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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
神と魔神
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冒険者ヘイロン

「じゃーな。また来るからよ」


「楽しかったです。また来ますね!」


 集落総出の見送りを受けて出立するヘイロンとスミカ。


 比較的短い間隔で訪問しているので、そう長く待たずに再び訪問してくれると理解している集落の人々の表情は明るい。


 リスド王国やフロキル王国、更には魔国アミストナにもこの集落は認知されているので三国からひっきりなしに訪問者があるおかげで、既に集落とは言えない程発展し始めている。


 安全度も上がり豊かになっている上に集落に定住している人物も出始めているので、安心してその場を後にする二人だ。


「次だけどよ、やっぱりあのアントラ帝国。あそこに暫く拠点を構えようと思っているんだが、どうだ?どう考えても怪しさ満点の国家だろ?」


「そうですよね。でも、どう生活するのですか?」


「そりゃお前、俺の本職忘れたかよ?冒険者だよ、冒険者!」


「そうでした!そうですよね。私も久しぶりに活動したいです!」


 あっけなくアントラ帝国で冒険者として活動する事が決定した二人。


 そこには冒険者として再び活動を始めているンムリド、そして新たに冒険者として登録しつつも、アントラ帝国を拠点にしつつ遠方に行く商人の護衛と言う立ち位置で活動しているマドレナスも存在している。


 二人の魔人は、ジーダフがいた場所は調査し尽くされており、<六剣>が再び現れる可能性は他の地域より低いだろうと言う楽観的観測からこの地を拠点としていた。


 <六剣>は彼ら三人の魔人の顔は知らない。


 有名であるはずのジーダフ伯爵の顔についても、貴族と言う立ち位置の者達には縁がないので記憶にないのだ。


 キュロス国王やキルハ国王、ナユラはおそらく直接会った可能性はあるのだが、多数いる一貴族の顔など、余程の事が無ければ覚えている訳がない。


 結果、<六剣>達は魔人の素顔を知らないが、魔人側は<六剣>の姿を知っていると言う状況になっていた。


 集落から瞬時に移動が終わった二人の<六剣>は、迷わずギルドに向かって中に入る。


 皇帝からは脱兎のごとく嫌われているフロキル王国、そしてその王国の国家中枢と非情に有効な関係を築いている<六剣>達は、アントラ帝国の貴族・皇族からは当然のように嫌われているのだが、冒険者は全く異なる。


 独立機関である為、国は関係ないのだ。


「おい、あれって<炎剣>ヘイロン、<水剣>スミカじゃないのか?」


 とある冒険者のその一言を皮切りに、一気に注目の的になる二人。


「少しは有名みてーだな。これ程注目されるたーな。スミカ、お菓子止めて良かったじゃねーか。バリバリ食ってる所を注目されちゃ、みっともねーからな」


「もうっ、ヘイロンさん。止めていませんよ。控えているだけですよ!」


 いつも通りの会話をしつつ、受付に向かう。


 心なしか受付も緊張しているように見えるのだが、二人は一々気にしていたらきりがないと理解しているので何もない風に依頼を受けようとする。


「私達二人で行動しているのですが、何か良い依頼はありますか?多少難易度が高くても良いですよ?」


「えっと、それでしたら……ダンジョン下層の鉱石採取でも大丈夫でしょうか?」


 受付の言葉を聞いていた周囲の冒険者は、尊敬の眼差しでヘイロンとスミカを見ている。


「流石は<六剣>。受付があのダンジョンの下層に行っても問題ないと判断するなんて、余程の事だぞ」


 そんな呟きももちろん聞こえているが、これにも反応を示さない二人。


「それで大丈夫ですよ。見本はありますか?それと、何階層で採れるのですか?」


 着々と進む依頼の受注。


 二人としては、この行為はお金を稼ぐ行為ではない。


 いや、宿泊や食事のためのお金は少々稼ごうとは思っているのだが、受付や冒険者と仲良くなり、そこから情報を貰う事が目標なのだ。


 スライムでは得られない、人と直接交渉する事で得られる情報を知ろうとしている。


 スミカが交渉を行っている最中、ヘイロンは受付から遠ざかって一般的に出ている依頼書が張られているボードの前に移動する。


 何となく見ているとフロキル王国のギルドと似た様な内容の依頼があったので、ギルドは何処でも大差ないと理解する事が出来た。


「お待たせしました、ヘイロンさん。行きましょうか」


「場所は分かるのか?」


「任せて下さいよ。既に補足しています!」


 他の冒険者には意味が分からないが、<六剣>の力を使って場所は既に把握済みと言っているのだ。


 ヘイロンはスミカが受けた依頼の報酬については何も聞く事は無い。


 食事と寝床が確保できる程度の収入があれば文句はないからだ。


 スミカも同じような考えであり、互いを理解しているために態々ヘイロンに説明する事無くギルドを後にする。


「スゲー。流石は<炎剣>ヘイロン。あのダンジョンに向かうのに、詳細を知ろうともせずに平然と向かうとは……あのダンジョン、浅層でも相当熟練じゃないと危険だろ?俺には信じられないぜ」


「<水剣>スミカも異常だぞ。受付では階層と鉱石の見本について聞いただけで、ダンジョンのレベルや魔獣の種類、一切を聞いていないんだ」


 二人が去ったギルドは、沸き立っていた。


 伝説の<六剣>を持つ人物の内の二人が突然現れたのだから、こうなってしまうのも仕方がない。


「そんで、何階層だって?」


 門の中では全力で移動すると周囲に与える影響が大きいので、普通に歩いて門に向かう二人。


 結果的にこの二人にしてみれば、ギルドから門に向かう方が門から遠く離れたダンジョンに向かうよりも遥かに時間がかかる不思議な状況に陥っていた。


「えっと、35階層って言っていました。私の力ではダンジョン内部までは把握できないのですけど、どうですか?」


「あっちだよな?確かに深いダンジョンがあるな。35階層……一、二、……ここか。確かに貴重そうな鉱石があるぜ。楽勝だな」


 <六剣>が解放されたので、遠く離れたダンジョンの深層すら<探索>出来るようになっていたヘイロン。


 安全かどうかは口にしない。

 二人の実力であれば安全以外は有り得ないからだ。


 やがて門に到着し、外に出ると街道から外れる位置に向かう二人。

 森を始めとして周囲の環境に影響のない範囲に力を抑えつつ移動し、即座に依頼を達成する二人。


「これで終わりか?」


「そうですね、この位の大きさを三つって言われたので、完了ですね」


 通常、ダンジョンに向かって到着する程度の時間で依頼を完了して戻ってきた二人を見て、更にギルドが湧きたったのは言うまでもない。

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