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伝説の剣を使い、腐った王国を立て直す!  作者: 焼納豆
神と魔神
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再びフロキル王国

 ここはフロキル王国のとある大部屋。


 アントラ帝国での異常を察知した<六剣>達は三人を投入してその異常の原因を調査しようとしたのだが、ヨナが到着して暫くすると、何となく感じ取っていた異常な気配を感じ取る事が出来なくなった。


 そのため、本来の目的であるサフィの状態も軽く確認したことから、今後の対策を検討するために再びフロキル王国に戻ってきたのだ。


「お疲れ、ヨナ。ヘイロンとスミカも残念だったな。こんな事が無ければもう少し気楽な旅を続けられただろうに」


「本当だぜ。約束だと二年後に再集合だから、まだ一年半以上あったんだぞ!」


「でも……短い時間でも勉強になりましたよ。集落の人達とも仲良くなりましたし」


 ヘイロンとスミカはロイドからの言葉に即反応してそれぞれの思いを口にしているのだが、ヨナは優しく微笑むだけだった。


 ヨナとしては、<闇>の力を持つ自分がアントラ帝国の異常を完全に察知できず、原因の特定も出来なかった事に対してかなりの不満があったのだ。


「皆さんおそろいですね」


 そんな中、<六剣>の師匠である<風剣>のテスラムが口を開いた。


「三人が共に異常を感じたアントラ帝国。そして異常を感じなくなったタイミングもほぼ同じ。もちろん私の眷属も一切いなくなっていた。こうなると……あの件が動き出したと考えた方が良いでしょうな」


 あの件とは、<無剣>所持者に伝承されていた魔神の件だ。

 既にこの場の<六剣>達も内容は把握している。


「って言う事はよ、あの場所に魔神の手先がいたか、いなくとも何かをしていた痕跡が残っていたかもしれねーってことか?」


「ヘイロン殿の言う通りですな。既にスライムをアントラ帝国に投入して情報収集しておりますが、どうやら貴族が一名行方不明になっているそうです。そのタイミングは……お分りになるでしょう?」


「私達が活動しようとした日ですか?」


 スミカの問いかけに、黙って頷くテスラム。


「クロ決定ではないか!最早疑う余地もない。今後どうする?私が騎士道精神を持って徹底的に再調査するか?」


「落ち着いてください、アルフォナさん。ヘイロンさんやお姉ちゃん(ヨナ)でも原因がつかめずに、今はテスラムさんのスライムが調査しているのですよ?これ以上は新たな情報は出てこないでしょう」


 ナユラの冷静な突っ込みがアルフォナに突き刺さる。


「う……それはそうだった。私としたことが焦ってしまうとは。まだまだ騎士道精神の向上に努めなければならないようだ」


 しかしナユラの言う通り、調査能力に優れたテスラムの力を使っても何も情報を得る事は出来なかった。


 もちろん現地に<探索>や<隠密>を駆使できる<六剣>が向かっていたのにもかかわらず何の情報も得られなかったのだから、この結果は当然だ。


「ロイド。ここで焦っても仕方がないわよ。せっかく落ち着いてヘイロン君やスミカちゃんも楽しい旅をしていたのだから……また皆で旅行ついでに調査でもしたらどうかしら?」


 この場が瞬時に柔らかな雰囲気に包まれたのは、ロイドの母であり先代<無剣>所持者のユリナスの言葉による。


 流石にユリナスの言う事を否定できる人物は、<六剣>や<無剣>所持者の中にもいなかった。


「ユリナス様。魔神が動いている可能性が極めて高い事は、既に魔王アミストナにも伝えております。こうなると確かにユリナス様の仰る通り、焦っても仕方がないのでしょう。普段の鍛錬を厳しくする以外には今の段階で出来る事は無いでしょう」


 最終的には<六剣>の師匠と言う立ち位置にいるテスラムの一言で、ユリナスの案は採用される事になった。


「あの……私は兄が心配なので、一旦リスド王国に戻ります」


 魔神が動き出した以上、<六剣>縁者が攻撃される可能性は高く、そのために一旦国に戻ると言うナユラ。


 後々、この判断が良い結果をもたらした事が分かるのだが……


「それが宜しいでしょう。リスド王国には<六剣>配下の騎士達が多数おりますので、協力して対処をお願いします」


 テスラムの肯定の言葉を聞いて、アルフォナがこの場で希望を告げる。


「では、私はユリナス様の護衛を務めさせていただきたい。ロイド様、宜しいでしょうか?」


「こっちからお願いしたいくらいだ。母さんを頼んだよ」


「騎士道精神に誓って、必ずユリナス様の安全をお守りします!」


「あらアルフォナ。貴方も好きにして良いのに……」


「ユリナス様!私はあなた様の傍にいる事が希望なのです!」


 こんなやり取りがあって、先代<無剣>所持者のユリナスの護衛には<土剣>アルフォナが任命された。


「それでは私がキュロス陛下の護衛を致しましょう。それと、リアナ様もお守りします」


 悪魔であり<風剣>所持者であるテスラムが、執事服のままこう告げる。

 誰の目から見ても適任であり、異を唱える者はいない。


「じゃあ俺達が旅行……いや、調査組だな」


「ロイド!本音を漏らすんじゃねーよ」


 ロイドとヘイロンの言葉の通り、この二人とヨナ、スミカが各国に出向いての調査を行う事になった。


「では決定しましたな。各<六剣>配下の者達は、私の方で適切に振り分けて護衛任務に当たらせます。各配下にもスライムをつけておりますので、何かありましたら情報共有をお願いします」


 テスラムとしては、悪魔との戦闘時にリスド王国とフロキル王国の騎士達に対して<六剣>配下と言う立場を与えているので、その内のリスド王国の<六剣>配下については国王の護衛の他にも周辺の警戒・情報収集の任に就かせる予定だ。


「じゃあテスラムさんの言葉に甘えて、もう一度出かけるか?スミカ」


「そうですね。早速あの集落に色々と持って行かなくっちゃ」


 当然のようにヘイロンとスミカは同行する様だ。

 ロイドに従っている<闇剣>のヨナも、ロイドと同行するつもりだった。


 ワイワイと話をしていたが、最後にテスラムの言葉でこの会合は終了する事になる。


「私の方で世界の全てを一気に知る事は難しいですが、順次眷属(スライム)を使って情報収集を行います。ですが、調査後に対象が戻ってきた場合は情報網にはかかりません。敵はスライムによる情報収集についても知っているようですから、逆手を取って情報収集が終了した地域を重点的に、余り目立たずに行動して頂くのが宜しいかと」


 こうして<六剣>三人と<無剣>所持者のロイドは、再びフロキル王国を後にして魔神に対抗するべく情報収集と言う名の旅を行う事になったのだ。


 彼らが危惧している縁者については、今の所キルハ国王、キュロス国王、そしてロイドの母であるユリナス、姉であるリアナが該当する。


 キルハは<光剣>配下、キュロスは<炎剣>配下、リアナは<土剣>配下となっているので、一応は安全と言えなくもない。


 三人共に得られたその力を試そうとして、王城やら辺境伯の設備やらを破壊しつくした経緯がある程の力を持っているからだ。


 リアナについてはテスラムが主にフォローする事となっており、ユリナスにはアルフォナが警護に就くため、全ての対象者には<六剣>の護衛がついている事になっている。


 憂いが無くなった<六剣>達は、その任務を開始した。

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