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アドバンスーAdvanceー  作者: Star Seed
第三章「Fox Stories」
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革新ーーNoaーー

 お久し振りです。更新が遅れてしまい、本当に申し訳御座いません。


 信じがたいことだが。その銃はモデルガンやら模造品やらではなく、本物の銃のようだった。高速で射出された弾丸は、ノアの腕に命中して胎動する。


 それに呻きつつ、ノアは再び空間に消えた。超高速移動だ。恐らく、目標は佳苗さんである。


 逃げてくれ、というよりも早く、佳苗さんの30センチほど右方に、一度消えたノアの姿が現れた。原理は不明だが、彼女は攻撃する時、移動を止めて静止しなければいけないのだった。


 次の瞬間、ノアは手に持った槍で佳苗さんへと攻撃を繰り出した。水平に振り抜かれた槍は、真っ直ぐに彼女の脇腹を裂くーー。


 しかし、佳苗さんはそれに怯まず、こちらへと駆けてきた。とんでもない精神力だ、と一瞬感嘆したが、違和感に気付いた俺のその思考はかき消えてしまう。


 違和感の正体は「出血」だった。あの攻撃を受けた佳苗さんの脇腹から、血が流れ出ていない。


 ーー否。それどころではない。血が出ていないどころか、既に傷口が塞がっている。傷なんて最初からなかったかのように、綺麗に治っているのだ。


 そこまで認識したところで、俺は佳苗さんに背中の槍を抜かれた。刹那に大量出血し、意識が遠退くが、その感覚も直ぐになくなる。


 ーー気付けば、俺の全身の傷は、佳苗さんと同じように塞がっていた。


「こ、これは.....?」


「私のAdvanceです。さあ、逃げてください!」


 逃げてください。佳苗さんはそう言った。


 でも、それを受け入れることはできない。


「できません、俺も戦わなきゃいけない」


 言いつつ、地面に散らばっていた羽を巻き上げる。それは1つの竜巻のように渦を巻き、一枚一枚が銃弾かのような速さでノアの六枚羽へ向かっていく。


 それらは槍で(さば)かれているが、それにも限界というものがある。22撃目が槍に衝突した時、遂に、その槍は破壊されてしまう。


 隙ができた。俺は歓喜しつつ、23撃目を叩き込みーーそして、絶句した。


 なんということか、ノアの翼に衝突した羽は、粉々に砕け散ってしまったのだった。それは「黒銀の翼(クロムメタルウィング)」のような作用で、俺は刹那に、彼女の力は却逆の翼と同じものなのではないか、と推察した。


 あの力が黒銀の翼と同じならば。「崩壊」させられる量にも限界がある筈だ。そこが恐らく弱味になる。


「佳苗さん、そこに転がってる悠真の治療をお願いします。俺がノアーー彼女を惹き付けますんで」


 言いつつ、俺は24撃目を射出した。それも崩壊させられてしまうが、それでもいい。重要なのは、羽を全部射出し終えた後で、彼女の翼が崩壊しているかどうか、だ。


 25、26、27。羽は止まらない。


(行けーーッ!)


 そんな翼の絶叫に応えるように、俺は射出ペースを上げた。攻撃は次第に翼へと傷を付けていきーー最終的に、攻撃数が50を越えたところで、ノアの翼が2枚、砕けた。


 それで、彼女は限界を迎えたようだった。その虚脱しきったような表情が苦悶に歪むと同時、ノアは前のめりに地面へと倒れ込む。


「や、やった......?」


 問いかけるように呟くも、俺は実際のところ、勝利を確信していた。あれで倒れないようなら、もう打つ手はない。


 見ていると、ノアの翼はみるみるうちに全て崩壊してしまった。どうやら、これで完全に終わったようだ。


「おい、あいつはどうした、柊人」


 ふと。声をかけられたので、俺は振り返った。


「悠真......」


 背後には、さっきまで全身に深い傷を負っていた悠真が立っている。


 しかし、その体には1つとて傷が見えない。なんということか、完全に治癒しているのだった。


「あいつはどうしたか、って訊いてんだ」


「逃げた。胸に攻撃を受けてーー相当な痛手を負った筈だが......」


 そこまで言ったところで、俺はあいつが瞬間移動をしていたのを思い出した。


 あれも能力の一環なのだろうか。見たところ、奴が使っていたのは「空間」をどうにかするAdvaceのようだった。


 空間と空間を繋げ、「瞬間移動」を再現したのだろうか。


「くそ。全然攻撃が見えなかった......何だ、あいつは」


 そう言って、悠真は苦い表情をした。


 あいつは強敵だった。もう一度、ノアの「助け」なしで会敵した時、俺は間違いなく敗走してしまうだろう。それほどに、俺と、あいつには力の差があった。


「まあ、何はともあれ、生き残ったから良かったんじゃないですか?」


 それを言ったのは佳苗さんだった。


「確かにそうですけど......」


 生き残った。その事実は何物にも代えがたいが、しかし、この戦いで、俺は何も得られなかった。ノアが暴走した原因も。あの狐面をつけた男の正体も。


 そのために、手放しで喜ぶことはできなかった。


 ーーとそんな中。ふと、俺のポケットから携帯の着信音が鳴り響いた。


(あの激戦の中でも壊れなかったんだな......)


 そう苦笑する翼を尻目に、俺は携帯を取り出す。画面には、メールの受信を示す表示が現れていた。


 俺にメールを寄越したのは京子だった。京子がメールをくれるなんて珍しいーーなんて思考しつつメールを開いた俺は、文面に目を通し、そして、固まった。


「う、嘘だ......」


 目が驚愕のために見開かれる。体が小刻みに震えを起こし、恐怖がふつふつと沸き上がってくる。


 「そこ」に書いてあった内容はーー。


(まこと)が......天駆の夢(ペガサス・ドリーム)にやられた......!?)

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