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アドバンスーAdvanceー  作者: Star Seed
第一章「脚本書きのプロローグ」
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活路ーーMake My Wayーー

 漸く一章のエンディングが見えてきました(エンディングを迎えるのは少し先になりそうですが)

 少なくとも、今年中に一章を書き終えたいです。


 女性らしさ、とは何だろう。


 それは体のラインか。はたまた、女性ホルモンの分泌による整った顔か。高い、澄んだ声か。こんなことを考えていたら怒られそうだが、今、この状況下に於いては、とても重要なことだ。


 体のライン。顔。そして、声。その全てが異性にしか見えない同性が、ここに居る。


 彼女...彼の体は腰の部分が若干ーー本当に若干だがくびれており、体は健康的だが細身である。顔は人形のように整っており、声は女性として聞くなら少し低めの部類だが、男性としては十分高い方だ。形容するならそう、少年の声を務める女性声優の地声のような。クールキャラや大人びたキャラクターの声のような。


「へ...? お、男? 嘘。それじゃ、ーーええ...?」


 俺はまた呆然自失、といったような顔になって、ひたすら何かを否定し続けていた。


「ずっと女子だと思ってたんですか!? 朝の時から……!? 信じられません!」


 彼女...いや、彼は、少し饒舌に糾弾してから、沈んだ表情でため息をついた。もしかして、こんな経験は初めてではないのだろうか。


「そ、それはないわ...私でも、流石に」


 ーーそう言えば。学校で見かけた時、彼はどんな服装をしていた?


(バカだなオイ。うちの学校指定のカッターシャツだろーが)


「す、すまん! ごめんなさい! お許し願いたい!」


 俺は全てを悟ると、目の前の同級生に向かって謝罪の言葉を並べた。


「う...そんなに謝られたら僕が悪いみたいじゃないですか。い、いいですよ。こういうこと、初めてじゃないし...」


「ホントにこんな奴許していいの?」


「お、お前なぁ...」


「で、説明してもらえますか? どうして、貴方が彼女に襲いかかっていたのか?」


 ああ、そう言えば説明してなかったな。なんて思考しつつ、俺は口を開き、俺の能力以外には何も包み隠さず、全てを語った。


「...操作能力者からの私怨むき出しの攻撃、ですか」


 話を黙って聞いていた彼が、話を聞き終わってから最初に発した言葉はそれだった。


「あ、ああ。うん。君ーーええとーー」


月茜(つきあかね) 永戸(ながと)です」


「永戸は、そいつからの攻撃を受けたことは?」


「ないですね。大体、操作されていたら、掌に「76」と出るんでしょ? 出てないから大丈夫ですよ」


 そう言って、彼は右手をこちらへと突きつけた。そこに、あの「76」文字はない。


「これで1つはっきりしたわね」


 唐突に、京子がそう言った。


「何がはっきりしたって?」


「相手の目的について、よ。相手は、少なくとも、うちの学校の人間全員を操作しようとしているわけではないということがこれではっきりしたのよ」


(成る程な)


