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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
王国への復讐と悪魔
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王子の救出

 部屋に入ると、淡い光を出している魔道具によって部屋の中を視認することができた。


 広めの部屋には中央に天幕付きの豪華なベッド、壁際には鏡や机、棚、様々なものがあるので、この部屋自体がこの第一王子の部屋なのだろう。


 そして、鏡の横には控えめなメイドに見える悪魔が頭を下げている。


「こんな時間に突然ごめんなさい。どうしても兄の様子を見たかったものですから。いつも兄の事を見てくれて感謝しています」


「身に余るお言葉でございます」


 このやり取りを見るだけならば、このメイドが悪魔であるなどとは誰も信じてはくれないだろう。


「少し兄と二人、いえ、この従者たちと兄とで話をしたいので席を外してくださるかしら?」

 

 少々怪訝そうな表情をしたが、悪魔からすると既にこの第一王子は助かるわけがないと思っているので、拒否されることは無かった。


「承知いたしました。何かありましたら外に控えておりますのでお声がけくださいませ」


「ありがとう」


 意外とすんなりスミカの<回復>をかけることができそうで、少々拍子抜けだ。

 いや、普通はこの状態にまでなってしまった者を回復することなどはできないのだが。


「よし、じゃあスミカ、さっそく頼むぞ。王女はもう少し俺の近くに来てくれ。アルフォナは、あのメイドが出ていったドアと俺の間に移動してくれ。闇とロイドはスミカの近くへ」


 ヘイロンの的確な指示に従って立ち位置を移動する。

 スミカは、<水剣>の特化能力である<回復>を使用し始める。


 眩い光が第一王子を覆うが、光が漏れないようにヨナが<闇魔法>で光を被せるように覆っている。

 やがて光は第一王子の心臓、そして脳に集中していき吸収された。


 だが、第一王子は微動だにしない。


「スミカ、どうなんだ?」


「かなり強力な術による影響ですので、今の私では一度での完全回復を行うことはできません。もう少し時間があれば<水剣>を使いこなせたのですが・・・でも、力が足りなければ回数で勝負できますので問題ありません。時間は少しかかってしまいますが、任せてください。ロイド様」


 自信のある声を聞いて、ナユラ王女も安堵の息を漏らす。


 宣言通りスミカは再度<回復>をかけて、同じように第一王子は光に包まれて、やがてその光は心臓と脳に吸収される・・・という事を五回ほど繰り返した。


 すると、突然王子が目覚めて上体を起こして周りを確認する。


「お兄様!!」


 ナユラ王女は喜びのあまり王子にに抱き着き涙してしまった。


「ナユラ、どうした突然?あなた達は??」


 この王子、寝室に怪しげな第三者がいても意外と冷静だ。肝が据わっているのか鈍感なのか・・・前者である事を期待しよう。


「申し遅れました。私は隣国フロキル王国で冒険者をしていますロイドと申します。そして、この面々は私の仲間です。ある場所を冒険中に偶然ナユラ王女と知り合うことができ、あなた様の回復を依頼されたためこのような時間ではありますがお伺いした次第です」


「そうなのよお兄様。もう助からないと思ってた」


「ん・・・?いや、まて・・・まさか父上は・・・夢ではないのか?」


「お兄様、落ち着いて聞いてください。既にお父様はお亡くなりになっています」


「そうか。夢ではないとすると状況は理解した。敵はヒルアで間違いないなナユラ?」


「ええ、残念ながら第二王子であるヒルアが敵です」


「身内に敵がいるなど、悲しいな。ロイド殿、そして皆様、状況は理解した。我が妹ナユラの、そして私のために助力いただき感謝する。だが、ここからは身内の、そしてリスド王国の問題だ。身内の問題にあなた達を巻き込むわけにはいかない。今回の件については、このいざこざが片付き次第正式にお礼をさせて頂きたい。今日は遅いので一旦王城で宿泊いただき、明日貴国への馬車を出させていただく」


「お兄様!お兄様一人で何ができるのですか?ヒルアの後ろには悪魔がいるのは既にご存じでしょう?」


「ああ、だが悪魔と戦うなどと危険なお願いをするわけにはいかない。私にも王族としての誇りがある」


 そうは言いつつも、力の差は歴然であることはわかっているのか若干震えている第一王子。

 そもそも戦える力があれば、瀕死の状態にもなっていないだろう。


「第一王子様、ちょっといいですか?俺はヘイロンと言います。学がないので無礼な物言いは許してください」


「命の恩人に無礼も何もない」


「助かります。無礼ついでですがね、ご自身もお判りでしょう?今のあなたと悪魔には抗えないほどの力の差があることを。ご自身の誇りも大切だが、残された国民、そしてナユラ王女はどうなりますかね?」


