ヒモ野郎
見事に殺した狼の牙を1本もぎ取った少年。さらに毛皮まで剥いでいた。
少年は剣ではなく今回はナイフで狼の皮を剥いでいるのだ。このナイフも柄頭の部分に水色に輝く水晶が埋め込まれていた。そのナイフで狼の毛皮を剥ぎ取ると、
「よし...これでウェアウルフの牙が5本揃ったぞっと、毛皮も剥ぎ取ったことだし素材として売れるな...ひひひ」
不気味な笑いを零しながら狼の死骸から毛皮を剥ぎ取り
「師匠ーー残りの部分は...吸収しちゃってくださいな!」
少年が水色の生物に声を掛けると
ヌチャァァ...ヌチャ...ヌチャヌチャヌチャァァァ
いやぁぁぁ!!なんかやっぱり師匠が丸呑みしてる姿は...嫌ぁぁ...音が...音がぁぁぁ!!!変な音してるもーーーん!!師匠には歯があるの?!ねぇ?!バキゴキ言わせながらぷるぷるしてますやん!!
俺もぷるぷる震えますわ...恐怖でね...
牙と毛皮を剥ぎ取られた狼に水色の生物が覆いかぶさっていき狼を丸呑みして行った。
丸呑みにしたのに大きさが全く変わらない水色生物...ただぷるぷる震えているだけだった。
「さてっと、街に戻りますか〜師匠...今日もあざっした!」
師匠と呼ばれた水色生物は[私に任せればなんてことは無い!]と言うようにゼリー状の体を震わしたのだ。
ぷるるんっ...ぷるぷる...ってな感じで。
平原から歩きながら30分ぐらいだろうか、少年達の目には街の入口である門が見えてきたのだ。
この街は綺麗な石垣で囲われている。高さもかなり高く、石垣の上には魔物が襲ってきてもそこから魔法で対処できるように櫓もあるのだ。
門の上には魔物が攻めてきた時に分かるように鐘も設置されている。
門に近づくと門番である衛兵から声を掛けられた。
「お疲れさん、無事に依頼は終わらしてきたのか?」
「もちろんさ、俺を誰だと思ってんだ?うん?」
「...力もないのに冒険者になって街で迷子になって魔物であるスライムを従えて、そのスライムに頼りきってるヒモな冒険者だろ?」
「ヒモ...そんなこと...言うなよな...俺だって頑張ってんだよ...」
半泣きになりながらも自分の頑張りをアピールするのだが、衛兵Aは笑いながら少年の背中を叩きながら励ましていた。
「まぁこれからだって!まだまだお前さんは若いんだから諦めずに頑張りな!ほれほれ、さっさとギルドに行ってきな。」
少年は励まされながらトボトボ歩いて行った。
「絶対に強くなってやんよ、いつかアイルの兄貴をギャフンと...ギャフンと言わせてやる...」
衛兵A=アイルに聞こえない様に小声で宣言する少年であった。