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SBD ドーントレス

1942年6月、私は確かにあの海で見た。

ミッドウェーの海原で、身を捩って沈んでいくアカギ、カガ、ソウリュウ…ニッポンが誇った3隻の空母を。

それは真珠湾パールハーバーを卑怯にも奇襲した怨敵であった。

だが、今も私はあのときの光景と共に、彼への憧憬と尊敬の気持ちを忘れることができない。


第17任務部隊第5群・空母ヨークタウンに私はいた。

私は第3爆撃機隊に所属する観測員兼後方機銃手であった。

6月4日、ミッドウェー海戦の火蓋が切って落とされた…当初はニッポンがやや有利に展開したが、(後で聞いた話によると)ニッポンの指令たちの判断ミスなどもあり、やがて我々が彼らへ逆落としをかけることとなる。

我々の艦には勇名の誉れ高いジョン・サッチ少佐も乗っており、士気も高かった。

それが作戦だったのか偶然だったのか…低空よりニッポンの空母に迫った雷撃部隊は、あの零戦ゼロファイターに次々と墜とされてしまったが、その間に我々の艦爆機は悠々と彼らの頭上に位置を取っていたのである。

同じ頃に上空に辿り着いていたBigEエンタープライズ所属の爆撃機と功を競うように、我々は列を成して一気に急降下爆撃の進入ルートへ雪崩れ込んだ。


私の乗っていた機は隊長機だったため、まるで皆が私の後ろを着いて来ているようで非常に快かった。

隊長は腕の良い男だったため、爆弾の投下には些かの心配も無い。

彼はニッポンの空母の日の丸を目印に爆弾を投下した。

私の仕事はそのまま爆弾が憎き敵艦に突き刺さり、火柱が上がるのを確認し、報告する、それだけ…のはずだった。


その時、私の視界の隅に1機の零戦ゼロファイターが閃いた。

その零戦ゼロファイターは我々の隊列の下を潜るようにして、私の機の進路を目がけて一気に接近してくる…私は思わず後方機銃に手をかけた。

しかし、彼には我々の機は見えていないようであった…彼は後に言う神風特攻カミカゼのように一直線に、しかし味方の空母目がけて、それを敢行しているようにすら見えた。

そして私は気付いた。


彼は自らを盾に艦を護ろうとしているのだ!


私は風防に張り付き、その行く末を見守った。

慣性と重力加速度によって落下速度を増していく黒い点…我々が放った爆弾と、それを死に物狂いで追う1機の零戦ゼロファイター…もはや零戦ゼロファイターは立て直しのできる高度も速度も過ぎている…どうしようとも彼と彼の愛機は海面か友軍の空母の甲板に突き刺さるしか道は無いのだ。

あるいは、空中を落下していく爆弾への体当たりを成功させるか…そんな神懸り的なアクロバットなど百万回やって1回でも成功するとは思えない…しかし、その時、私は彼が彼の本懐を果たせるよう神に祈ってさえいたのだった。


次の瞬間、ニッポンの空母の上空でパッと閃光が輝き、凄まじい大きさの赤黒い炎の塊りが空中で四散し尾を引いて飛び散っていた。

私は思わず座席を叩きながら大声で叫んだ。

「やった!当てた!信じられない!彼は成功した!」

それと同時に、我々の後続機が放った爆弾がニッポンの空母に立て続けに炸裂したのだった。



私の愛機であったSBD”不曉不屈ドーントレス”。

あの日のミッドウェーの空、ニッポンにも1機の、1人のドーントレスがいたことを私は死ぬまで忘れることはないだろう。







例によって用語・用法・公証に誤用や勘違いがあるかと思いますが、ご容赦ください。


ドーントレス云々と言うよりも、単なる日本海軍賛美になってしまいました。

タイトルで期待された方、申し訳ないです。

やはりどうも日独贔屓になっちゃいますね…連合国軍は勝ったんだから良いじゃないですかw


ちなみに”Dauntlessドーントレス”は形容詞なので、作中のような言い回しはできません。

正しくは”Dauntlessness"や”Dauntless man"のような言い回しになるかと思います。

不屈の、勇敢な、忍耐強い…日本語に置き換えるなら、まさしく”根性のある”ですね。

また、実際は零戦の急降下速度は機体強度の都合で制限が厳しく、

ましてや急降下投下された爆弾に追いつくなんて零戦ならずとも不可能でしょう。

ですが、劣勢に立たされ、敵機や爆弾や魚雷に体当たりをしてでも艦を護りたいと願い、

亡くなっていった操縦士の方々は多かったと思っています。

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