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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
神と魔神
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冒険者ンムリド

 幸か不幸か、ギルドには短い時間しか滞在していないヘイロンとスミカとかち合うことなく行動できているンムリド。


 もう一人の魔人マドレナスは、既に護衛の任務を受けてアントラ帝国を後にして遥か遠くにいる。


 ンムリドはアントラ帝国で冒険者活動をするのは初めてなのだが、人の力を超えない範囲で依頼を完遂し、受付からの信頼を勝ち得ていた。


 常にソロで活動をしているので、他のパーティーからは勧誘を受け続けている人物でもある。


 そんなンムリド、今日も情報収集の傍ら、アントラ帝国ギルドで冒険者としての地位を確たるものにするために冒険者活動を行っている。


 周囲に存在する魔獣の始末は殆ど受ける事は無く、ダンジョン内部の素材入手依頼を受けていた。


 素材入手だからと言って危険がないかというとそのようなわけもないので、ソロでは危険と諭された事も多々あるが、結果を示し続ける事で受付を納得させていた。


 ヘイロンやスミカに推奨していた高レベルダンジョンの依頼を受けるまでには至っていないのだが、そもそも魔人と疑われないように、いや、魔人と言う存在が明らかになっていないので、人ではないと明らかにならないように力を抑えて活動している以上、仕方がない結果だ。


 ンムリドがソロ活動を続けているのはもちろん理由があり、一つは周囲に人がいなければ自分の力を必要以上に抑える必要がない事、二つ目は、ダンジョン内部で同行を依頼された冒険者達を、誰の目にも触れない位置で始末する事が出来るからだ。


 こうして時折人目に付かず冒険者をダンジョン内部で密かに始末し、そして気が付いた。


 信頼している人物から裏切られると言う極限の状態で人族を始末すれば、期待以上の負の感情を得て自らの力を劇的に増加させる事が出来るという事を。


 戦争によって多数の負の感情を得るに等しい成果を上げていたのだ。


 だが、ここで慌ててしまっては何処でスライムに嗅ぎつけられるか分からないし、変な噂が立って<六剣>どころかギルドにまで目をつけられると最悪だ。


 そのために率先して自ら冒険者をダンジョンに誘い出すような事はせず、あくまでダンジョン内部で偶然出会った者、そしてスライムが存在できない階層でのみ始末する事にしていた。


 冒険者はある意味根無し草で自由人。


 依頼を受けてそのまま飲み潰れて依頼を達成できない者も多数いるし、依頼その物を失念してそのまま他の地域に移動してしまう者もいる。


 そんな冒険者達の依頼達成率が下がるのだが、上位の冒険者でない限りその辺りは気にする人はいなかったのだ。


 結果、依頼を受けてギルドに期日内に戻ってこなくとも、受付を含めて誰も気にする事は無かった。


 このおかげでンムリドは、比較的深くに潜っている冒険者達に自ら近接して数日行動を共にして信頼を勝ち取り、土壇場で裏切ると言う行為を繰り返して自らの力を増幅させていた。


 依頼を受けずにダンジョンに潜る事、数週間。


「そろそろ一旦地上に出て、情報でも集めるんだな」


 地上に向かう途中で魔人としての力を封印しつつ、慎重に出口を目指す。

 既に周囲はスライムが存在できる環境となっているので、油断はしない。


 その後、情報収集するべくギルド併設の酒場に向かったンムリド。

 どこの世界でも酒を少々飲ませれば、口が軽くなる事を知っていたのだ。


 想定通り、少し酒を奢ってやった冒険者はペラペラと自慢話のように、今迄ギルドや依頼中に起こった出来事を気分よさげに話していた。


 その中に、<炎剣>ヘイロンと<水剣>スミカの来訪の情報があったのだ。


 一瞬渋い顔になるンムリドだが、自分と言う存在が知られていない事、そして魔人としての格が大きく上がっている事から、特に隠れるような事はしなかった。


 数人の冒険者に酒を奢り、それぞれの話を聞いていたンムリド。


 中にはンムリドが始末した冒険者と仲が良く、何も告げずにいなくなるわけがない……と涙を流す者もいたのだが、そんな存在がいたとしてもギルドとしては一切関知していない事が確認できて安心していた。


 その時の冒険者から出る負の感情も漏れなく力として蓄えていたりする。


 かなり長時間ギルド内部にいたので、やがて受付が一瞬騒がしくなったのに気が付いた。

 そこに視線を向けると、情報通りに<六剣>の二人がいたのだ。


 そしてなぜか、そこに一人の騎士なのか、冒険者なのか、何とも言えない微妙な服装の女性が一人いた。


 ンムリドを始め、この場にいる冒険者達は<六剣>の素顔を知っている。


 いや、<闇剣>ヨナ以外にはなるのだが、ヨナは漏れなく<無剣>のロイドに付き従っていると有名であり、遠く離れているとある城下町のギルドで活動していると言う話が流れてきている。


 これは事実であり、<六剣>の二人の来訪に興奮した冒険者の一部が、他の<六剣>達の状況を受付に聞いた結果だ。


 ギルドは独自のネットワークを持っており、ギルドマスターを通して情報開示の許可を得た受付がその情報を公開したのだ。


 つまり<六剣>の二人と話をしている女性は<六剣>ではないという事だ。


 今目の前でンムリドから酒をご馳走になっている冒険者からこう説明を受けたンムリド。


 ここで力を少しでも使うと<六剣>二人にその存在が明らかになるので、酔いが回っていない内に目の前の冒険者にあの女性の強さを見極めてもらう事にした。


「貴方から見て、<六剣>二人の傍にいる女性の強さはどう見ますか?」


 スライムや<六剣>の異常な力によって聞かれても怪しまれない内容、そして態々口調まで変えて聞いている。


「そうだな……相当強そうだ。このギルドの上位一握りと同等ってところか?」


 ンムリドは、ギルドに来た瞬間に周囲を警戒し、<六剣>やスライムが存在しない事を確認したうえでこの場の冒険者の強さをある程度把握していた。


 そんな中で最も強い人物に今話をしているので、この情報はある程度信頼できるだろうと判断した。


 数日自分も日帰りで実行可能な依頼をこなしながら観察すると、初日こそ三人で活動していた<炎剣>ヘイロンと<水剣>スミカ、そして謎の女性だが、二日目からは<六剣>二人は消えたのだ。


 受付に確認すると他の町に向かったとの事で、事実門から二人の<六剣>が出て行く姿を見た冒険者が多数いた。


 そしてこのアントラ帝国のギルドに一人残った女性については、<六剣>二人の身内同然と紹介され、このギルドで暫く活動すると言っているのだ。


「これは……チャンスか?」


 <六剣>の二人と行動を共にしていたと言う事は、受付から得た情報からも<六剣>所縁の人物である事は間違いなさそうだ。強さはこのギルドで最上位と言っても良い強さ。


 そんな人物の負の感情を得られれば、目の前で確認できた<六剣>二人に対しても勝機があるかもしれないと思ったのだ。


 ただ単純に負の感情を得るのではなく信頼させてから裏切ると言う、いつものパターンであれば相当な負のエネルギーを得る事が出来ると確信していた。


 しかしこの女性、ンムリドには許可されていない<六剣>が向かっていたダンジョンの鉱石採取を一手に請け負っており、ダンジョン深層で周囲に知られずに共に行動する事は非常に難しい状況になっていた。


「仕方がないでしょ。こうなったら、僕ももう少し受付の信頼を得て、あのダンジョンに潜るしかないんだな」


 <六剣>二人が受付に紹介した女性の名前は……ミルキャス。<闇剣>配下の者だった。

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