騎士アルフォナ(4)
「ロイド様、私はユリナス様の近衛騎士であり、もし許されるのであればユリナス様のご子息であるあなた様にも仕えさせて頂けるのであれば是非もありません」
想定通りの答えで嬉しくなるロイド。
「そうか、では信頼の証として少々秘匿事項を公開しよう。それと、今後は俺達は仲間だ。実はここにいる以外にも、奥に修行の為に戦闘をしている仲間が二人いるが後で紹介しようと思う」
「この轟音はそのせいですか。私などまだまだ未熟ですね」
ある程度の振動や音で戦いの苛烈さがわかるのだろう。自分がこれ程の戦いができるかと考えた故のセリフだろう。
「いやアルフォナ、実は二人の内の一人は冒険者登録をしたばかり、そして武器も持ったばかりの素人だ」
「え?何を仰いますかロイド様。このダンジョンのランクはS。そして三階層。そんな事があるのなら、私の今までの修行の意味が・・・」
「いや、残念ながら事実だ。だがな、今までの鍛錬は決して無駄にはならない。なんて言ったらいいか・・・そうだな、今までの修行のおかげで身に着けた力に、更にとてつもない力が上乗せされると思ってくれればいいだろう。それにな、そのとてつもない力は基礎ができていない者には使いこなせない。ある意味その力を使いこなすための修行をしている状態なのだが、地力があればそのような無駄な修行もしなくて済むぞ」
「それを私に授けて頂けるのですか?武器もなくしたこの私に・・・」
「もちろんだ。もう少しだけ話を続けよう。先ずはここにいるメイドの名前はヨナ。基本的には<隠密>系統の任務が多い為に第三者には決して名前を明かさないし、姿も正確には見せない。アルフォナも第三者がいる時には決してヨナの名前を呼ばないように気を付けてくれ」
そう紹介すると、ヨナは<闇魔法>による認識阻害を解除した。
「そして、伝説の六剣である<闇剣>所持者だ」
大きく目を見開いて俺とヨナを交互に見るアルフォナ。だがあまりここに時間をかけるわけにはいかないのでさらに続ける。
「そして、俺は最強の伝説になっている<無剣>の現所持者。もちろんこれは母から受け継いだんだがな。そしてさっき説明した先行している二名も、抜けたばかりの<炎剣>と<水剣>の所持者だ」
「そ、それで理解できました。あの伝説の六剣所持者になったのであれば、初心者でもあの豪音が出せるほどの攻撃ができるでしょう」
「それで、母を思い続けてくれていた俺の近衛騎士になったアルフォナには、<土剣>所持者になってもらおう」
「私などに抜けるでしょうか?」
「心配するな。ある意味<無剣>所持者の判断で抜けることになるからな。だが、強大な力故に制約もある・・・」
一応裏切り行為での所持者資格剥奪や能力消失などは伝えておく。
「しかし、今は六剣が二本も抜けたために、あの洞窟周りは凄まじい人であふれています。ロイド様の目的である復讐を行うのであれば、計画は存じ上げませんがあまり目立つのは良くないのでは?」
「流石だな。だが安心してくれ。お前が気が付かなかったように、俺達は誰にも気が付かれずに行動することができるからな。もう少ししたら先行した二人も戻ってくるから紹介しよう。その後はアルフォナの換金と送金、そして今の俺達の状況と今後の動きを説明しよう」
「承知しました」
アルフォナは折れてしまった双剣を鞘に収納し、ヨナと交流を始めた。
ヨナも母さんと俺に対する忠心が高いアルフォナはかなり好印象らしく、話に花が咲いている。
だが、俺の小さい頃の恥ずかしい話をするのだけはやめてくれ。
聞こえないふりをして、先行した二人が早く帰ってきてくれないかと思い続けること体感数十分、ようやくヘイロンとスミカが戻ってきた。
「おう、戻ったぞ。何だかスミカがやる気出しちゃってな。俺は殆ど何にもしなかったぞ」
「ロイド様、私頑張りました。結構この水・・・武器使いこなせるようになってきたと思います!!」
スミカは、この場に第三者と思われるアルフォナがいるので、水剣という言葉を飲み込んだ。
「スミカ、ヘイロン、ここにいるのは母さんの近衛騎士をしてくれていたアルフォナだ。信頼できる仲間として情報も公開済みなので、六剣も秘匿しなくてもいいぞ」
「初めまして。この度ロイド様の近衛騎士に任命頂きましたアルフォナと申す。今はないが、得意な武器は双剣・・・いや、おそらく貴殿達には戦いの様子は見られているので既にご存じだろうな。ところで、ヘイロン殿、スミカ殿、疑うわけではないのだが・・・あの伝説の六剣を見せて頂けないだろうか?」
そういえば、俺もヨナも闇剣と無剣を見せたわけではなかったな。
「ああ良いぜ。俺もこれが抜けた時には驚いたもんだ」
「わかりました。私も尻もちをついてしまいましたもんね」
そう言って、鞘に変形させていた<炎剣>とイヤリングにしていた<水剣>を顕現させる。
柄にはめ込まれている赤と青の宝玉が一際大きくなっている剣を見て、感動しているアルフォナ。
「まさしくあの伝説の六剣!!実はロイド様より<土剣>の所持者になるようにご命令頂いた所で、実際に抜けた六剣の現物を見て俄然気合が入りました!」
「おう、そりゃよかった。だけどあまり気合を入れすぎると、ここにいるスミカみたいに石から転げ落ちるぞ!!」
「も~、そう言う事は言わないでくださいよ。ヘイロンさんが先に抜いていたら、きっとヘイロンさんも転げ落ちていましたよ?」
「はははは、違いない!!こりゃ一本取られたなスミカ!!」
Sランクダンジョンでするような会話ではないが、仲間としての紹介は問題なく終わることができた感じだ。
「ロイド、もちろん気が付いているよな?」
「ああ、だが全く殺気がないから放置でいいんじゃないか?」
「やはりそうでしたか・・・若干気配を感じる気がしていたのですが・・・」
ロイド、ヘイロン、ヨナが突然そんな事を話しているのを聞いてスミカは首を傾けており、不思議そうにしながら何があったのかアルフォナが聞いてきた。
「ロイド様、いかがしましたでしょうか?」
「ああ、丁度そこに俺達の<隠密>レベルと近い技術を持つ者がいるんだよ。かなり前からこっちを伺っているようだったが、殺気がないので放置していたんだ。今日は一旦ダンジョンから帰還する予定だからな。もし用があるなら今ここで話そうと思ってね」
ロイドとヘイロンは<炎剣>の特化スキルのおかげで気配に敏感だ。そしてヨナも今までの鍛錬のおかげで、かなり気配察知能力に長けている。
「いや、これは失礼いたしました。まさかこちらにお気づきとは思いませんでした。ですが、私に害意がない事を改めて宣言させていただきます」
そう言って目の前に現れたのは・・・頭に小さい角が二つある執事服を着こんだ悪魔だった。
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