お嬢さまと執事と柿
初めまして(?)。今晩は。お早う御座います。
こんにちは。おやすみなさい。
変上 狂未と申します。
今回、話します物語は
ゆったりほんわかな和む感じのお話です。
どうぞ。ご堪能くださいませ。
最近、最近、あるところに
ふかーいふかい森がありまして
それまたふかーいふかい奥まったところに
お嬢さまと執事が暮らすお屋敷がありました。
お屋敷に暮らすお嬢さまは、幼くも読書というちょっぴり大人なご趣味をお持ちの可愛い女の子。
そして執事は、若くもお嬢さまの為ならと良いご本を探すため一日に20冊ものご本を読んでいる整った顔の青年です。
ある日お嬢さまはとあるご本をお読みになり終わると、ある事を思いつきました。今回は特別良い事だと思ったので執事さんのところへ向かいました。
「執事さん。執事さん。」
「どうなされましたか?お嬢さま。」
「山へまきを取りに行きましょう。」
「山へ…まきをですか?」
「そうなのです。」
「まだ午前ですがお昼ご飯を食べ終えてからに致しましょうか?」
「いいえ。おにぎりを持って行きましょう。お外でランチにします。」
「それは良い案ですね。お嬢さまの分のおにぎりは何個作りましょうか?具は何が良いですか?」
「おにぎりは3こ。具はシャケとおかかとうめぼしでお願いします。」
「承知いたしました。それでは支度をさせていただきます。少々お待ちください。」
お嬢さまは少々待ってあげました。待ちはしましたがお嬢さまが「まだかな」と思う頃には支度が出来ていました。
「支度は整いました。ではお嬢さま、次にお着替えをしましょう。お屋敷用の服で山に行くとお怪我をしてしまいますよ。」
「そうなのですか?」
「そうなのです。お怪我をしたら一大事ですよ。こちらにお着替えくださいませ。」
執事はお嬢さまに
「山ガールフル装備」を渡しました。
「意外とおしゃれですね。」
「お褒めにあずかり光栄で御座います。」
「それではお着替えしてきます。」
お嬢さまはご自室に
お戻りになり着替えてきました。
その間に執事も山男装備に着替えました。
「それでは行きましょう!」
「はい。お嬢さま。」
前も話した通りお嬢さま執事が暮らすお屋敷は深い森の中にあります。ですのでお嬢さまと執事は森の中にある山に向かいました。
夏が終わり季節が移り変わる頃になったので様々な木が紅葉していました。ひらひらひらと葉が落ちます。落ちた葉は集まって秋色の絨毯を作っていました。その絨毯の上をお嬢さまと執事は歩いています。
「きれいですね。執事さん。」
「ええ。きれいです。」
「でも寂しげですね。」
「ええ。寂しげです。」
「それでもきれいです。」
「左様で御座いますか。」
「左様なのでございます。」
お嬢さまと執事がそんな会話をしていると木の上からサルが一匹現れました。
するとサルは
手の平をお嬢さまに向けました。
サルはどうやらお腹が減っているようです。
「このおさるさん。お腹が減っているみたいです。どうしましょう?執事さん。」
「お嬢さまの望む通りにすれば良いのではありませんか?」
「そうですね。
わたしのおにぎりをあげましょう。」
お嬢さまは、
シャケのおにぎりをサルにあげました。
サルは嬉しそうにおにぎりを食べました。
お嬢さまは少し悲しげです。
するとまたサルは
手の平をお嬢さまに差し出しました。
サルはまだお腹が減っているようです。
「うぅ。どうしましょう?執事さん。」
「お嬢さまのお好きなように
すれば良いのではありませんか?」
「わかりました。
私の…私のおにぎりをあげましょう。」
お嬢さまは
おかかのおにぎりをサルにあげました。
サルはまた嬉しそうにおにぎりを食べました。
お嬢さまは涙目になっています。
するとまたまたサルは
手の平をお嬢さまに差し出しました。
サルはまだ少しお腹が減っているようです。
「そんなぁ。でも執事さん。私は決めてます。」
「そうですか。」
「私の最後のおにぎりをあげましょう!」
お嬢さまは
うめぼしのおにぎりをサルにあげました。
サルはとても嬉しそうにおにぎりを
食べてしまいました。
お嬢さまはそれを
見てもっと涙目になりました。
サルはもう手の平をお嬢さまに差し出しませんでした。
サルはやっとお腹がいっぱいになったようです。
するとサルは岩陰に行って何かを取って来ました。それをお嬢さまに渡します。
「ありがとう。」
お嬢さまはそれを受け取りました。
それは柿の種でした。三粒あります。
サルはそれを渡すとするすると上手に木を登ってどこかに行ってしまいました。
「行きましょう。お嬢さま。」
「そうですね。」
山に着くとお嬢さまと執事は、まき拾いを始めました。持って帰れる分だけ集めるとお昼頃になりました。
「執事さん。」
「はい。お嬢さま。」
「この種を植えたらすぐに柿は実りますか?」
「桃栗三年柿八年と言いますから植えても八年くらいは実るまでかかりますね。」
「そんな!私のお昼ご飯は八年後…」
「そんなことはありません。どうぞ。お嬢さま。」
「これは…おにぎり。」
「はい。こんな事もあろうかと念のため用意しておきました。勿論私の分もありますのでご安心して召し上がってください。」
「流石は私の執事さんです。」
「ありがとうございます。」
「いただきます。」
「どうぞ。召し上がれ。」
お嬢さまと執事は二人で仲良く
おにぎりを食べました。
そしてまきを持ってお屋敷に帰りました。
まきを運び終わるとお嬢さまと執事は椅子に座って休憩しました。
「ふー。疲れました。」
「お疲れ様です。お嬢さま。」
「執事さん。これを庭に植えてください。」
お嬢さまはポッケから柿の種を三粒、出しました。
「柿の種をですね。」
「はい。名前は右から
シャケ、おかか、うめぼしです。」
「左様でございますか。
八年後が楽しみですね。」
「実るといいです。」
そしてその日からお嬢さまと執事の暮らすお屋敷のお庭にはシャケとおかかとうめぼしの柿の種が植えてあり実る時を今か今かと期待されています。
おしまい。
いかがだったでしょうか?
和んでいただけたら幸いです。
「お嬢さまと執事と…」シリーズは
これで五作目です。
良かったら他の作品も読んでみてください。
今回は二つの昔話を合わせてみました。
「おむすびころりん」と「猿蟹合戦」です。
漢字にすると凄いですね。恐怖です。
おむすびころりんの要素が少ないのは
元より猿蟹合戦を
書くつもりでいたからです。
表記も
「おむすび」ではなく「おにぎり」ですし…
おむすびころりんファンの皆様、
ダシにするようなマネをしてしまい
申し訳御座いません。m(_ _)m
地の文がいつもより少なめなのは
スムーズに話を進めることができるかと
考えたからです。
決してめんどくさかった訳ではないですよ!
(それも少しある…)
今回の地の文の量に関しての
ご助言や感想をいただけると嬉しいです。
説明不足になっていなければ良いのですが
気がかりです。
その他のご意見、ご助言、ご感想も
心よりお待ちしております。
誤字脱字がありましたらお知らせを
お願いします。気が向いたらで構いません。
それではみなさん、良い一日を。