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すべてを赤く

 荷物のように乱雑に馬車に詰め込まれていく。

 すべて年若い少女ばかり、その少女たちと触れ合うことなしに身じろぎすらできない。それほどにぎゅう詰めにされている。

 柳は膝を抱えて座り込んでいた。

 まるでネズミでも捕まえるようにこの男たちは柳を含めた少女たちを捕まえていく。そして、馬車にさっさと積み込んだ。

 かどわかしでもここまで大胆不敵な行動に出たという話は今まで聞いたこともなかった。

 最近聞いた悪い話は、反乱軍が都の傍まで来て、近隣の村が焼き払われたということだった。

 おそらくそれに絡んだことだろう。

 そこまで考えることはできたが、それ以上は何もできなかった。

 多少鍛えていたつもりでも、予想外の事態に混乱して何もできなかった。

 戦うという気構えができる前に襲われたから。

 柳は悔し涙を流しながら閉じられていく扉を睨んだ。

 馬車は着々と進んでいく。

 どんどん都から離れていく。途中で何度かと待ったが、扉は開けられることもなく。

 糞尿垂れ流し、異臭立ち込める中柳は座り込んだまま無気力になっていた。

 もう家族に会えない。そのあきらめだけが心に残った。


「姉さん、なんか変だよ」

 弟がそう訴えてきている。月姫も周囲を取り巻く不穏な気配に気が付いていた。

「どうしよう、変な男が来て、お姉ちゃんを連れて行ったの」

 そう言って顔見知りの子供が泣いていた。明らかにありえない数のかどわかしや窃盗が起きていた。

「大変だ、反乱軍が都に入ってきた」

 そう叫ぶ声が聞こえてきた。

「反乱軍が都に?」

 都にまで反乱軍がやってきたとなるとそれは皇宮を攻め落とすということだろうか。

 国が亡ぶ足音が聞こえてきた。

 月姫は弟を抱きしめた小刻みに震えた。

 その日の夜、反乱軍は奇妙な行動をとった、規則正しく行進し一つの区画を取り囲んだ。

 その異様な光景に周囲の人間は息をのんだ。そして火が建物に投げ込まれた。

 松明を一斉に建物に向かって放つと一気に炎は建物をなめる。

 火は瞬く間に広がって、閉じ込められた区画から次々と人が飛び出してきた。

 しかしその人々は次々とあるものは矢で射られ刃で斬られ、槍で突かれた。

 燃え上がる炎の音と断末魔の悲鳴。血と炎ですべてが赤く染め抜かれた。

 なす術もなく焼け死ぬか、武器による死を与えられるかの二者択一。

 まるでからくり仕掛けのように淡々と殺戮は続く。

 辛うじて逃げ延びたものも、その時点で瀕死の重傷を負っていた。

 震えながら見ていた月姫の元にも、辛うじて生き延びた子供が這い寄ってきたが、すでに助からないほどの火傷を負い、その容貌から誰かを判断することは不可能となっていた。

 子供のかすかなうめき声、それが聞こえなくなるまで月姫は弟と抱き合って震えていた。

 攻め込むなら王宮と思っていたが、この反乱軍は都すべてを殺しつくすつもりなのだと悟った。


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