配下の者達
俺自身には何の力もないけれど、スキル<統べる者>で最強に。裏切った連中が落ちぶれているが知ったことか!
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も一読いただけると嬉しいです。
<六剣>配下の者達は、テスラムさん指導の元修行を開始している。
手にはフロキル王国の宝物庫に有った武具、目には溢れんばかりの気合。
当初はリスド王国の城やキュロス辺境伯の鍛錬場の補修を修行の一環としていたのだが、比較的簡単に修復が終わったので次なるステップに移行している。
つまり、Sランクダンジョンだ。
あのダンジョンはテスラムさんが長きにわたり身を潜めていた場所で、テスラムさんの家と言っても過言ではない。
そこに喜々として侵入して行く<六剣>配下の者達。
当然キルハ国王とリアナ姉さんもいるし、<六剣>所持者達もいる。
「フフ、今日も素晴らしい鍛錬日和だ。近衛騎士の皆、よろしく頼む!!」
とても嬉しそうにそう話しながら、まるでスキップするようにダンジョンに入って行くのは当然アルフォナ。
もう一度言っておくが、ここはSランクダンジョン。普通の冒険者では一階層すら入ることが許されない場所だ。
いや、許可制ではないが、侵入したと同時に命が無くなる場所だ。
「そうですね。この修行を成し遂げればキュロス様やリスド王国の安全は保障されたも同然ですからね。私も頑張りますので、皆さんも頑張ってくださいね」
その後ろを慈愛の笑みを浮かべながら、散歩をするように入って行くのはナユラ。
「ぐへぇ~。休みって言葉、知ってっか?」
「知ってます。けど、そんな事テスラムさんに言えますか?」
ぶつぶつ言いながらも普通にダンジョンに入って行くのは、スミカとヘイロン。
テスラムさんは先頭なので、既にダンジョンの奥に到着しているだろう。
そして最後は俺とヨナ。
「ヨナ、この戦いが終わったら、母さんの故郷に案内してくれよ」
「もちろんです、ロイド様」
軽く話しながらSランクダンジョンに入る。
俺達が最後なので、当然のように内部の魔獣は存在していないし、罠も破壊しつくされている。
時折前の方から激しい音が聞こえるが、魔獣との戦闘か、罠の破壊か、はたまたテスラムさんが修行の為に近衛騎士達に攻撃しているのかはわからない。
だが、この音であれば魔獣の討伐だろう。
わざわざ気配を察知する必要もない。
テスラムさんの攻撃であれば、ここまで揺れか暴風が来るからだ。
本当に近衛騎士達の気合には驚かされる。
普通あんな攻撃を毎日毎日不意打ちでやられたら心が折れそうなもんだが・・・
アルフォナ曰く、自分を高めてくれる存在が必死で修行をつけてくれていると思うと気合が溢れてしょうがないらしい。
あんなに暑苦しい・・・失礼、気合の入った面々・・・流石は近衛騎士と言った所だな。
かなりの重症を負ってしまった場合、<水剣>配下の修行の場となる。
そう、<回復>だ。
誰も怪我をしないと<水剣>配下の者達は攻撃や防御のみの修行となり、本来の特化能力である<回復>ができなくなるのだ。
そう言った理由もあって、テスラムさんは少々強めの攻撃をしている・・・と信じたい。
そんな日々を過ごしていると、やがて修行のレベルを上げる時がやってきたようだ。
「皆様、良くこれまで修行を完遂することができました。これでSランクダンジョンでの修行は終わります」
「「「「うお~」」」」
あちこちから聞こえる歓声。
何故かヘイロンとスミカの一際大きな声が聞こえるのは気のせいだ。
テスラムさんが大きく右手を上げる。
瞬間に静まり返る近衛騎士達。
完全に手綱を握っているテスラムさん。
「ですが、修行の道に終わりはありません」
「「ぐへぇ~」」
このセリフを吐いた二人が誰なのかは説明するまでもないだろう。
