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大団円の向こう側

 苦労に苦労を重ねた娘が、尊いお方に見初められる。物語ならばここで大団円というところだが。

 しかし実生活を送っていれば、大団円の後にもまだまだ人生が続く。

 それも、物語のように甘くない人生が。

 貴妃翡翠こと、幼馴染の月姫は間違いなくあの時殺されかけていた。

 一人だけを殺そうとしたのか、それとも将棋倒しに、ほかの正一品の妃とまとめて殺されようとしていたのか、どちらもありそうだが、鈿花にそれを知る決め手はない。

 ずいぶん変わった。

 それが鈿花の感じた印象だった。

 それ以外の気持ちは一切わかなかった。

 膝をつき、か細い声で懇願する姿は、むしろ哀れを誘った。

 美しかったかつての友はより美しく成長していたが、何かが欠けたのか、それとも得たのか、鈿花にはわからない。ただ変わったとだけ思う。

 鈿花の前には小さなきんちゃく袋があった。

 きんちゃく袋の中身は銀。鈿花が廟の前の階段を上ってしまったため、少しだけ減らされた報奨金だった。

「とりあえず、あいつらは知っていたんだろうか」

 元達の顔を思い浮かべる。

 正直に話してもらっても、さすがに信じられなかったろうから、わざと黙っていたとしても怒るつもりはない。

「しかし、本当に、何があったんだろうなあ」

 もし、国が傾いて、内乱が起こらなかったら、自分の運命はここまで狂わなかったろうかと思ったことは幾度もある。

 しかし、友人の人生の狂い方は自分の比ではなかった。

 鈿花は後宮の方向を見た。

 王の寵姫であるらしい。王に愛されているらしい。だけれど、貴妃は王を愛しているのだろうか。

 はっきり言って、愛していない男の愛など、塵より価値がない。

 そんなものを押し付けられたとしたら、そのうえ、そのせいで殺されかけたとしたらあまりにも気の毒だ。

 後宮に鈿花は入ることができない。

 しかし、月姫は何を考えて、鈿花を王宮にとどめようとしたのだろう。

 いずれ、接触があるかもしれない。

 鈿花はきんちゃく袋をもてあそぶ。

 しばらく金を使う当てはない。これは取っておくことにした。


 貴妃は寝台の中で痛みをこらえていた。

 何か起これば痛み出す古傷。かつて聞いた身体が壊れる嫌な音。

 それでもその時は痛みを感じなかった。衝撃が強すぎて、痛みを感じるいとまもなかったのかもしれない。

 地獄は翌日以降に訪れた。

 痛み以外何一つ感じることのできない。かすかに弟の泣く声が聞こえた。

 熱に浮かされ、苦しんで、ようやくまともに頭が動くようになった後、すべてが終わっていた。

 すべては自分の手を離れていた。あの日の無力感を思い出すと、痛みがぶり返す。

 痛みをこらえながら、自分の腹を撫でる。

 助けが必要だ。

 そのためなら何でもしよう。思い浮かんだ顔に貴妃は涙を流した。


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