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相談事

 妃付きの仕事は基本的に暇ではない。その暇をやりくりして鈿花は元に会いに行った。

 奇麗な妓女が会いに来て、同僚たちの冷やかす視線を感じたのか。少々居心地悪そうだ。

「これなんだけどね」

 鈿花は懐にしまっておいたもの、野菜に交じっていた鈴蘭の葉っぱを見せる。

「よく混じっているのよ」

 葱科の野菜とよく似ているが、匂いを嗅いでみて元は顔をしかめた。

「鈴蘭だな」

「水仙の葉っぱもよく混じっていたわ」

 貴妃の食糧庫によく紛れているという話を聞いて元は顔を歪めた。

「いつからだ?」

「入内直後から始まったと言っていたわ」

「本当なの」

 なぜか声が後ろから聞こえた。

「うん、焚きつけに使ったのが夾竹桃の枝で、危うい目にあったとも言っていたわね」

 夾竹桃の枝は燃やすと毒気を吐き出す。

 後ろから聞こえてきた声にこたえてから思わず鈿花は背後を振り向いた。

 いつのまにかやってきていた陽輝だった。その目が座っている。

 思わず冷や汗が流れた。

 相談するつもりだったので、話してもいいとは思っていたが、陽輝に伝えてしまうのは年長者としてどうだろうかと思い聞いてしまった後にもかかわらず何とかごまかせないだろうかと悩む。

「それ、姉さんの話だよね」

 そうです、貴女の姉の崔月姫の話ですと肯定してしまうのは何となくはばかられる。

「姉さん、殺されそうになっているの」

 表情はない。それが何とも恐ろしい。

 姉を心から信奉しているのを知っているからなおさらだ。

「続きをどうぞ、柳」

 鈿花はため息をついて、現在貴妃の置かれている状況を話した。

「何とか姉さんと話す時間をとれない、直接聞きたいんだけど」

「いや、それはちょっと」

 たとえ弟といえど無断で貴妃の部屋に入れたら何らかの懲罰があると思われる。

「あたしができるだけ連絡を密にするから」

 とにかく落ち着いてほしい。

「あの、大丈夫なの」

 鈿花は小声で元に尋ねてみた。

「あいつは、心に蛇を飼っているから」

 何かがあったらしい。鈿花はむしろかつて縦横無尽に暴れまくる月姫の後ろで何とか掣肘しようとしている陽輝の姿しか思い出せないが。

「二人まとめて暴れだしたら、恐ろしいなんてもんじゃないぞ」

 遠い目をした元を見て、何があったと問い詰めたくなったが途中で聞くのも怖くなった。

 しょせん陽輝は月姫の弟なのだから。

「ああ、確かにあの時はな」

 鈿花が思い出せるのはごつごつした馬車の床。造りが極めて雑だったこと。

 そこに荷物のように転がされ馬車はどんどん進んでいった。



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