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 サニーラビットと死闘を始めてから六日目の夜。

 サニーラビットが活動をやめる時間に家に帰った俺は、いつも通りにリオンとエリックさんと夕食を共にしていた。

「今日、ハルマがすごい声を出してた」

「ほお、どんな声を?」

「リオン、今日のことは忘れてくれ……」

 今日、あの畜生共に転ばされたとき、一生のうちにあまり出したことのない大声を出してしまった。

 具体的に言えば、奇声だ。

『俺の畑を荒らすんじゃねぇぇぇ!  フォラァァァァァ!』

 まさしく、人間味を欠いた声だった

 いくら混乱していたといっても、これはない。

 俺は、探検隊が発見した原住民か何かかッ。

 しかも、肝心のサニーラビットたちには効果なしで、サニーラビットを止めにこようとしたリオンをびっくりさせてしまった。

 あの時のドン引きした彼女の表情は、今も心に焼き付いている。

 勿論悪い意味でだが。

「すごい声だった。その後、別の生き物が雄叫びを返してたし」

「ははは、仲間だと思われたのかな?」

 エリックさんの言葉に苦笑いを返すが、あながち間違っていなさそうな声を出してしまった手前、否定できない。

「そういえば、エリックさん。あの卵の殻についてなにか分かりましたか?」

 あれから結構経ったけど、エリックさんからあの卵の殻についてのことは聞いていない。

 俺の質問に、悩ましげに唸る様子を見せたエリックさん。

「王国にいる知り合いに相談したのは知っているだろう?」

「ええ、まあ」

 エリックさん自身が聞くといっていたし。

「で、卵の殻を見せて聞いたみたところ……私が予想していた以上に興味を持ってしまってね。連絡しようにも、研究に没頭しているせいで連絡が取れない状態になってしまったんだ……」

「えぇ……」

「今日になってようやく連絡が通じたのだが、返ってきた言葉は『その生物は危険がないから安心して』と興奮気味に伝えられ……なんの生物かほとんど説明のないまま、一方的に連絡を切られた」

 エリックさんの知り合いって個性的な人が多いのか?

 ラングロンさんも、変わった人だし。

「でも危険がないっていうからには、大丈夫なんだよね?」

「だとしても、正体が分からない生物が潜んでいることには変わりないんだ。一応、ラングロン君には危険はないと今日伝えておいたが……まだまだ、気を付けたほうがいい」

 確かに専門家が大丈夫といっても、その正体をこちらが把握しない限り安全とは言えない。

 取り返しのつかないことが起こってからじゃ、遅い。

 エリックさんの判断に同意していると、彼が俺の方に視線を向けた。

「ハルマ君。私の知人は、もう一つ気になることを口にしていたんだ」

「え? なにをですか?」

「『そこに、雨の天候魔法の使い手はいる?』だ。勿論、知人には君のことは伝えていない」

 なにか当たりをつけて聞いたと思うのだが……もしかして、卵の殻と関係あるのだろうか?

「考えられる可能性としては……君の持つ雨の天候魔法に関係する生物が、この近辺の生息している可能性があるということだ」

「そういえば、卵の殻があった場所もハルマの倒れてた場所から近かった」

 ……。

「もしかして、雨の大地に関係する生物とか?」

 前にエリックさんから話を聞いた話から考えると、雨の大地にはアメヤサイの他に、生物も生息していた。

 それがどんな生物かは想像できないが、それが卵から孵った。

「私もその可能性が高いと思う。だが、私はその分野にあまり詳しくなくてね。雨の大地にどんな生物が生息していたかまでは知らないんだ」

「ははは、俺なんてほぼ無知ですから」

 エリックさんは多くのことを知っているが、全能な訳ではない。

 それに、俺自身この人にいつまでも頼りっぱなしってのは駄目なことだ。

 話も一段落ついてきたことだし、この数日間でずっと悩んで決めたことを切りだそう。

「エリックさん、リオン。聞いて欲しい話があるんだ」

「改まってどうしたの? ハルマ」

「そこまで畏まる必要はないんだが……」

 二人の視線を向けられ、決意が鈍ってしまいそうになるが、ギリギリで押し留まって視線を合わせる。

「この数日間、ずっと考えていたことがあります」

 神妙な俺の顔を見てただならぬ雰囲気を感じ取ったリオンが心配するような表情を浮かべるが、それに構わず俺は本題へと入る。

「俺、ここを引っ越します」

「「……え?」」

 これが、この数日間で決めた答え。

 襲いかかるサニーラビットからアメキャベツを守るために、俺は一番畑を管理しやすい場所へ移動するつもりだった。

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