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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
神と魔神
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<闇剣>ヨナの戦い

 長きに渡り、他の<六剣>が封印されている中で<無剣>を支える使命を背負っていた<闇剣>ヨナの一族。


 同じ様な環境の元暗部総隊長ミルキャスと異なるのは、主たる<無剣>との親和性の高さ……誰一人として例外なく、<無剣>所持者を守るべき存在であると自ら望んで認識し、共に歩んできたのだ。


 共に笑い、共に悲しみ……


 今代のヨナも例外ではない。


 ユリナスとロイドと言う二代に仕えているヨナではあるが、今の主であるロイドを、何をおいても守り抜くと言う確固たる意志がある。


 そして訪れたその時。


 目の前のミンジュ(魔神)は別格の強さを持ち、<無剣>ロイドと仲間である<六剣>が全力でかからなければならない相手。


 ヨナは、ここで敗北すれば魔王アミストナでも手も足も出ず、この世界は崩壊するのは間違いないと感じていた。


 既に手に持っている顕現された<闇剣>。


 黒い宝玉が一際大きく、既に魔力を十全に込めているので刃には闇を体現するかの様な黒い炎が揺蕩っている。


 対する魔人の剣は漆黒の剣。


 明らかに格上で、闇すら呑み込むような深淵を想像させる禍々しい気配を曝け出している。


 だがヨナは引かないし臆さない。


 ここには守るべき主君たるロイドがいる。


 そして、苦楽を共にした初めての同格の存在であり仲間である<六剣>がいるのだから……


「ほうっ、見た目は悪くない。手足を削ぎ落して、俺の玩具にしてやるのも一興か?」


 ヨナは、常に自分自身に纏わせていた<闇>魔法を解除しているので、美しいその素顔が露わになっている。


 余計な魔力の消費を少しでも避けて、目の前の敵に全力でぶつかるためだ。


 ミンジュ(魔神)の余計な一言を無視し、影に潜るように気配を消しつつ攻撃を仕掛けるのだが、やはり格上。


 その気配は完全に察知されているかのように、あっさりと攻撃は躱されて反撃される。


「この程度では、ダメ……」


 偽りの気配を一つ作成し、自分自身は<闇>の力で気配を完全に消した上で死角に回って斬撃を浴びせたのだが、一切惑わされる事無く対応されてしまったヨナは、大きく距離を取って感情が無いかの様な表情で呟く。


 斬撃を手で直接弾かれ、漆黒の剣で反撃を受けてしまい避けきれず、ヨナの左腕からは血が流れ出ている。


 斬撃自体はロイドの<時空魔法>で勢いが削がれているにも拘らず……だ。


「フフ、そう言えば、あの<水剣>に回復してもらうのではないのか?」


 ミンジュ(魔神)は余裕綽々の表情で敢えて追撃せずに告げるが、この声を聞いてもヨナの美しい顔の表情は変わらない。


 ミンジュ(魔神)としては少しでも焦る表情が見たかったのだが思惑が外れた形になり、少々苛立つ。


「その仮初めの余裕、何時までもつかな?」


 軽く振ったかのように見えるミンジュ(魔神)の漆黒の剣だが、そこから溢れ出る深淵は驚くほどの速さでヨナに襲い掛かる。


 同じ様にヨナも全力で<闇剣>を振り切り<闇>を飛ばすのだが、あえなく漆黒に飲み込まれてしまい、再びヨナは傷を負う。


「学習能力のない奴だ。お前程度の力が有ればもうわかっているだろう?お前の力は<闇>。そして俺の最も得意とする力は<深淵>だ。闇をも飲み干す深淵にはどうあっても、どうあがいても勝てない事位分かるだろう?ハハハ、さぁ、天空の神に向かって祈りでも捧げると良い。何もできないと思うがな。ハハハハハ!」


 更に深手を負ったヨナだが、一向にスミカからの回復は行われない。

 スミカに回復する余裕がないのではなく、やらないのだ。


 ヨナから致命傷以外の傷は絶対に治すなと言われている為、スミカは、本当は今すぐにでも回復させたい気持ちを、信頼するヨナ(お姉ちゃん)の為に必死で堪えている。


「あなたは煩い。<無剣>に長年使えて来た<闇>の力を分かっていない。今こそ、その力を見せる時」


 <六剣>を最も良く知っているのは誰が何と言おうと<風剣>テスラムだが、一番長く接し続け、その技を主である<無剣>を守るべく全力で磨き続けたのは<闇剣>の一族である事もまた事実。


 歴代の一族の想い、命を賭して<無剣>を守り抜くために行われ続けた極限までの努力……そして今、守るべき対象に初めてできた<六剣>の仲間達が加わった事により、その力を上乗せしてヨナはその力を開放する。


 その条件は、<闇剣>所持者の血液が必要だったのだ。


 初代<無剣>に仕えてから今この時まで、常に<闇剣>を所持していたヨナの一族。


 顕現し続ける事は出来ていないが、その身から離す事無く所持し続け、脈々と<闇剣>の力を受け入れていた。


「私の血は、<闇剣>の血。この血で<深淵>だろうが、何だろうが、敵は捻り潰す」

 

 ヨナの両腕から流れ出る血が開放済みの<闇剣>に流れると、その刃を纏っていた<闇>がより深い黒に変色して行くと共に、黒の宝玉が激しく光る。


 決して禍々しい色ではなく、美しくも気高い黒に変わって行くのだ。

 ヨナの本当の最強の一撃。


 体自体はボロボロであり素早く動けるわけでもないのだが、全ての無駄を省く動きで<闇剣>を振りぬくヨナ。


 その血液すら犠牲にして得る、歴代の一族の力を乗せる渾身の一撃がミンジュ(魔神)に向かう。


 この一撃の威力は分かるミンジュ(魔神)は、自分を滅ぼせるほどの攻撃を出した<闇剣>ヨナに驚きつつも確実に回避できるように、慎重に斬撃を見極めている。


……ピカッ!……


 そこに、<光剣>を顕現できない状態のナユラが、今できる最大の力を使って<光>属性の魔術を行使し、ミンジュ(魔神)に目眩ましを行う。


 通常であれば難なく対処できる、何のダメージも与える事のない攻撃とも言えない攻撃。


 既に<光剣>ナユラと<土剣>アルフォナは戦力外として意識の外に置いていたミンジュ(魔神)は、ヨナの攻撃である斬撃に重なるように発動した魔術を直接見てしまう。


 一瞬で視界を奪われたミンジュ(魔神)


 余裕で始末できる相手から受けた手痛い反撃に対処できずに闇雲に回避しようとするが、ロイドの<時空魔法>によって動きが阻害され、ヨナ渾身の一撃が直撃する。


……ドサッ……


 斬撃を直接受けた場所、体の中央部分から奇麗に左右に分かれ、徐々に闇に飲まれて存在を消しているミンジュ(魔神)


「これで、私の、私達の勝利!」


 高らかに宣言したヨナ。


 直後にスミカによって回復されるが、気力・体力・魔力を使い果たしたヨナは、失った血液もあってかその場に倒れる。

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