「し、しかし・・・そんなことはわかっている。だが、今この場で悪魔を超える力など得ることなどできはしない!!」


 どうしようもないところを突かれて、少々声が荒くなっている。

 もちろんヨナの<闇魔法>で声は外には漏れていないので問題はないのだが・・・


「さっきロイドは王女と”ある場所”で出会ったと言ったが、どこだかわかるか?Sランクダンジョンの二階層に置き去りにされていたんだぞ。お前が倒れれば、また同じ状況になるだろうな」


「・・・・」


 厳しい現実を突きつけられて、動揺している第一王子。


「お兄様・・・ヘイロン様がおっしゃっている事は残念ながら事実です。私を亡き者にしようとヒルアが手配した冒険者に拉致されました。命の危機を皆様に助けられたのです。そして、お兄様も助けて頂きました」


「しかし、私には信頼できる近衛騎士は・・・記憶が正しければ地下の牢獄にいるのだろう?どのような扱いを受けているかはわからないが、この時点では戦力にならないだろう。そして、悔しいが私自身も無力だ」


 味方は辺境に飛ばされたと聞いたので近衛騎士については初めて聞いたが、第二王子が権力を握ったのちに洗脳でもするつもりだったのか?


「ロイド様、悪魔は上質な魂を持つ人種を好んで食す傾向がございます。きっと第一王子の訃報を聞かせて絶望させた近衛達を食べるために捕獲しているのでしょう」


 相変わらず耳元で小さくなっているスライムを通してテスラムが情報をくれる。


 そんな情報を得ている俺をよそに話は進んでいる。

 やはりと言うか、当たり前というか、俺達に力を貸してくれという方向だ。


「ロイド様、ヘイロン様、アルフォナ様、そして・・・皆様。私の我儘ですが、どうかこの国をお助けいただけないでしょうか?」


「おいおい嬢ちゃん、俺達の目的は教えただろ?わざわざそんな事を言う必要なんざないんだよ」


 少し熱くなってきたのか、ヘイロンの言葉使いがだんだんいつもの通りに荒くなってきている。

 一応相手は王族だぞ!と言いたいが、余計なことは言わないのが吉だ。


 しかし、逆にこの言葉がナユラ王女、そして未だ名前もしらない第一王子に響いたのか、二人共無言で頭を下げている。


 第一王子はベッドの上に正座したうえで頭を下げているんだ。

 さすがにこれはちょっとな・・・


「うっし、話もまとまった。だが一つだけ詫びなきゃならんことがある。さっき追い出したメイド、あれがお前達を苦しめていた悪魔だ。あいつを逃すわけにはいかないので、ここが戦闘開始場所になるだろう。広い場所に移動はするが、この辺りの壁とかがなくなるのは勘弁してくれよ?弁償しろと言われても俺達は貧乏だから無理なんだ。そこだけはホント頼む」


 彼らからしたら、若干ずれたお願いに緊張もとれたのか、笑顔が見える。


「フフフ、そんなことは問題ありませんよ。ねえお兄様?」


「ああ、もちろんだ。この周りには残念ながら誰も寄り付かないので、少々破壊されても二次被害はない」


「ちょっといいか?第一王子、あなたはメイドが悪魔と聞いても随分落ち着いている。そんな予感があったのか?」

 

 俺は思わず聞いてしまった。


「残念ながら、私の傍仕えに姿形は似ているが、態度、所作、かなり違和感があってね。第三者が成りすましていると言われると納得してしまうんだ」


「そうか、すまなかった」


 第三者の成りすまし。すなわち本人は既にこの世にいない可能性が極めて高い。余計な事を聞いてしまったことを詫びる。


 王子は全て意図を理解しているようで、悲しそうに首を振る。

 

「よしロイド、アルフォナ、スミカ、嬢、いよいよ悪魔とご対面だ。気合入れて行けよ!」


「フン、言われるまでもない。我が剣をもって主君たるロイド様の怨敵を滅してくれる」


「今回は作戦があるからアルフォナに任せた。でも次は私も戦いたい」


 ヨナも因縁の悪魔と戦いたいようだが、当初決めた作戦通りアルフォナが迎撃することになっている。


「アルフォナさん、頑張ってください」


「あまり気負い過ぎるなよ?アルフォナ」


 軽く撃を飛ばしておく。


 アルフォナはメイドが退出していったドアと正対し、<土剣>を纏った双剣を抜刀した。

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