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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
神と魔神
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ジーダフ伯爵の領地……

 今の所は情報収集と言う名の旅行に行っている者もいれば、各対象を護衛している<六剣>達もおり、特に大きな変化はなく過ごしている。


 旅先で、特にスミカがその場所の名物を食べたり、ヘイロンが酒を飲んだりしているのだが、もちろんテスラムの眷属であるスライムが調査終了後の町を狙って訪れ、情報収集している。


「スミカ。これだけ調査しても何にも出てこねーって事は、どう言う事だ?」


「そうですね……モグモグ……わかりません!」


 アントラ帝国に入国した際に感じた違和感。


 そこがどうしても引っかかって今尚継続調査をしているのだが、テスラムを含めて何の情報も得られていないのだ。


「お・ま・え・は!ちょっとは考えろよ!」


「え~、真剣に考えましたよ……モグモグ……でも、分からないんですよ~だ」


 何とも言えないスミカの態度だが、ヘイロンはこの態度を結構気に入っていたりする。


 深く悩む事がバカバカしいと思えるような態度であり、横柄に見えがちだが実は繊細なヘイロンにとっては、正に心の癒しになっていたのだ。


 ヘイロンに対しての気遣いとも言えるこの態度、意図しているのかいないのかは分からないが、スミカは食事をしながら話を進める。


「ヘイロンさん……ゴックン……」


 飲み込んだ傍から次の食事に手を伸ばすスミカ。


「お前な~。早く話せよな!」


 そう言いながらも、さりげなく食事を取り易いようにスミカの方に寄せてやるヘイロンだ。


「そうですね。ヘイロンさんもわかっていると思いますけど、ギルド方面が慌ただしくなっていますよね?」


「ああ。だが、周辺にはねっ返りの魔族がでたとか、高レベルの魔獣が出ている訳じゃねーぞ」


 既に魔族は、魔王アミストナの意思を継いで人族には基本的に攻撃を仕掛ける事は無い。


 しかし、人族にも色々いるのと同様、魔獣の進化形態であり意思の芽生えた魔獣と言って良い魔族にも色々いるのだ。


 結果、時折人族を襲うような魔族がいる事もある。


 当然冒険者ギルドが騒がしくなっているという事は、大きな冒険者の仕事が入ったと見て間違いない。


 その仕事とは基本的には何かの討伐であり、対象は魔獣、または人族に攻撃を仕掛けてくる魔族なのだが、既にヘイロンは周囲の探索も終了させており、近辺に対象となる魔獣や魔族がいない事も理解していた。


「じゃあ何ですかね?」


「それがわかりゃ~苦労はねーな」


 肩をすくめるヘイロンだが、自分自身もギルドの状況は気になってはいたのだ。


 ヘイロンとしては、スミカもギルドの状態程度は把握している事は分かっているが、美味しそうに食事をしているので、その話題に触れると食事を中断して現地調査をする事になりかねないので敢えて避けていた。


「フフフ。ありがとうございます、ヘイロンさん。もうすぐで終わりにしますから、その後にギルドに行ってみましょう」


 だがそのヘイロンの気遣いは、何も言わずにスミカにはバレていた様だ。

 伊達に長く行動を共にしていない。


「悪りーな。ひょっとしたら、そこからあの違和感に繋がる情報が得られるかもしれねーからな」


「わかりました!……モグモグ…モグモグ・モグモグモグモグ」


 突然食べる速度が上昇したスミカを見て、苦笑いをしながら水の準備をしてやるヘイロンだ。


……ギィ~……


 凄い勢いで食事を終えたスミカを伴い、ギルドにやってきたヘイロン。


 扉を開けると冒険者以外の者も多数存在していた。


「おいおい。随分と人数がいる事は分かっちゃいたが、まさか冒険者以外もいるとはな」


 この町の外の魔獣・魔族に対する探索に力を入れているヘイロンはギルドの内部については少々手を抜いていた事も有り、真剣に探索をすれば判別がつく冒険者とそれ以外についての情報までは得ていなかった。


「これだけ混んでいると……仕方がないですね。ここは権力に縋りましょう!」


 リスド王国のキルハ国王、そしてフロキル王国のキュロス国王から渡されている書状を持って、ギルドの中の人を整列させようと躍起になっている職員に近づく。


「すみません。実は私達、この二か国の依頼によって活動をしているのですが……事情をお聞かせ願えないでしょうか?」


 交渉と言えば、柔らかい笑顔と言う武器があるスミカの担当になりつつある。


 その笑顔と雰囲気を感じ取り少々疲れた顔をしていた職員も笑顔がこぼれていたのだが、その表情は、スミカが差し出した二通の手紙を見て驚きに変わる。


 スミカの言う通り、強大な二か国の国王の蝋印があったからだ。


「こ、こちらにお越しください」


 少々ビクビクしているのだが、決してヘイロンの姿に驚いている訳ではない……はずだ。


「流石はスミカじゃねーか」


「フフフ。でも、これはあの二人の国王としての力ですよ」


 緊張しきっている受付の後を余裕でついて行く二人。

 その後は想定通りに、ギルドマスターの部屋に入る。


 ここでも同じく蝋印を見せて、二か国の依頼で異常の調査をしている事を話すスミカ。


「わかりました。あなた方<六剣>所持者の言う事に疑いがない事は理解しております」


「ん?俺達が<六剣>だと分かっていたのか?」


 手紙にもそのような事は書かれておらず、自ら<六剣>所持者であるとは名乗っていないヘイロンとスミカ。


 思わずヘイロンがこう聞いてしまうのも仕方がないのだが、凱旋パレードでかなり有名になってしまっていた事を忘れているのだろう。そんな話をしつつ、本題に入っていく。


「実は、この町を統括している領主から増税の圧力がかかりまして……」


「今のこの時期にか?漸く悪魔のほんの一部だが、そんな奴との戦闘も終了してこれからって時に?だれだよ、そんな事を言い出すバカ領主はよ!」


「ご存じないかもしれませんが、ジーダフ伯爵です」


「「……!!」」


 想定していない名前が出てきてしまった為、互いを見ているヘイロンとスミカ。


 まさかこの辺鄙な場所にある町が、魔神の関係者である可能性が最も高い、いや、既に確信している人物の名前が出て来るとは思ってもいなかったのだ。


「そいつ、どこにいる?」


 思わず漏れだす殺気に、慌ててスミカはヘイロンを軽く諫め、怯えているギルドマスターに謝罪する。


「すまねー。スミカも助かった。俺もまだまだ……いや、おいスミカ!この事、テスラムさんに言うんじゃねーぞ!」


「フフフ、どうしよっかな~。私、あのお肉もう少し食べたいな~」


「クッ。わかったよ。後で奢ってやるよ」


 緊張感が有るのか無いのか、そんな話がギルドマスターの部屋で続いていた。

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