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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
神と魔神
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コーサスの思い

 俺は、フロキル王国騎士第二隊所属のコーサスと言う。


 俺には二つ上の兄がいるのだが、この兄カーサスは俺の目標だ。


 キュロス国王陛下をお守りする騎士、そしてユリナス様、リアナ様もお守りするのが主な我らの務めだ。


 そんな俺達を統括されている伝説の<六剣>の内の一振り、<土剣>アルフォナ総隊長の教えを日々受け、今では騎士道精神の何たるかが分かりかけてきた気がするのだが、兄であるコーサスを含めた第一隊と比べるとまだまだと言わざるを得ない。


 このフロキル王国、先代のクズ王の後を元キュロス辺境伯が引継ぎ王位を継承されたのだが、その前後、はっきり記憶はないが、その辺りで第一隊と第二隊、第三隊……と騎士に区分けがされていた。


 自惚れと言う訳ではないが、隊が区分けされる少し前までは確かに兄との実力差はあったのだが微々たるものであったはずだ。


 残念ながら最近はその実力差が把握できない程、開いてしまっているのが肌でわかる。


 兄は、特に異常状態に対する耐性が飛躍的に上がっているようで、恐らく<光>属性の力に目覚めたのではないかと思っている。


 時折<風剣>テスラム殿の修行すら受けている第一隊の面々。

 恐らくその苛烈な修行によって、実力に大きな開きが出たのだろうと推測する。


 一度俺もその修行に参加させてもらえないか頼んだのだが、今まで見た事もないような目で止めた方が良いと言われてしまった。


 だけど良く考えてみてくれ。


 憧れの第一隊!その強さに迫れるのであれば、多少の無理に怖気づいては騎士道精神に反すると言えるのではないか?


 この辺りを兄であるカーサスに告げてみたら、しばらく悩んでこう伝えてきた。


「コーサス、お前の気持ちは良く分かる。流石にアルフォナ様の教えを受けているだけあるな。騎士道精神が理解できているのだろう。だが、そこを踏まえてもお前を同行させるわけには行かない。そうだな……そうは言っても納得してもらえないだろうから、俺達が修行している場所だけは教えよう。<六剣>が封印されていた場所の近くにあるSランクダンジョンの深層だ」


「グェ」


 その名前を聞いた瞬間にこれはダメだと本能で理解した上に、思わず変な声が漏れてしまった。


 今の俺も以前と比べるとアルフォナ様の教えによって相当強くなっている自信がある。あるのだが、Sランクダンジョンの深層での修行など、恐ろしくて想像もできない。


 当然Sランクの獣共、罠、それを躱しつつ<風剣>テスラム殿の課題をこなす事になるのだろう。


 回数は少ないが、俺達第二隊も<風剣>テスラム殿の修行をいつもの修練場で受ける事はある。


 その修練はアルフォナ様と比べて緻密に計画されているとは感じるが、心身への負担は異常だ。


 それをSランクダンジョンでされては、悔しいが俺では数分持ち堪えられるかどうかと言った所だろう。そもそも深層に辿り着くまでに精根尽き果てているはずだ。


 ここで焦ってはいけない。

 騎士道精神によれば少々の焦りは許容できるが、焦りによって真の目的を見失う事はダメだ。


 俺の力に相応しくない修行を無理やり実行しても、血肉にはならずに恐怖だけが植え付けられるだろう。


 だとすると、かなり悔しいが地道に努力し、そして何れは第一隊に所属できるほどの強さを手に入れる他ないのだ。


「わかった兄貴。流石の俺もSランクダンジョン深層での修行と聞かされては、無理な事位は分かるぜ。悔しいが、どう見ても力量不足だ。だけど、必ず俺もそこまで力をつけて見せる。見ていろよ、兄貴!」


「……無理はするなよ。俺達の目的は……」


「わかっているさ。キュロス陛下、ユリナス様、リアナ様の護衛として力を欲しているだけだ。余力があれば、その他の人々も余裕で守れるようになるだろう?」


 自分の欲だけで、大局を見失うのは騎士道精神に反するからな。


 俺は強引(・・)に悔しさを押し殺して、明日久しぶりに会うアドバライの話をする。


「そう言えば、アドバライとおまけ(・・・)のミンジュはもう城下町にいるらしいぜ、兄貴」


「そのようだな。明朝、あのカフェで会う事になっているから楽しみだ。いや、楽しみなのはアドバライと会う事だけだが、やはりミンジュまで来ているようだがな……ミンジュはある意味お前が呼んだような形になっているから、対応は任せたぞ」


 こう言われてしまうと、確かにその通りなのだ。


 あのミンジュとか言うただの知り合いがフロキル王国を悪く言うので、少々頭に来て自分の目で確認してみろと啖呵を切ってしまった結果がこの事態を引き起こしている。


「わかっているさ、兄貴。だけど、後で愚痴位は聞いてくれよな?」


「ハハハ、任せておけ」


 こうして兄とは別れ、俺も第二隊の隊舎に戻る。


 その後は日課の素振り、走り込み、そして柔軟を入念に行う。


 この日々の積み重ねが強さを上塗りしていくのだ。

 日々無駄に過ごす者に未来はないとは、尊敬してやまないアルフォナ様の教えだ。


 <六剣>の中で攻撃力が最大と言われている<炎剣>ヘイロン殿も、見た感じはダラダラしているように見えるのだが、やるときはやると言う事は誰もが知っている。


 もちろんヘイロン殿と俺とでは立場が全く異なる。

 片や<六剣>所持者で、片や何もない俺だからな。


 普通の鍛錬では決して追い着く事は出来ない事位は分かっている。


 クソッ、今日はSランクダンジョンの修行の話を聞いてしまったせいか、中々心が落ち着かないぜ。


「いかんな、まだまだ騎士道精神が足りないようだ。先ずは身の丈に合った強さを極めることが先決だぞ、コーサス!その先に第一隊があるはずだ」


 頭を左右に振りつつ雑念を消去するべく、気持ちを切り替えた。

 

◇◇◇◇◇◇◇


 そんなコーサスの姿、そして呟きを、魔神に乗っ取られているミンジュに聞かれているとも知らずに、コーサスは一通りの鍛錬を終えた後に剣を整備し、眠りにつく。


 この第一隊に所属したいと言う渇望はまだ良いが、やはり兄弟間で大きな差をつけられてしまっている為に少なからず嫉妬心は存在している。


 その心が更なる高みを目指す起爆剤になっている側面もあるのだが、当然負の感情にもなるので、新生ミンジュの良い餌になってしまっているのだ。


 そして何も知らぬまま翌朝、カーサスとコーサス、そして、ミンジュとアドバライは夫々が待ち合わせのカフェに向かう。

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