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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
神と魔神
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<土剣>アルフォナ

「良いか諸君!我ら騎士は主君をお守りし、全ての厄災を跳ねのけ、主君の歩む道をより歩きやすい道とするのが務め。その為には騎士としての誇りと力が必要だ。この想いこそが騎士道精神。騎士たる者は一も二もなく騎士道精神を持って活動しなくてはならない。理解できているか?」


 朝も早くから、鍛錬場にて<六剣>配下の騎士達を前に騎士道精神を説くアルフォナ。


 この王都は<無剣>ロイドや<六剣>達によって強固な防壁が作成されている事、アルフォナの守護対象であるユリナスは鍛錬場にほど近い場所におり、<土剣>のアルフォナでも難なくその存在を感知できている事、残りの騎士は王都内を巡回警備できている事から、リスド王国とは異なり全ての<六剣>配下を纏めて鍛錬している。


 毎日同じような話を聞かされている騎士達だが、誰一人として不満を漏らす人物は存在しなかった。


 寧ろ、騎士としての高みにいるアルフォナを追い着くべき、そして目指すべき頂きとして認識しているので、その対象からの言葉に感激すらしていたのだ。


「では本日の鍛錬を開始する。未だユリナス様は御就寝中だ。その中で音を出さずに攻撃し、そして防御する。これは、数多くの難敵を個人で撃破するために必要な能力だ。その存在を悟られずに、敵の戦力を削る。当然私も諸君の鍛錬中に時折横やりを入れさせていただく。目の前の目標だけが敵だと思うような間抜けはいないと思うがな」


 毎日鍛錬が行われているが、基本的には自らがテスラムによって行われたメニューを<六剣>配下に課しているのだ。難易度は相当に下げているが……


「では、始め!」


 アルフォナの号令で、森を想定した鍛錬場の中に騎士達が消えていく。


 最早騎士と言うよりも暗部と言った方が良いのかもしれないが、アルフォナにとってみれば主君であるユリナスの安全が絶対である為、手段は何でも良いのだ。


 アルフォナは一度、主君であるユリナスを救う事が出来なかった負い目がある。


 その当時にアルフォナがユリナスを襲っていた悪魔と対峙しても現実的には手も足も出なかったであろうが、その命を投げ出しても主君のためになりたかったのだ。


 その想いもある事から、彼女の気合は日に日に増すばかり。


「そろそろ頃合いか。私も徐々に手加減を無くして行かなくてはな」


 そう言って、腰に差しているユリナスから過去に渡された双剣を抜く。


 この双剣、長きに渡り大切に使っていた剣だが、ダンジョン攻略時に折れてしまっていた。


 その剣に<土剣>を変形させた状態で覆わせて見た目上復活させているのだが、普段は鍛錬中に抜剣する事は無い。


 しかし、<六剣>配下騎士達の練度が上昇している事から少しだけ手加減を止めようと思い、力を制御し易くするために<六剣>を双剣の状態で開放させたのだ。


 アルフォナ自身も<六剣>を開放させずに力を制御する事が自らの修行になるとは理解しているが、可愛い部下であり共に騎士道精神を持って修行している仲間でもある騎士達には、安全に対応したかったのだ。


 以外と甘いアルフォナだ。


 実は鍛錬を含む戦闘時、そして異常時にはスライムは自動的にテスラムに連絡を取るようになっており、この行為はテスラムも認識していた。


 しかしヘイロンやスミカとは異なり、自ら積極的に地獄の鍛錬を望んで突き進んでいたアルフォナに対しては、特にテスラムは指摘しなかった。


「ふ……む。皆中々ではないか。フフフ。騎士道精神の何たるかを理解している証拠だな」


 <六剣>を変形形態であってもその力を若干開放している以上、普段よりも遥かに周囲の状況を容易に把握できるようになっているアルフォナ。


 一見すると目の前には静かな森が続いているのだが、アルフォナにはその奥で激しい戦闘訓練が行われている様子が見て取れる。


 特に対戦相手、攻撃対象を指示していないので、誰もが仮想の敵である。


 森に一歩でも踏み込めば、たとえアルフォナでも仮想の敵として認識するように言い含めているのだ。


 その状態でアルフォナは悠々と森に入っていく。


……ヒュン……


 本当に僅かな風切り音と共に、鋭く尖った針がアルフォナ目掛けて飛んでくる。


 かなりの強さを得ている騎士や冒険者であっても、何をされたか理解できないままにその攻撃を受けて絶命している事は間違いない程のものだ。


 その針は、当然視認し辛いように周囲の明かりと同じような色に見えるように細工されており、<六剣>配下の訓練は普通の人には耐えられない域に達しているのが見て取れる。


「フム。悪くはないが……この音はいただけないぞ、ジル!」


 その針を難なく避けたアルフォナ。


 音もなく全てを細切れにする事は出来るのだが、使い慣れた武具を粉砕してしまうのは気の毒だと思い避けたのだ。


 もちろんその針、触れれば毒によってその行動が阻害される仕込み針なのだが、当然アルフォナは気が付いている。


 一方の指摘を受けたジル。


 <闇剣>の配下であり<隠密>を得意としているので、今日の様な鍛錬は最も力を発揮できる環境ではある。


 しかし、その存在、名前まで言い当てられてしまっているのだから、アルフォナとの力の差は歴然だ。


 その姿を認識されていると理解しているジルだが、<隠密>を全力で実行しながらも攻撃の手は緩めない。


 通常であれば音もなく忍び寄り、死角からの攻撃を行うのだが……相手がアルフォナの様な強者ではそうは行かない。


 そのための鍛錬でもあるので、次なる手を打つ。


 既に木の枝を利用して、同じような針を射出できる仕掛けを素早く作成済み。


 狙いの位置に来た瞬間、その仕掛けを利用して多方向から攻撃する準備に入った。


 当然その間も他の騎士達はアルフォナを攻撃しているのだが、悠々と歩いている状態のまま全ての攻撃を無効化しているアルフォナ。


「今……」


 数ある指定攻撃場所の内の一つに入ったと確信したジルは、罠の起動と同時に死角からも攻撃を行ったのだが、そこでアルフォナを突然見失った。


 アルフォナが持つ<土剣>の属性は<土>であり、この鍛錬場には溢れるほどの土が存在している。


 アルフォナはその力を使い、丁度ジルが立っている場所の地面を突然陥没させたのだ。


 アルフォナ程の力を持っている人物を攻撃する場合、攻撃に意識が集中してしまうのは仕方がない部分もあるが、アルフォナはそれを許さない。


 寧ろ、その行動が自らを危険に晒すと教えるための鍛錬でもあるのだ。


 ジルが落下した穴はかなり深く、落下直後に身動きが取れない程度に狭くなってしまっていた。

 つまり、ジルはこの時点で脱落だ。


 そんなジルの状態を把握している一部の<六剣>配下の騎士は、一気にアルフォナに襲い掛かる。直接的に攻撃する者もいれば、ジルのように隙を突いて攻撃する者もいる。


 いつの間にかアルフォナ対<六剣>配下の騎士達と言う構図になってしまっているのだが、誰一人としてアルフォナに攻撃を当てる事すらできなかった。


「今日は反省点が多かったのではないか?騎士道精神を持ってその反省点を活かし、明日の訓練に備えるように!」


 こうして朝の鍛錬は終わるのだ。

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