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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
神と魔神
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アドバライとミンジュ

「明日の朝、ここで集合だアドバライ」


「本当に行くのか?そもそもフロキル王国やリスド王国、魔国アミストナでさえ他の国家を侵略するような事はしていないだろう?なんでお前はそこまでフロキル王国を目の敵にしているんだ?」


「お前は何も見えていないのだな、アドバライ。奴らは伝説にもなっている最強の剣である<六剣>と言う存在を全て手中に収めている。その力は今の所闇雲に振るってはいないようだが、それも俺達の情報収集能力の限界であって、本当の所は分からない。その真実を少しでも確認できるならば、俺は何処にでも行くさ」


 何を言っても意志を曲げないミンジュにアドバライは呆れているが、時折反撃はしている。

 しかし、状況は変わらない。


「それに、強大な力を持ち続ければその力を振るいたくなるのは道理。結局、この宣戦布告の状況をこれ幸いと、無暗にその力を振るってくるはずだ。その時になって慌ててももう遅い」


「お前な、勝手な想像で<六剣>や国家を悪く言うな。そもそも勝手に宣戦布告したアントラ帝国に非があるんじゃないのか?」


 正にド正論なのだが、ミンジュは意に介さない。


「俺達程度では掴む事ができない、奴らの悪行を掴んだが故の勇気ある決断だったのさ」


 全てが想定、妄想の範囲を出ないのだが、ミンジュのなかでのフロキル王国が悪であると言う事だけは揺ぎ無い事実になっているのだ。


 もう何を言っても無駄だと思い、せめてフロキル王国で迷惑を掛けないように監視する必要があると決意を新たにして、隊舎に戻るアドバライ。


「久しぶりにカーサスにも会えるってのに、上手く行かないな」


 とは言いつつも、本当に久しぶりにコーサスの兄であるカーサスに会える事は単純に嬉しかった。


 かなりの不安と、若干の楽しさを胸にアドバライは目を閉じる。


 一方のミンジュは、近衛騎士隊長の部屋にいた。


「わかっているな?ミンジュ。お前はアントラ帝国の暗部以上の実力を持っている。自信を持って行け」


「承知しました」


 実は彼らのフロキル王国への言いがかり、何の根拠もない理由での訪問は、あくまでもプライベートではあるが近衛騎士隊長は全てを知っていた。


 そして、そのミンジュに何やら任務を与えているようなのだ。


 しばしその任務の確認を誰にも聞かれないように会話した後、近衛騎士隊長であるカレイジャは、最後にミンジュに確認をした。


「……と言う訳だ。で、お前は同僚であるアドバライを見放す事が出来るのか?」


「全く問題ありません。あくまでも長い間行動を共にしたと言うだけの存在であり、それ以上でもそれ以下でもありません。我がエクリアナ王国の糧になるのであれば、奴にとってもこれ以上ない誉でしょう」


「良いだろう。この作戦、我が国の今後を大きく左右する事を改めて肝に銘じておけ。言わずともわかっているとは思うが、フロキル王国の連中、特に奴らの自信の元となっている<六剣>の無効化、そして我らが“影”の実力を知らしめることにより、この時代の覇国となるのだ」


「仰せのままに」


 これ以上ない不穏な会話をしているミンジュと近衛騎士隊長であるカレイジャをよそに、アドバライは幸せそうに隊舎で寝息を立てていた。


……翌朝……


「良し。じゃあ行くぞ、アドバライ」


「ああ。だが、今更だが良く隊長が俺の長期休暇も許可してくれたな。ミンジュ、お前が何か言ってくれたりするのか?」


「いや、何も言っていない」


 あの不穏な会話の中でもあるようにアドバライが知らない作戦が実行されており、その中核を担うのがアドバライ本人なのだ。


 その為に近衛騎士隊長であるカレイジャは、アドバライの長期休暇申請を問題なく許可していた。


 長距離の馬車に乗り、二人は一路フロキル王国に向かう。


 片や任務を必ず完遂すると言う確たる決意で、片や同行している同僚の暴走を止めると共に、久しぶりに会える友人との再会を楽しみにして……


 二人が出立したのを見届けた近衛騎士隊長のカレイジャは、国王であるコテールに賽は投げられたと告げるのだった。


 その一報を受けた国王コテールは、同盟国、アントラ帝国を含む全ての国家に対して数日後にはエクリアナ王国の最強部隊である“影”が動く事を告げ、フロキル王国に混乱が生じた際には即時出撃が出来るように準備を秘密裏に実行するように告げた。


 その出撃対象国家は、フロキル王国だけではない。


 距離の関係でフロキル王国に到着するには数週間必要な国家も存在しており、それぞれフロキル王国とその同盟国であるリスド王国、魔国アミストナの何れか近い国家に攻撃する事にしていた。


 いくら<六剣>が強大な力を有していても、混乱状態にあれば他国まで守る余裕はなくなるだろうと言う判断だ。


 <六剣>と<無剣>の七人対複数の国家戦力。


 数に物を言わせて複数個所を攻める事により、ダメージを与える作戦だ。


 そんな中、それぞれ旅をしながら魔人に対する情報収集をしている<無剣>ロイド、<闇剣>ヨナ、そして<炎剣>ヘイロン、<水剣>スミカは本当に気ままに行動していた。


 過去の大々的な凱旋パレードによって<闇剣>ヨナ以外の面は割れている為、今回フロキル王国に敵対している国家には直接戦線布告をしてきたアントラ帝国以外は向かわなかった。


 アントラ帝国だけは実際に入国時に違和感を覚えた国家である事、そして明らかに魔神の眷属である魔人であるジーダフ伯爵が居た場所である事からやむを得ず向かったが、他の同盟国に向かうと戦闘の意思ありと判断される可能性がある事から、他国に関してはテスラムのスライムによる継続的な監視が行われていた。


 既に魔人は自らの戦力すら完全に抑え込んでいる状況になっているので、新たな情報を掴めてはいないのが現状だ。


 ンムリドから得た情報から即座に動いたのだが、ジーダフとマドレナスの方が若干ではあるが動きが早かった。


 その結果、当てもなく旅をしつつ違和感を探している<六剣>の三人とロイド、そしてスライムを使って情報収集をしているテスラムが未だに活動中なのだ。


『皆様、かなりの時間調査したと思いますが、あの魔人であるンムリドの自白から得た情報を使っても何も出て来ませんでした。恐らく完全に潜られてしまったので、何か事が起きない限り新たな情報は出てこないでしょう』


『テスラムさん、俺達の方でも今の所何もないから、そうかもしれねーな。じゃあ、次のチャンスはアントラ帝国が実際に動き始めた時ってことか?』


『ヘイロンの言う通りかもしれないな。俺の方も異常なしだよ、テスラムさん。ヨナの力でも何も異常は感知できないし、もちろん俺も何も異常な気配を感じる事は無かったからな。まっ、調査をしつつもアントラ帝国周辺には継続して警戒すると言う事で良いんだろうな』


 アントラ帝国ではなく、その同盟国であるエクリアナ王国から“影”がフロキル王国に向かっているとは知らず、軽い情報交換が行われていた。


 テスラムの眷属であるスライムによってその姿は捕らえられているのだが、流石のテスラムも世界中にいるスライムの情報を全て把握するのは不可能だ。


 ただの人族が単純に馬車に乗っているだけの情報。

 そんな情報を全て読み取る事などできはしないのだから。


 その隙を突く形で、エクリアナ王国の“影”の一人であるミンジュがフロキル王国に近づいている。

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