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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
王国への復讐と悪魔
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リスド王国と<光剣>(6)

 あのギルドでの騒動から二日が経過した。明日がいよいよロイド一行や第四防壁内の住人が移動する日になっている。


 この国に大きな不満を抱いている住人達は、想定以上に早い段階でこの国を出国していた。

 

 リスド王国までの道のりは余程大回りをしない限り一本道になるので、迎えの馬車と道中で落ち合い、一部の馬車はリスド王国、そして残りは予定通りフロキル王国まで来ることになっている。


 もちろん冒険者は全員体力があるので、一部の高ランク冒険者以外は既に全員が出国している。


 そうなると、ギルド長の顔には焦りが見えるこの状況は当たり前と言えるだろう。


「おい、なぜあれから冒険者が一人も来ないんだ!ゾルドン王子より命を受けた六剣の依頼や、ロイド一行をとらえる依頼すら受領されていないではないか!!」


「は、既に大量の冒険者が国外に出ていると門番より報告を受けております」


 一部の不遜な冒険者、つまりロイドたちの復讐対象に含まれる人物は、無駄な依頼を実行するよりも残り一つとなってしまった六剣を抜くことに必死になっている。


「なんだと!なぜそれを早く言わない。いや、待て。六剣関連の依頼は達成が難しいのは理解できる。依頼を受注してから探索に当たると、失敗時のペナルティーがあるからな。先行して探索し、成功時に報告を上げるために冒険者共は出国したのかもしれんな」


「おそらくその通りかと。更にロイド一行に関しましては、未だ出国していないとのことです」


「よし、良いだろう。だがロイド共を取り逃がすと厄介だ。監視はつけておけ」


「承知しました」


 既に多くの冒険者がギルドカードを廃棄や返却しており、六剣探索などと言う事を実施できる状況にあるわけはないのだが、残念ながら決して有能とは言えないギルド長には現状を正確に理解する能力はない。


 更に、ギルド長に従っている職員も同じレベルだ。


 高ランク冒険者や特殊なスキルを持つ者であれば監視は容易だが、冒険者は出国済み、ギルドには誰一人として訪れていない状況を理解できるはずなのだが、安易に了解の返事をしてしまう。


 結果、人手が不足して何の経験もない職員がロイドの監視を行うのだが、テスラムによってこの状況は随時把握されてしまっている。


 ギルド長は、このフロキル王国に対して冒険者が一切いなくなったことの重大さを理解できていない。


 安易にこの国に戻って来ると思っているのだが、万が一そうだとしても数日間冒険者が誰もいなくなるということは、周辺の魔獣の討伐、そして資源となる素材の入手が一切できなくなってしまうと言う事、そして商人等が他の国に移動する際の護衛すらできないという事になるのだ。


 つまり、今まさにフロキル王国は、衰退に繋がる坂道を力いっぱい踏み出してしまったことになる。


 一方、監視されているロイド一行は暢気なものだ。


「テスラムさん、一応情報として監視が付くとは教えてもらったが・・・あれは酷くないか?警戒していた俺がバカみたいだ」


「おっしゃる通りですな。私も少々驚いております」


「隠密とは何かを全く分かっていない」


「俺の<探索>を使うまでもないな。ありゃど素人だ」


 特殊な能力を一切使うことなく、当然のように全員が素人の監視を看破している。


「明日は出国か。こう監視が付いたままだと住民の移動に障害があるかもしれないな」


「その点はお任せください。監視している者は、あの王子の許されざる発言の時には薄ら笑いを浮かべていた者です。万死に値しますので、明日の移住実行時直前には行方不明になっていただきます。更には門番が我らの出国停止を命ぜられておりますので、我ら一行はヨナ殿の<闇魔法>により存在を変えましょう」


「流石はテスラムさんだな。凄まじい情報収集能力だ。だが、住民が一斉に出国する時は、門番はどう動きそうだ?何か上から言われているのか?」


「ヘイロン殿、その辺りも問題ございません。今の時点で門番は住民に対しての指示は一切受けておりません。万が一出国を阻止するような動きを見せましたら、こちらも行方不明になっていただきます」


