たった一つの冴えた筋肉式のやり方
ブラボーは舌なめずりをしながら、バタフライナイフの刃先を私の顔に向けてくる。
丁度その時――
「おい、アルファー、確かに荷物は四人分しかなかったぞ」
チャーリーが戻って来て、そう報告した。
「ほ、ほら、言った通りでしょ? 嘘なんかついてないってば。ね、ナイフどけてよ」
必死に笑顔を作って言う。
しかし、ブラボーは気にした様子もない。
アルファーに視線を向けるも――
「……ほう? では警察の件はどう説明する?」
「そ、それは……」
ストーカー男を釣り出すためにログハウスに泊まって、上手く誘い出したストーカーを警察に突き出しに行った……なんて言ったら、絶対に嘘だと思われる。
と――
「おい、アルファー、車の音だ」
今度はスキンヘッド――デルタが話に割って入ってきた。
「何?」
アルファーがカーテンで閉ざされた窓に寄って行く。
「ガキ、こっちに来い。カーテンの隙間から見ろ」
私は首根っこを押さえられ、窓際に追いやられた。視界の端に、つまらなそうな顔をしたブラボーが見えた。
「警察じゃねえみたいだが……あの車はお前の仲間か」
カーテンの隙間から、無理やり覗かされる。
そこには、コングの軽自動車が見えた。
ログハウスの前の、だだっぴろい空間に駐車し、今まさに降りてこようとしている。
「そ、そうよ」
「じゃあ近づくなと言え。籠城の邪魔だ……もちろん余計な事を言えばどうなるかわかっているな?」
それからカーテンを少し開け、言われるがままに私は窓を開けた。
車から降りたばかりのコングの姿が見える。テロリストたちはコイツが出てくる前に引っ込んだので、あのグリーンベレー感丸出しな風貌に気づかなかったのが救いだ。
なら……まだやりようは……ある。
「おーい」
私は手を振った。
すると下のコングが気づいて手を振りかえしてきた。
「ちょっと聞いてー」
「なんだ? どうした?」
「理由は聞かないで欲しいんだけど、ちょっと今、入らないで欲しい」
下のコングが困惑しているのが伝わってくる。
でも、これはチャンスだ。
今、コングの目が私に向いてる。
だから、
『テ・ロ・リ・ス・ト』
と、声を出さずに口だけ動かした。
お願い。通じて!
すると、
「うむ。わかった」
とコングは答え、そのまま車に乗り込んだ。車はバックしていく。
――伝わった!?
そうだよね。
幼馴染だもん――
「ぶ・ち・こ・ろ・せ、か。了解した!」




