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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
神と魔神
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平穏は続く

 開戦推進派の急先鋒としてその名を知られている、エクリアナ王国のコテール国王。


 アントラ帝国の皇帝カリムとも旧知の中である為に、推進派代表として開戦を早くするように皇帝カリムに対して進言するべく訪問していた。


 結果は、その目の前で<六剣>の実力のほんの一部を見せられ、その力の影響で動けなくなってしまうと言う初めての屈辱的な経験をしていた。


 内なる屈辱による怒りの炎を抑え込み、推進派の会議に臨むコテール。


「それでコテール国王。開戦は何時になったのだ?」


「我ら、何時でも出撃できますぞ」


「魔国など、国家として認めるわけには行かない。一刻も早く粛清すべきだ。最早待ちきれんぞ」


「その通りだ。あのような国家は国家ではない。我らの力で粛清し、その国土を掌握する必要がある。悪魔とは言え、多国によって攻めれば恐れるに足らず!」


 すっかり開戦がなされるものとして会議に参加している各国の代表は沸き立っていた。


 一部の者達は、魔国アミストナが魔獣の素材を安定して出荷している事や、国土の中に存在している希少価値のある鉱石をその手にせんと企んでいる者もいる。


 その中で、表面上は落ち着いた表情のコテールが立ち上がる。


「落ち着いてもらおうか。私は宣戦布告を行ったアントラ帝国の皇帝カリムと話をしてきた。そこで、あの三国の最大の脅威である<六剣>とも対峙した。彼らはこちらの情報を、全てスライムを通して得ているのだ」


 ある程度は流れている情報だが、改めて確定されると嫌な表情をする面々。

 どこにでもいるスライムによって情報が抜かれてしまうのだから、非常に厄介なのだ。


「もちろんこの場には魔獣は存在できないようにしているので、安心して貰おう。それで<六剣>だが、俺が目にしたのは<水剣>スミカと<炎剣>ヘイロンだ」


「なんと、<六剣>最強と言われている<炎剣>と対峙されたのか。して、コテール殿がこの場にいるという事は、撃破できたという事か?」


 如何に伝説とは言え、その真の力に触れた者はいない。


 魔国のソレントスによる陰謀を防いだ事、つまり悪魔に戦闘で勝利した事は知っているのだが、そこまでだ。


 強国であるエクリアナ王国のコテール国王であれば、<六剣>最強と言われている<炎剣>ヘイロンに対しても勝利を収める事が出来ると思っていた。


 現実は手も足も出ず、いや、口すら出ずに屈辱的な扱いを受けていたので、苦い顔を隠せていない。


「いや、特に戦闘をしたわけではない。だが不本意ながら奴ら<六剣>の力は本物だ。迂闊に動けば確実に全滅するのは我らである事は間違いない。暫し様子を見ると判断しているカリム皇帝は正しい」


 途端にざわつく会場。

 開戦一本しか選択肢がないと公言していたコテールが、真逆の判断を下したからだ。


 当然コテールに対して翻意を促すような発言や少々見下した発言をする者もいたが、コテールはこの意見を曲げる事は無かった。


 結局どれ程のリスクを負うかが不明である事から、同盟としての開戦は暫し見送られる事になった。


 その為にこの世界は一見平穏を維持しており、民も生活を脅かされるような事は無かったのが幸いだ。


 一方のヘイロン達は、アントラ帝国に乗り込んだ際にはジーダフ伯爵について何かを聞く事は無かった。


 何故ならば、既に今までの情報からこの皇帝カリムは帝位という立場以外に何の力もなく、ジーダフの行方すら知らずに必死になって探している事を知っていたからだ。


 そしてこの皇帝カリム唯一の行動とも言える宣戦布告に対しても釘を刺したので、それ以上何かをする必要はないと考えていた。


 あの場でカリムとコテールを始末する事も容易だったのだが、各国が大混乱に陥る事を危惧して実行しなかった。


 こうして平和を維持する事が可能になっているこの世界。

 

 <六剣>達も各自で好きに行動し、ヘイロンとスミカも再び集落に戻っている。


 もちろん魔神に対しての情報を得るために、その手先と断定しているジーダフ伯爵の行方を掴むべく、情報収集も行っている。


「居心地は良いが、何時までもここにいるわけにもいかねーよな」


「そうですね。騎士達もしょっちゅう立ち寄っているようですから、ここは大丈夫ですもんね」


 すっかり仲良くなったこの集落の少女アリサと遊びながら、明朝にはこの場所を出る事を決意していたヘイロンとスミカ。


 再び調査と言う名の旅に出る事にしたのだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 その調査対象となっている魔人の三人は、最早外の情報を得る手段が何もない状態で引き籠っていた。


 虫獣を使おうものなら、その存在が<六剣>に明らかになっているので足が付く可能性があるのだ。


 情報や負の感情を虫獣から得るためには、直接その虫獣に触れなくてはならない。


 移動している虫獣を追跡される可能性が捨てきれないのでその手段はとれずに、只々ジーダフが伯爵としての地位を利用して準備した拠点で大人しく生活していた。


 彼らには最早野望は一切なく、何とか平穏無事にその生を終えたいと考えていたのだ。


 人族とは異なり、かなり長寿ではあるのだが……


「ジーダフ、何時まで私達はこのような生活を送る必要がありそうか、わかるか?」


「少なくとも、今代の<六剣>の一部でもいなくなるまで……だな。そうだンムリド!お前、冒険者として活動していたな。その身分で再び活動し、情報を仕入れて見たらどうだ?」


「僕?それを言うなら、マドレナスも集落の周辺で活動していたでしょ?」


 外部の情報を入れるために直接活動する必要があるのだが、その役目を押し付け合っている魔人。


 最低でもジーダフについては伯爵として長きに渡って人族として活動していたのでその姿が明らかになっている可能性が高く、この場所からは動かない方が良いという事は理解している。


 そこで残りの二人、集落周辺でコソコソ負の感情を集めていた一般人として活動していたマドレナスと、冒険者として仲間や偶然会った冒険者から負の感情を得ていたンムリドが活動する事になった。


 果たしてこの選択が世界に、そしてこの世界を司る魔神にどのような影響を与えるのか……


 彼らは知らない。


 攻撃力は<六剣>随一とされている<炎剣>ヘイロンは冒険者である事を。

 同行している回復が得意な<水剣>スミカは、一般人である事を。


 偶然か必然か、水の流れに逆らえないように、神と魔神に属する者達は対峙する事になるのだ。

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