未来へ(4)
これでこの物語は最終話になります
三人は、順番に洞窟に入って祈りをささげる。
今日と言う日だけは有名な観光地であるこの洞窟は何があっても閉鎖され、関係者だけが内部に入れる状態になっている。
各<六剣>……自らが持つ<風剣>の洞窟以外の<六剣>への祈りを終え、中央の<無剣>の洞窟に入るテスラムと同行している二人。
ここに眠るのは、ユリナス、ロイド、そしてその後に、<無剣>を継承した者達とその配偶者。
フロキル王国の圧政時代、ユリナスは故郷で眠る事を手紙に認めてロイドに渡していたのだが、大きく環境が変わり、ロイドや<六剣>達と相談して全員の総意として将来的には全ての始まりであるこの洞窟で眠りたいと決めていた。
<無剣>ロイド。
当初は基礎属性がなく迫害されていたのだが、実際は<無>と言う属性を持っている特別な存在。
<無>故に基礎属性に縛られる事無く、逆に全ての基礎属性を修める事が出来る唯一の属性を持って生まれて来た。
<炎剣>ヘイロンと非常に仲が良く、<闇剣>ヨナの信頼を得て、他の<六剣>所持者を生み出した存在。
全ての伝説の剣の本当の力を開放する事に成功した、国家として、この世界の救世主として崇められている。
残念な事に<六剣>と<無剣>の中では最初にこの世を去ってしまった存在ではあるのだが、もちろん吟遊詩人によって語り継がれる話の筆頭、更には各国にある学び舎の教科書に<六剣>と共に掲載されて、その栄誉が最も称えられている人物でもある。
「ユリナス様、ロイド様のおかげで、私達悪魔と言う種族も幸せに共生できるようになりました。あなた方は感謝してもしきれない存在です」
アミストナの呟きに頷きながら、テスラムも祈る。
『ロイド殿。神も粋な事をして下さるようです。私がそちらに向かうまでは少々時間がかかりますが、楽しみにしていてください。その間、ヘイロン殿に修行を怠らない様、スミカ殿は食べ過ぎない様、アルフォナ殿には無理な修行をしない様、ナユラ殿にはゆっくり休む様、ヨナ殿には、こちらは全く問題ないので気楽に過ごしてくださいとお伝えください』
テスラムは、万感の思いで<無剣>ロイドが眠る洞窟で祈りをささげ、爽やかな笑顔で洞窟を出る。
「お~、これは素晴らしい景色ですな。絶景なり!」
思わずこう言ってしまったテスラム。
その景色、洞窟に入る前とは打って変わって、昼間にも拘らず大量の流れ星が見えるのだ。
その星々、<六剣>の属性の色の内テスラムが持つ<風剣>である白を除く全ての色と<無剣>を現す無色の星が多数流れており、見る者全てを魅了していた。
さりげなく<炎剣>が司っている赤色が他と比べて多かったのは、人情味あふれるヘイロンが誰よりもテスラムを激励していたのだろうか。
この現象はきっと、いや、確実にロイドと<六剣>の仲間からの返事、そして、仲間内では最後に残された自分に対する激励と感謝なのだろうと思い、フッと柔らかな笑みを漏らすテスラム。
この後どれ位の時間この世界で過ごすのか、どれ位息子のような存在である<無剣>所持者との新たな出会い、そして別れがあるのかは分からないが、ロイド達と再会した時に胸を張って逢えるように決意を新たにするテスラムだ。
「では戻りましょうか?テスラムさん」
「そうですな」
「お父さん、お母さん。俺はまた旅に出るよ!」
この世界に安定をもたらした<無剣>ロイドの仲間である<六剣>で、今尚、唯一生存している<風剣>テスラム。
その視線は、自分を待ってくれている仲間、そして未来へと向いていた。
……テスラムさん、皆で楽しみに待っているよ……
FIN
長くお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
一旦締めた作品ではありましたが、何とか最後まで描き切ることができました。