今夜はストロベリームーン
「ストロベリームーンだってさ、今日」
「ストロベリームーン? なんだそりゃ」
「いや、月がややストロベリー色、って事じゃない?」
「なんかふわっとしてんな、知らないのかよ」
「知らないわよ。あたしがそんな博識に見えるか」
「あー、言われてみれば、見えないな」
「でしょ?」
「んー……、月も……ストロベリーには……見えないな」
「見えないのかよ。そこは見えときなさいよ……見えないね」
「見えないよな」
「あたしの目が悪いのかな……?」
「俺そんなに悪くないけど……、見えないぞ」
「うん、あたしもそんなに悪くないわ」
「悪くないのかよ」
「チョー良かったわ」
「お前、チョーとか言うのかよ」
「あたしの人生に於いて今のが最初で最後よ」
「それを断言出来るお前は何者なんだよ」
「アンタの彼女」
「………………帰ろっか」
「うん、帰ろう」
「今夜は冷えるな」
「月ではきっと、クリスマスなのよ」
「成程な」




