ。まだ時間はある」


「それでは、私はその間に高位の魔道具を持っている物を洗い出しましょう。その後はスミカ殿、対処はお願いします」


「お任せください」

ここまでお読みいただきましてありがとうございました。

ブクマや評価をしていただけると嬉しいです。


よろしくお願いいたします。

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