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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
神と魔神
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アントラ帝国皇帝カリム

「遅い!マーシュはまだか!ミルキャスはどうした!!」


 謁見の間にて、宰相を前に苛立つアントラ帝国の皇帝カリム。


 マーシュが暗部最高傑作として総隊長に推したミルキャスを連れ戻すと宣言してから、はや一月以上が経過している。


 マーシュは確かにミルキャスがいると伝えていたハンネル王国に向かってはいたのだが、国内の動きに関する詳細な情報がなくただ只管に帰還を待ち続けていたのだが、何時まで経っても帰還どころか連絡すらないのだ。


 今の所は宣戦布告をしてからは硬直状態を維持しているが、何時フロキル王国、リスド王国、魔国アミストナが動き出すかもわからない。


 同盟国の間では<六剣>の強さに懐疑的な国家や、魔国と言うだけで嫌悪感を露わにする国家も多数あり、盟主的な存在でもあるアントラ帝国に侵攻開始の催促が日々激しくなっている。


「クソ。あの無能共。暗部さえ建て直せば少しは安心できるはずが……ジーダフ伯爵はどうした?」


「いえ、未だどこにもいらっしゃいませんが……」


 誰にも明らかにしていないが自らの主であり人族ではないジーダフ伯爵と言う存在とも、魔道具を介しても一切接触する事が出来なくなっており、正に孤立してしまった皇帝カリム。


「ですが陛下。宣戦布告をしているのですから、このまま他国の要請通りに一気に三国に攻めてしまえば宜しいのではないでしょうか?」


「……お前はもう下がれ」


 不機嫌になり、目の前にいる宰相を有無をも言わせずに下がらせるカリムと、突然このような事を言われながらも立場上指示通りに下がる宰相。


「あの無能が。ここで<六剣>に真面に喧嘩を売ってみろ!滅ぼされるのはこっちだ!」


 自ら宣戦布告をしているのだが、攻め込めない理由はここに在る。


 その指示を出した魔人であるジーダフ伯爵としては、大戦争時に得られる膨大な負の感情を得るための一つの作戦だったのだが、何故か<六剣>の力が強大である事を認識したとたん、それ以降何の指示も出せずに閉じこもっているのだ。


 それも残りの二人の魔人と共に。


 正に梯子を外された皇帝カリム。


 この窮地をどう乗り切るかを必死で考えているのだが、ジーダフ伯爵関連の真実を第三者に話すわけには行かないので、一人苦悩している。


「こんな事なら、大人しくしておけば良かった……」


 後悔しても始まらない。

 唯一の救いは、宣戦布告をした相手である三国家が静観している所だ。


 その仮初の平和を脅かそうとしているのがアントラ帝国の同盟国家であり、早く攻撃を仕掛けるべきだと矢の様な催促をしている。


 本来は頼りになる言動であるはずが、今のカリムにとっては巨大な爆薬に繋がる導火線に火をつける行為に他ならない。


 そこに、再び宰相が現れた。それも今のカリムにとっては最悪の相手と共にだ……


「久しいな、カリム。お前が腑抜けているようだから直接会いに来てやったぞ」


「コテール……」


 この男はエクリアナ王国の国王でありカリムとは長い付き合いである為、本来は喜ばしい来訪なのだが……


 このエクリアナ王国は常に武力を重要視し、常に戦いに飢えている国家なのだ。


 当然この現状を何とか維持したいカリムにとってみれば、燻っている火種に燃料を投下する国家、人物である事は間違いない。


「お前、あの三国に宣戦布告をしたところまでは見所があったが、その後はなんだ。何時まで経っても俺達の開戦要求を無視するは、軍議すら開かんは、一応これでもお前を心配してきてやったんだがな」


 目の前に大戦争が待っているのだから、この男は中途半端に言いくるめる事は出来ないと知っているカリム。


 言える事と言えない事、そう、魔人ジーダフ伯爵についてはその存在を伝えるわけには行かないが、<六剣>達の力については真実を伝え、何とか鉾を収めて貰おうと考えた。


「それが、そう簡単に攻める事が出来ないのだ。あっちには<六剣>がいる。その力を調査させた所、今の我らでは手も足も出ないと判断した」


「……お前、俺を舐めてんのか?」


 突然殺気を漏らすコテール。

 自分も含めて<六剣>に手も足も出ないと言われているのだから、当然だ。


 しかし、その殺気を前にしてもカリムは平然としている。


 魔人であるジーダフ伯爵と長く接していた影響で、この程度の殺気では恐怖を覚えなくなっていた。


「ほぅ、お前も力を付けた様だな。そんなお前がそこまで怯える<六剣>か。伝説通りの強さなんだろうな。楽しみじゃねーか」


 獰猛な笑みを浮かべているコテールだが、もちろんその会話も<六剣>達に筒抜けだ。


『テスラムさん。あんなこと言ってるぜ?』


『私達、丁度アントラ帝国の近くの例の集落にいますから、このまま向かいましょうか?』


 ヘイロンとスミカは修行を終え、再びアントラ帝国に向かう途中に立ち寄っていた集落に滞在していた。


『正直、我ら<六剣>の力を使って攻撃してしまうと影響が大きすぎますな。困ったものです。警告だけに留めて置けば良いのではないですか?如何でしょうか、ロイド様?』


『え?俺は良く分からないから、テスラムさんに任せるよ』


『私としても、警告で何事もなく済めば良いと思いますが……』


『確かに、騎士道精神を持って優しく諭してやれば、無駄な争いが如何にばかげているか気が付きそうなものだな。争う暇があれば、自らを鍛えた方が余程有意義なのだが』


『警告、大事』


 結局<六剣>達の総意として、ヘイロンとスミカが好戦的なコテールが存在している内に直接警告を出しに行く事にした。


 口で言っても分からないはずなので、お土産と共に……


 暗闇を失踪しているヘイロンとスミカ。


「まったくよ。何時まで経ってもバカは際限なく湧き出て来やがる」


「そうですね~。でも、宣戦布告した後に動かないのは良い事ですよね?」


 と、この短い会話をするような時間でアントラ帝国の皇居内にまで侵入できてしまう<六剣>の二人。


 迷う事なく謁見の間にいる三人、皇帝カリム、国王コテール、そして宰相の元に向かった。


「邪魔するぜ!」


 突然ドアを蹴り飛ばして開けるヘイロン。


 気が付かれないように侵入する事も容易だが、格の違いを確実に理解させるためにこの様な行動を取った。


「あっ、お邪魔しまーす」


 その後ろから、友人の家に招かれたかのように緊張感のない笑顔で入ってくるスミカ。


 その二人を見て、普通であれば警戒して騎士を呼ぶなりコテールであれば抜剣するなりするはずなのだが、美人ながらも童顔の女性であるスミカの右手に持たれている存在によって動きが止まっていた。


 スミカの右手には、手足が有らぬ方向に曲がっているかつての暗部総隊長であるマーシュの存在があったのだ。


 あまりのギャップに、流石のコテールも動く事が出来なかった。

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