 知らない間に洞察力が高まっていた幼馴染みに感嘆しつつ、俺は「じゃ、ホントに、俺を倒すためのメンバーをかき集めてただけ、ってことなのか」 と返した。


「でも、今の話、神無月さんが相当恨まれてなきゃ、現実味を帯びてきませんよね?」


「神無月さん、ねぇ。言いにくくない? 柊人でいいよ?」


「それくらい他人行儀な方がいいんじゃない?」


「そうかもしれませんね」


「酷いぞお前ら!」


「僕を女子とか言った罰です。甘んじて受け入れなさい」


「う...」


 と、ふと、話が脱線してきているのに気づき、俺は「話を戻そう」 と提案した。


「でも、確かにそうよね。柊人は恨みを買われなさそうな性格をしていると思うけど、相手は殺したいほど恨んでいる。変だわ。考えれば考えるほど」


「やっぱり、何かしたんじゃないですか、神無月さん?」


 そんなわけないだろ? と切り返してから、俺はふと、「翼」が、色恋沙汰関連の問題ではないか、と考察していたことを思い出した。


 あれは恋愛脳(スイーツ)から来る発作のようなものと思って気に止めてなかったが(ひどくねぇかお前ぇ!) もしかしたら、案外、そんな簡単な問題なのかもしれない。


 ーーとそこで、俺は1つ、ある「重要なこと」に気がついた。


「で、俺は1つ思ったんだが」


「何?」


「相手が、「操作」している人間を完全に把握できているかどうかは別として、今、京子にかかった能力が打ち消されたことで、相手は、こちらが「操作」に気付き、対処法を発見したことに気付いただろうな、と」


 つまり、相手はこれまでよりも活発にこちらを狙いに来るかもしれない。と付け加えてから、俺はふと、公園の入り口に誰かが立っているのを見た。


 あれは同じ文化委員の木山だろう。どうしてここに居るのかは分からないが。


(もしかしたら、もう一度京子を操作するために接触を図ってくるかもな)


 考えたくもねぇ、疑心暗鬼になりそうだ、と返してから、ふと。


 木山が真っ直ぐこちらへ向かって来ていることに気付いた。その速度はさながら、50メートルを走りきる走手(スプリンター)のようでーー


 手に握られている長めの包丁を見た瞬間、俺は深く考えずとも、襲われかけていることを理解した。


「敵だッ!」


 俺は言いつつ、羽を三枚射出した。しかし、それは舌を巻くような早さで打ち落とされる。いや、あれは打ち落とす、というより、羽をコントロールした、と言う方が正しいかもしれない。羽は俺の操作を無視して、あの包丁に吸い寄せられ、叩き落とされたのだ。


「ここは私がッ!」


 俺が攻めあぐね、逡巡していると、京子が全線へ躍り出、能力で顕現させたのであろう刀を大上段に振りかぶった。しかし、その刀も包丁へと引き寄せられる。


 刃物対刃物の戦いで、太刀筋をコントロールされることは致命的だ。これは勝ち目がないのではないか。一瞬、俺はそう思ってしまった。


 だが、次の瞬間。京子はニヒルな笑みを浮かべつつ、刀を思いきり包丁へと衝突させた。そこから、刀へと重心移動で力をかける。鍔競り合いの態勢である。


 鍔競り合いに戦闘が持ち込まれてから、1拍後、信じがたい現象が起きた。何と、包丁が半ばから粉々に砕けたのである。破片は儚く宙を舞い、京子の刀に当たり、そして、崩壊する。


 そこから、京子は余裕の表情で木山に歩み寄ると、後頭部に刀の峰をあてがった。それだけで木山は音もなく倒れる。


「い、今のは?」


「刀の能力。刀に触れた物質を任意の回数と速度で振動させられる能力。勿論、その振動には限度があるけど、あんなステンレス包丁くらい、余裕で粉々にできる」


 そう淡々と言う京子に、俺はまたまた感嘆させられた。あれは剣道の太刀筋あってこそのものだ。それに、振動アシストなどなくとも、京子なら、鍔競り合いから強引に命を取れたと思う。


(ーーそうだ。そいつの手確認してくれ。これで操作が解けてるかどうか見たい)


 俺が感傷に浸っているのを現実に引き戻すように、「翼」はそう言った。従い、俺は倒れている奴の掌を確認した。


 そこに「76」はない。操作が解けている。


「操作が解けているんですね?」


「ああ、そうらしい。で、今から木山にも安全装置かけるから、少し待っててもらえるか」


(安全装置、ねぇ? かけるのはオレなんだけどなー?)


 詠唱するのは俺だ、なんて返しつつ、俺は「翼」の後に続いて催眠を開始した。


 彼らは気付いていない。操作者が、自分達の100メートル半径に居ることを。そして、今倒した相手が、どこから来たのかも。


 運命が、音を立てて動き出そうとしていたーーー。

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