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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
神と魔神
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ミルキャスの力

 ンムリドは、人族が極上の負の感情を出す時は裏切られた時であると理解していた。


 何も裏切りとは仲間からの裏切りだけではなく、信じていた自分の力が通じなかった時にも当てはまる。


 自分が信頼していた自分自身の力に裏切られたのだから……


 その力が大きい程に負の感情は大きくなる傾向があるので、ミルキャスであれば直接的な裏切り行為でなくとも良い感情を得られると言う確信もあったのだ。


 丁度今日は、残り二人の眷属であり魔人である仲間への定時連絡の日。


 三人で決めた暗号を使ってギルドから全ての国家のギルドに発信するので、その頃には自らの力が爆発的に増加したと報告できると喜んでいた。


「そうなのですか?それは知りませんでした。何か手違いがあったのかもしれませんね。私としてはこのダンジョンに関する依頼を行う大先輩に敵対する意思はありませんので、この鉱石も差し上げます」


 ミルキャスを信用させるために、採掘していた鉱石をためらいもなく全て渡そうとするンムリド。


 そして互いに手を伸ばせば触れられる距離に近づくと、ンムリドは突然抜剣してミルキャスを切りつけた。


「ハハハァ。死ぬんだな。お前は邪魔でしょ。僕の糧になるんだな」


 初撃を振るった後に、滅多切りにするべく超高速で剣を動かすンムリド。


 正直お粗末な剣術ではあるが魔人としての身体能力、そして今まで得た極上の負の感情による力の増幅によって相当な攻撃力を有していた。


 実はンムリド、剣術よりも魔術の方が得意ではあるのだが、周囲への被害を考えて剣術で始末する事にしていたのだ。


 そして目の前のミルキャスが細切れになったように見えると、勝利を確信した。


「これが<六剣>の縁者とは、笑わせてくれるんだな。この程度の力、僕達魔人の足元にも及ばないんだな」


 満足そうにしているのはここまでだった。


 何時まで経っても負の感情が得られないからであり、つまりは対象が死亡していない事を裏付けているのだ。


 慌てて周囲を見ると、確かに切り刻んだはずのミルキャスが消えていた。


「おかしいでしょ?」


 即座に防御魔術を展開する所は冒険者として活動していた経験による物だろうか、素晴らしい判断と言えた。


……キィーン、キキキィーン……


 その直後に、背後から何かをはじくような音が複数回聞こえた。


 慌てて振り向くンムリド。何故か複数のナイフが弾かれるように舞っていた。


 そしてンムリドの視線の先には、傷一つついていないミルキャスがいたのだ。


「お前、何だな?何故無事なのか、おかしいでしょ?」


「まったくおかしくありませんね。騎士道精神があれば全てを容易に白日の下に曝け出す事が出来るのです。そう、あなたのような魔神の眷属の存在すらも!」


 騎士道精神にそんな力は一切ないが、アルフォナを崇拝しており、自らも騎士道精神について日々深く考えているミルキャスは、その力を一切疑っていなかった。


「ですが、魔神の眷属が魔人ですか。安易すぎてつまらないですね。それで、あなたの名前はンムリド……もう一人の魔人はジーダフ、他に眷属は誰がいるのでしょうか?」


 やはり騎士道精神だけでは全てを白日の下には晒せないようだが、お構いなしにミルキャスは続ける。


「こんなところでコソコソ、ウネウネ。騎士道精神に真っ向から反するような行動を取る所も、所詮は魔神の眷属と言った所ですね」


 小バカにするように告げるミルキャス。


「ですが、そんなウジ虫でも益になる行動を取る事が出来ます。残りの眷属の人数とその居場所を伝えるのです。そうすれば、騎士道精神に誓ってこの場では命をとらないと約束しましょう」


 ンムリドからすれば結局他の場所では殺されると言われているような物なので、こんな内容に従うわけもない。


「お前、バカにするのを止めるんだな!」


 既にミルキャスを攻撃していた剣を手放し、転送の魔術を使ってミルキャスの背後に移動させているンムリド。


 更には自らも攻撃魔術を構築し、一気に襲い掛かった。


「まったく。あの攻撃が通じなかったのですから、実力差位は分かりそうなものですけれど。騎士道精神に通じていないとこんなモノなのでしょうか?」


 必死の攻撃、そして死角からの攻撃をしているのだが、ミルキャスは呆れたような声をしており一切の焦りを感じさせない。


 一旦攻撃の手を緩めると、そこには全くの無傷であるミルキャスが存在したのだ。


「なんでなんだな?」


「油断ですか?本当に騎士道精神の何たるかを全く理解していない。これだから雑魚はダメなのです」


 との直後、ンムリドは何故か視線が一気に下がった事を理解した。


 今まではミルキャスを見下ろす様な位置だったのが、何故か見上げていないとミルキャスの顔を見る事が出来ないのだ。


 ンムリドはその原因が分からない状態のままなのだが、ミルキャスはお構いなしに近接してくる。


 魔術で攻撃するには対象との距離がある方が有利なので、距離をとろうとするのだが一向に移動する事ができない。


 そこで漸く慌てて足元を見ると、何故か足がなくなっていた。

 きょろきょろすると、左右に切断されている自分の足が……


「何なんだな!!お前は、何なんだな!!」


 何が何だか分からないンムリド。


 そんなンムリドを、一切変わらない表情で見つめつつ近接するミルキャス。


 ンムリドは無事な両手を使って張って逃げようとするのだが、そこで意識が途絶えた。


「何ですか、この雑魚は。全く騎士道精神の“き”の字も見えてこない。こんな雑魚が存在するなんて、許しがたい……しかし、アルフォナ殿からの指令は捕縛。ここで始末したい所ですが、仕方がないですね」


 ンムリドは何をされたか理解すらできなかったが、圧倒的な速度で足を切り落としただけだったりする。


 特にそれ以外の力、特異能力である<闇>の魔術すら使っていないのだ。


「ですが、私のために鉱石を採取した所だけは加点してあげましょう」


 奇麗に袋に入っている鉱石を無造作に掴むと、同時にンムリドの髪の毛を鷲掴みにして上層階に移動するミルキャス。


 そこそこ急いだので、十分ほどでダンジョンの外に出たミルキャス。

 手始めに作戦が上手く行った事を<六剣>達に連絡する。


『素晴らしいぞ、ミルキャス。やはりお前の騎士道精神は素晴らしい』


 即座に反応して見せたのはアルフォナであり、この言葉にミルキャスは感動していた。


 その直後、決して油断はしていないのだが、ミルキャスにはその気配を察知できない状態でヘイロンとスミカが現れたのだ。惜しみない称賛と共に。


「スゲーじゃねーかよ」


「流石ですね、ミルキャスさん」

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