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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
六剣と無剣のその後
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ナユラとユリナス

「ユリナス様~」


 敷地の庭でお茶を楽しんでいる所に、ナユラの情けない声が響く。


 このナユラ、元リスド王国の王女であったのだが、王族を離脱して冒険者となり<光剣>ナユラとしてあの闘いに身を置いた人物でもある。


 最近は、ある意味戦勝国としてこの世界の三大国家に認定されてしまったフロキル王国、リスド王国、魔国アミストナに対する依頼、上申を含め、処理する案件が多すぎるために、国王である兄のキルハから王族に戻って補佐をしてくれと涙ながらに頼まれていた。


 その泣き落とし、懇願に折れて王族に復帰して政務に励みつつも、時折その身体能力を駆使して瞬時にフロキル王国にある王城周辺の<六剣>達の集落とも言える場所に出没し、愚痴をこぼしたり、息抜きしたりした後に帰っていくと言う生活をしていた。


「あらあら、随分と疲れているのね?ナユラちゃん(・・・)


 残念ながら、既に<無剣>所持者としての力はないユリナスにはその気配は察知できないのだが、最低でも週に数回訪問があるので、驚くような事は無い。


 常に用意されているユリナスの対面の席に座ると、使用人もいつもの事と言わんばかりに無駄のない動きで即座にナユラの分のお茶とお菓子が準備される。


「ありがとうございます」


 他の<六剣>達と同じく、王族に戻ったとは言え不遜な態度を一切とらないナユラも使用人達からの人気は高い。


 時折、使用人達の身内や知り合いからの呪いを受けたかもしれない……と言う相談にも気さくに乗ってくれ、場合によっては即対処してくれるのだから。


「で、聞いて下さいよ、ユリナス様~!」


 今日は随分と荒れているのね、と思いつつ微笑み返すユリナス。


 こう言った時は何も言わずとも勝手に話す事を知っており、アルフォナと同じねぇ~と思っていたりする。


 ユリナスの想定通り優雅にお菓子をつまんでお茶を飲むと、そこからは一気に話し始めた。


 同じような状況に置かれる事が多いテスラムとの違いは、割と良く話を聞いているユリナス。


 結局、涙ながらに訴えるナユラの話を纏めると、忙しいながらも楽しく生活しているのだが、異性との出会いがない!という事に尽きていた。


 同じ環境であるはずの国王である兄キルハは、さっさと良い人を見つけて間もなく結婚すると言うのだ。


 最近アルフォナも良い感じになっているし、ヨナもロイドと結ばれている。


 そしてスミカもヘイロンとの子供を既に身ごもっているとなると、<六剣>の女性陣の中で独り身なのは自分だけだと気が付いてしまったのだ。


「それは難しいわね~。慌ててもどうしようもないのではないかしら?ナユラちゃんはどんなタイプが好きなのかしら?」


「えっと、頼りがいがあって、優しくって、思いやりがあって、私を大切にしてくれて、一緒にいて楽しくって、お互いを大切に思い続ける事が出来る人です!」


 ユリナスからしてみれば、身近で見せられている幸せな他の<六剣>の女性陣が手に入れている環境、人物なのね~、と思い至っていた。


 そんな相手となると、テスラムさんはどうかしら?と思わなくもないが、以前同じような話しを二人でした時に、確かにアリなのだが、共に年をとれる人が良いと言っていた事を思い出す。


 ナユラは、確実に自分が先に寿命を迎え、明らかに相手に寂し想いをさせる事が分かっている相手とは結婚できないと言い切っていたのだ。


 既に理想が<六剣>や配下の騎士となっており、こうなってくると一般の男性や貴族ではそこには届く事は無いと分かっているユリナス。


 さりげなくアルフォナと同じ様に、<六剣>配下の騎士達を勧める事にする。


「リスド王国にいる配下の騎士の方々はどうかしら?アルフォナに鍛えられているから、優しくて強い事は間違いないわよ?」


「そこなのです!きっと常にアルフォナさんの事を崇拝し続けて、折に触れて彼女の話が出て来るんですよ、きっと。なんだか悔しいじゃないですか?」


 随分と拗らせちゃったわね~……と呑気に思っているが口には出さない。


 民の為、世界の為に、未だその身を粉にして働いてくれているナユラを労わりたい気持ちがあり、少しでも彼女の力になれればと思っていた。


 他の<六剣>やロイドも同じ理由でナユラを常に気にかけているのもまぎれもない事実だが、最近のナユラの悩みはデリケートな問題であり、迂闊に助言できなかった。


 こうした日々を過ごしているナユラだが、やがてスミカ、アルフォナ、更にはヨナにまで子供が出来た頃にはすっかり結婚の話はしなくなり、その幼い子供達との触れ合いを楽しみにするようになっていた。


 結局彼女は独身を貫いていたが決して寂しく過ごしていたわけではなく、やはり真の仲間である<六剣>や<無剣>ロイド達と家族のように過ごす事が出来ており、忙しくも楽しく生活を続けていた。


 因みにテスラムは同族であるアミストナと良い関係になったのだが、悪魔は常に夫婦で生活する事が一般的ではないらしく、所謂別居婚の様な形を取っていたりする。

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