冒険者ギルド
その日、神生まれた。救いの手を差し伸べる神が。
~世界の記憶 第2024章 第8節 14項~
現在、俺はアーネさんに引っ張られて冒険者ギルド…ではなく、屋台街に来ていた。
「えっと、アーネさん、冒険者ギルドに行くんじゃなかったのかな。」
「あ、じ、実はですね、ギルドはもう少し時間をおかないとやって無いんですよ。」
「…だから今は朝食の代わりにここに来ているわけか。食べ物がおいしいから文句は言わないけど、アーネさんの手持ちは大丈夫なの?」
「ええ、このくらいなら。ギルドにはクエストがあって魔物の討伐クエストは結構お金になるんですよ。そのおかげで毎日宿も確保できてますし。それに討伐クエストと収集クエストの両方を受けたほうが効率も良いので。」
「そ、そうなんだ。」
正直まだどのあたりから高級と言って良いのか分からないのが現状なのだが。屋台の食べ物の値段が銅貨2~3枚だから予想よりは安い値段から高級というのかもしれない。俺は得体のしれない生き物の肉を食べるのには抵抗があるのでまだ何も食べてはいないが。
「キシナミさんも何か食べないと勿体ないですよ。」
と言われても正直困る。食べ慣れていないものを食べて体調を崩そう物ならばどうしようもない。いや、その時は魔法を使えばいいのかもしれないが、無暗に自分の力を相手に見せるわけにもいかない。
そもそも、俺は腹がまだ減っていない…あれ?そういえば昨日丘の上で目が覚めてから全く空腹を感じていない…。食事がいらなくなったのだろうか…。それはなんか精神衛生的になんかよろしくないような…。
そんなこんなで3時間ほどこの屋台街を見て回ってた訳なんだが、俺はどちらかというと魔物の素材を見て回っていた感じだ。見てしまえば勝手に創ることができる。冒険者涙目だ。まだ試していないが、もしかしたら、人の職業から生物まで何でも創れるかもしれない。さすがに人を作るのは人権的に問題があるので試さない。さて、アーネさんは…
「はうあっ!わ、私のホットラビットの串焼きが!」
絶賛朝食続行中のようだ。
結局、4時間ほど経ってしまった…。
「今度こそギルドに行くんですよね?」
「はい。」
なにやら真剣な表情で頷くアーネさん。
「何かあるんですか?」
「いえ、昨日話したこと、覚えてますよね。」
「ああ、言いなりにさせようとする人がいる、でしたっけ。」
「はい。どんな手で来るかわからないので用心してください。あと、ここがギルドです。」
なんだ、もう着いていたのか。見た目は素朴な三階建ての建物だが、屋根の上にある看板でギルドということが分かる。入ろうとして少し近づくと、
「ヒイイイィィィ!!」
という叫び声とともに男が一人入口から吹っ飛んできた。
「…私は何も見ていない。さて、入ろうかアーネさん。…アーネさん?」
「や、やっぱりやめましょう!こんな危険な目にキシナミさんを会わせたくありません!」
「お気づかい有難う。でも、問題は無いでしょう。」
と言って俺は普通に中に入る。すると、
「ヒャッハー!新しいカモだー!」
「すっげー美人じゃねーか!こいつは俺のもんだー!」
「…うわぁ。何あのいかにも弱そうなの…。」
「キシナミさん!あの人たちはLV40を超えている人たちです!油断しないでください!」
「そんなこと言われても、ねじ伏せればいいじゃない。」
そういって向かってきた一人がいきなり90°真横に吹き飛び、壁に叩きつけられる。堅いな、壁。
「な、んだ、何が、起きて…」
「うん。予定通り気絶してくれたみたいだね。私は喧しいのが嫌いだからね。」
「…キシナミさん。今何をしたんです?」
「え?あいつの顔を軽く叩いただけだけど…。」
「全然軽くに見えませんよ…LV40吹きとばすってどんな力してるんですか?」
そう言って詰め寄ってくる彼女に、
「ひ・み・つ♪」
といったところ、顔を赤くして固まってしまった。おっと、ふざけている暇もなさそうだ。もう一人の男がこっちに向かって走ってきてる。
「全く、あまり、私に面倒なことをさせないでほしい。」
「ひっ…」
「《セット》、《クリエイティング》、《エアロバレット》。」
俺の創った拳位の大きさの風の弾を御馳走になった男はそのまま前に吹っ飛ばされる。
「これで、静かになったな。」