「いや、行方不明って・・・住民がいる前で突然行方不明になるのかよ・・・」


 テスラムの黒い笑顔に、ヘイロンも苦笑いをしている。


 だが、誰よりも<六剣>を使いこなせるテスラムの力があれば、目の前にいた門番が突然行方不明になる状況もあり得ない事ではないのだ。


 そんな話をしながら、暢気に最後の散策をしているロイド一行。


 その最中にも、テスラムの眷属を通して続々とフロキル王国の面々がリスド王国の迎えの一行と落ち合うことができている状況が報告される。


 第四防壁内にいる住民は、残り100人程になっている。

 当然テスラムは全て把握済みだ。


「ロイド様。こちらに来ているリスド王国の面々ですが、フロキル王国から先行出国していた者達が多数いるために、全ての馬車がここまでくる必要がなくなりました。そのため移動速度が上昇しているので、今晩遅くにも到着してしまいそうです」


 当初予定していた計画では、フロキル王国移住予定者の全員を一気に移送するはずだった。つまり、迎えの大量の馬車もフロキル王国付近まで大行列で来る必要があったのだ。


 しかし道中で大多数の移住住民を乗せることができたので、実際にフロキル王国まで来る馬車の数は十分の一になっている。


 そのおかげで移動速度が上昇して、予定よりも早い到着になったのだ。


「ちょうど良いんじゃないか?夜であれば目立たないし、余計なトラブルは起きないだろ?」


 ロイドの一言で、夜に移住を行うことが決定した。


 100人程度であれば、彼らが直接出向いて話をするのは容易だ。


 荷造りが完全に終わっていない人達への手伝いもしつつ、ロイド一行は全員に連絡を取る作業をあっという間に完了させた。


 もちろん全員がバラバラに動いたので、監視をしているギルド職員は誰にもついていくことができずに右往左往しており、最終的には誰の監視もできていなかった。


 通常このギルド職員は夕方にギルドに戻って報告書を書くことになっていたのだが、この日はついにギルドに戻ることは無かった。


 テスラムの宣言通り行方不明になっているのだ。


 一方門番は、今まで大量に冒険者や住民が出国する事を訝しんでいたのだが、上長からはロイド一行の出国停止しか指示を受けていないので、忠実に仕事をしていた。適当ではあるのだが・・・


 そのおかげか、夜中の住民大量出国に対しても問題なく対処してしまい、ヨナの<闇魔法>で少々存在を変更しているロイド一行も出国できてしまう。


 こうして、衰退・破滅の坂道を下る勢いに更なる加速を与えることになる住民大移動は、滞りなく完了した。


 翌朝、王城にいるゾルドン王子には住民や冒険者の大量出国についての報告はもちろん上がっている。


「フン、冒険者共は俺様の依頼を達成するために必死なのだろうな。捨てておけ。住民も問題ない。第四防壁内のゴミ共がいなくなっても何の問題もないだろう?いや、むしろゴミが減って国家としての品格が上がる。良い事ではないか」


 と、こんな状況だ。


 住民も、第三防壁内の商人からいやいやではあるが大量の物資を購入していた。


 また、税を納める必要があるのでこちらも実施していたのだが、この王子にはその辺りは一切理解することができないのだ。


 この王子にあるのは、見栄、権力、財産等の俗物に対する要求だけなのだ。


「おい、六剣の情報はまだないのか?それにロイドはどうした。いつまで待たせるんだ?」


 とこんな調子である。


 監視していたギルド職員の報告がない状態なので、ギルド長は正確な報告を上げることができないでいた。


 しかし同じ穴の狢である立場が何よりも大切なギルド長は、既にロイド一行は出国してしまっているのだが、未だにこの国にいると言う報告をしてしまう。


 彼も、自分の地位にしがみつく特権階級意識が抜けない人材だったのだ。 

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