アルフォナはテスラムさんの発言に深く頷く。
だが、続くテスラムさんの発言を聞いて、あの二人も引き締まった顔になる。
「我らはこれから魔王との全面戦争に入ります。我ら<六剣>とロイド様は魔王城に侵攻することになるでしょう。その間の守りは、ここにいる皆様に委ねられるのです」
近衛騎士達の目つきも今までにないほど鋭い物に変わってきた。
「魔獣や魔族、そして悪魔ですら攻撃に来る可能性があります。その時に民を守れるのは皆さんだけなのです。直接攻撃をされるだけではなく、当然搦め手も使って来るでしょう。その全てから民を守れるだけの力を付けなくてはなりません」
キルハ国王とキュロス辺境伯も真剣な面持ちだ。
「全ての民に安心と安全を与えられるよう、死力を尽くして対峙すべき時なのです。私が教えられる修行は次の段階で一旦終了とします。全力を以て乗り越えて頂きたい」
「「「「うぉ~~」」」」
割れんばかりの歓声。
大した人数がいるわけではないが、凄まじ声量だ。
その声からは気合・決意が見て取れる。
流石のヘイロンとスミカも、ここで変な声を出したりはしなかった。
その後は少し休憩を挟み、基礎属性の異なる面々での実戦形式訓練が行われた。
これに慣れれば、一人対複数での鍛錬に移行するらしい。
ある騎士は<闇剣>ヨナの配下に入っている。対する騎士は、<光剣>ナユラの配下だ。
相対する基礎属性の戦いになっているが、それ以外の属性とも戦闘を重ねることにより、あらゆる対処を覚えこませるそうだ。
当然それぞれが得意としている武器も異なっているので、<水剣>の<回復>を多用して休憩なしでのぶっ通しの鍛練になっている。
教える側として<六剣>所持者達も修行に加わる。
当然力を加減するのだが、加減しすぎないような微妙な調整を常に行う修行になる。
ヘイロン曰く、何も考えずに強敵と戦う方が何十倍も楽らしい。
頑張ってくれ!!
戦闘の経験が全くなかったスミカや<六剣>を最後に手にしたナユラも、いつの間にか流れるような体術を身につけており、その力を如何なく発揮している。
不夜城の如く続く鍛錬。
唯一の休憩は食事時のみと言う過酷な物だったが、三日もすると配下の者達の動きは明らかに変わってきた。
そこにヘイロンが休憩をしに、俺のところにやってくる。
<六剣>所持者達は、アルフォナ以外時々勝手に休憩を取っている。
「ロイド、あいつら壁を乗り越えたぜ。あいつらと対戦するときに俺達が込める力も大きくなってきた。流石はテスラムさんだな」
「<六剣>所持者達もあの人に鍛えられたんだからな。間違いはないだろう。だが、肝心の悪魔の戦力がわからない。この修行で対抗できるか・・・不安にはなるな」
ヘイロンも同じことを思っていたようで、軽く頷くと黙ってしまう。
だが、今考えても仕方がないことだ。
当然その辺りの情報は、テスラムさんが収集してくれているだろうからな。
修行を受けている近衛騎士達は、永遠とも思える時を過ごしているかもしれない。
だが、誰一人として弱音を吐いたりしない。
アルフォナ曰く、素晴らしい騎士道精神を持った真の騎士なのだそうだ。
そんな日々も終わりを迎える。
「皆様、良く修行を完遂できましたな。基礎的なことはこれで全て教えることができました。これからは各自が考えて日々の鍛練を怠ることなく精進してください」
「「「「師匠!!ありがとうございました!!!!」」」」
この長い修行でいつの間にか師匠に昇格したテスラムさんが、笑顔で歓声に応えている。
俺の目から見ても、ここにいる面々は基礎属性以外の能力すら発揮できる精鋭だ。
<炎>がなくともある程度敵の位置等を察知できるし、切り傷程度であれば<水>がなくとも各自が直すことができる。
お互いを補い合って強くなったのだ。
これで守りは任せられる。
これからは俺達がどう攻めるかの話になる。