「…キシナミさん、貴方一体何者ですか?」
「昨日言ったじゃないですか。亜人だって。」
「それでもこの強さはおかしいですよ!!」
「まぁまぁ、そんな大声出さなくても。せっかく綺麗なのに台無しですよ?」
それでも俺に疑うような視線をむけるアーネさん。まいったな。さすがにLV102とかいう馬鹿げたことを言うわけにもいかないし…
「失礼、此処にキシナミという冒険者が居るはずなんだが。」
急に入ってきたこの人は確か、昨日闘技場の前で会った人だっただろうか。なんにせよ、ちょうどいいタイミングで来てくれた。
「あ、私がキシナミです。」
「ああ、昨日は世話になったな。正式な礼を渡すために来たんだ。渡すものは3つあるから、適当に席を取りたいんだが…」
「では、少し待ってもらえますか?今さっき此処に来たばかりでギルドでの登録をまだしていないんですよ。」
「む、そうなのか。君の歳では少し分からないところも出てくるだろう、手伝ってやる。」
「有難うございます。」
それで、俺とこの兵士はカウンターの前に立ち、登録を開始する。
「ギルド登録をお願いしたいのですが、大丈夫でしょうか。」
「はい。問題ありません。ではここにギルドカードの情報を書き込んでもらえますか。」
そう言って対応してきたのは、見た目16~18歳くらいのエルフの人。この世界に来て初めてエルフを見たよ。白い肌に銀色のさらさらとした髪。翡翠色の目は光が入って輝いているようにも見える。
「ギルドカードの情報は俺が代わりに書こう。」
「あ、す、すみません。有難うございます。」
そして、俺のギルドカードの情報を名簿に書いていく衛兵。そんな彼を少し見ていると、
「どうした?俺の顔に何か付いているか?」
「あ、いえ、失礼ですが、見た感じ厳しそうな方なのに優しいんだな、と。」
「俺には君と同じくらいの年の娘がいるからな。娘と話しているようなものだ。」
と、彼は当然のように振舞っている。
「書き終わったぞ。」
「では、此処に本人直筆でサインを書いてください。」
「分かりました。」
此処の筆記用具は羽ペンなのか。本物初めて見たぜ。と思いつつも丁寧にサインを書き、
「終わりました。」
「では、キシナミ様のギルド登録が完了致しました。」
どうやらこれで登録は終わったらしい、じゃあ次は…
「忘れてないよな?礼を渡すから席を…」
「キシナミさーん!こっち空いてますよー!」
大きめの声で読んだのはアーネさん。席を取っておいてくれたのか。気がきく人だ。
「では、君渡すものとして頼まれたものだが、これと、これだ。」
「これは…」
「へー、綺麗な色をしてますね。私初めて見ました。」
机に出されたのは一枚のカードと、琥珀色をした宝石だ。光を反射すると虹色に光り、卵のような形をしている。
「こっちのカードだが、これはゴールドカードと言ってな。買い物などをするときにこれを見せると物の値段を安く買うことができる。まぁ物によってはあってもなくても同じ値段でしか買うことができないものもあるだろう。ちなみに何処の国に行っても使えるぞ。」
「じゃあこの宝石は何ですか?」
「今説明する。これは年に三回、この町の中央に生えている木になる果実…の中にある、いわば種だ。どういう原理かは今も研究されているが、これを使うと自身の能力、潜在能力だな。これをある程度引き出す事ができる。すでに完全に引き出されているなら、何と言えばいいのか、人間だったら超人、とでも言えばいいのか?そんな感じに進化のようなことができる。故にこれは進化の秘宝とも呼ばれている。」
「進化の秘宝ですか。一体どのくらいの成長を促すことができるのか気になりますね。」
「ところで、年に三回とれるって言ってましたけど、私そんなの見たことないですよ?」
「それはそうだろう。これに値段をつけるなら精霊貨20枚はくだらないからな。」
「精霊貨20枚!?それって一生遊んで生きていけるじゃないですか!」
「それはともかく、この二つが君へ送られる礼だ。」
「キシナミさん。早速使ってみましょうよ。進化の秘宝!」
「使うときは胸に押し当てるイメージだそうだぞ。」
「分かりました。試してみますね。」
そう言われて貰ったばかりの進化の秘宝を胸に押し当て…
「ッ!!!」
「え!?き、キシナミさん!?」