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冒険者地区

 神とは、一体何なのだろうか、理解することはできない。

 人に向かって手を差し伸べた神はいないのだから。少年を除いて。

 ~世界の記憶 第2033章 第12節 25項~











 彼女、アーネは最近退屈だった。しかし、見慣れない格好をした人物によって久しぶりに日常を楽しむことができたのだ。その人物の名前は、キシナミ。彼女、いや彼はそんな彼女に連れられてとある場所にやってきていた。そうこの門の向こうが、冒険者地区。一定の実力を持たなければ入ることができない、冒険者地区。今、アーネとキシナミはその門の前に来ていた。


「へぇ、結構大きい門だね。」

「でしょう?すごいですよね、これ。話によるとこの門の向こうが本来のこの町だったらしいんですよ。」

「そうなのか。じゃあ早速入ろうか。」

「あ、ちょっと待ってください。この門を通るには試験があるんですよ。」

「試験?」

「ええ。まぁ簡単な実践ですけどね。」

「なるほど。それでその試験とやらはどこでやるんだ?」

「門の横にいるあの人に話しかければ大丈夫ですよ。」

「アーネさんは試験やらないの?」

「私は一回合格しているので、やる必要がないんですよ。」

「見た目の割に腕が立つんだね、感心したよ。」

「そ、そんな、あ、で、でもキシナミさんなら大丈夫ですよ。」

「そうかな、じゃあ軽くやってくるよ。」


 そう言い残して、俺は門を開けて入るアーネさんを横目で見つつ、衛兵風の人に話しかける。


「すみません。この門を通るための試験をしたいんですが。」

「おう、分かった。試験だな。じゃあついてこい。案内してやる。」


 しばらくついていくと、闘技場のような場所についた。半径60mほどの円形の闘技場である。


「じゃあここで待っててくれ、今から実践試験のための魔物をつれて来るから。」

「はい、分かりました。」


 それにしても、この町の建物はでかいのが多いな、と俺は思う。さすがに都会のビルほどではないが、20mを越すであろう高さの門を今さっき見てきたのだ。闘技場の大きさを確認する意味でもキョロキョロと辺りを見回す。

 ん?観客席のようなところに誰かいるようだ。あの赤い髪と白いワンピースはアーネさんだろう。そんな彼女が此方が見ていることに気付いたのか、手を振ってくる。此方も手を振り返す。そんなことをしていると、


「た、大変だ!」


 大きな叫び声が聞こえる。何人かの衛兵が慌てているようだ。その話に耳を傾ける。


「おい、どうすんだよ!今やろうとしてるのは通行許可証のための試験だろ!?なんでDランク昇格試験の魔物なんか放したんだ!」

「も、申し訳ありません!し、しかし放してしまったからにはどうにか倒さなければ…。」

「今居るのは今言った通り通行許可証を取りに来た少年…いや少女か?ってそんなことはどうでもいい!その人をどうするつもりだ!」

「ならギルドの上級者達を連れてくれば…」

「今D-以上のランクのメンバーは全員遠征に行っている!」

「そ、そんな…。じゃあ、その人は…


 なにやら凶暴な魔物を間違って出して、俺の方に向かっているということで間違いなさそうだ。今の話をアーネさんも聞いていたのか、顔面蒼白になっている。赤くなったり青くなったり忙しい人だ。






 アーネは焦っていた。ランクDの魔物が間違って放されてしまったと聞いたから。自分が案内するなんて言い出さなければ、声なんてかけなければこんなことにはならなかったのだと。彼女は必死に、


「キシナミさん!逃げてください!」


 そう叫んでいるのだが、距離が離れすぎているのか全く聞こえていないようだ。血の気が引くのが自分でもよくわかる。だがキシナミはこちらを見て何かおかしそうに頬を緩ませている。その瞬間、鉄の扉が壊される音がする。同時に入ってきたのはランクDの魔物、レッサーデーモン。ランクEの自分では何の役にも立たないことを突き付けられ、もはや何もすることができない。キシナミがレッサーデーモンに向き直った瞬間、レッサーデーモンはキシナミの後ろにいた。そしてその剛腕が振り下ろされる。そこで意識が暗転した。






「やれやれ、いきなり不意打ちとはいい度胸だな。」


 心配されていることを知りもしないキシナミはいつの間に構えていたのか、盾でその剛腕を受け止めていた。そして、それが合図となり、彼の実験は始まった。


「さて、まず装備からわかるが、創った後のものに魔力を割かなくても大丈夫だな。次に作れるもの個数制限があるかだが、これも問題ない。試さないといけないのは…。」


 この戦闘で彼が確かめようとしているのは、創ったものを魔法で同時に複数の数を動かせるのか、思い描いた魔法、とあるがどの程度まで有効なのか、おもにこの二つである。


「さて、攻撃をよけながら剣を作るのも結構大変だな。とりあえず10本あれば良いか。」


 そう言いながら彼は10本の剣を作り始めた。魔法を使うにはそれなりに集中をしなければいけないので時々レッサーデーモンの攻撃が掠るがその程度なら何の問題もない。彼が創ったローブのおかげである。

 これは、集中力を総動員して創ったものなのでただでさえ防御力が高いというのに、第六段階解放で習得した魔法の品創造を併用したため、特殊効果が付いているのだ。その効果は、全耐性40%上昇という物である町に着くまで約4時間この時間を全てこの装備に割いていただけのことはある。


「じゃ、そろそろ反撃開始と行こうかな。」


 剣は用意できた。後は10本の剣を自由自在に動かせる魔法を創造するだけである。


「…、よし、《マリオネットソード》!」


 その掛け声と同時に、10本の剣が宙に浮く。そしてまさに思い描いた通りそのままにその剣を動かすことができる。それには使っている当の本人さえも、


「これはすごいな…。」


 と、唖然していた。傍から見れば、両手を突き出して、魔法陣を出しているようにしか見えないだろう。しかし、魔法陣を出した本人は10本の剣を同時に動かしているのだ。これは予想以上に大変なことである。しかし、それが普通の人間ならば、の話である。

 今はこれだけで限界かもしれないが、この魔法を発動した時から流れはキシナミに向いてきている。それがキシナミの強さを物語っている。


 それにしても一方的だな。三本は俺の近くで守備に回しているが、剣以外も同時に動かしたら敵居ないんじゃないかな。


「ま、そろそろフィニッシュと行きますかね。」


 そう言って俺はすでにボロボロになったレッサーデーモンに剣を一本一本魔力を込めて突き刺していく。その威力はその体を抉り、穿ち、粉砕する。何処からどう見ても俺の完全勝利である。


「さて、アーネさんは、っと。あらら、気を失ってるのか。だから休もうって言ったのに…。」


ドタドタドタドタ!


「大丈夫か!?助けに来たぞ!ってあれ?」

「ああ、こいつなら何とか倒せましたよ。結構危なかったよ。うん。」


 今頃来た兵士たちにそう告げて俺は観客席のほうに向かい。最寄りの階段からアーネさんの所に行く。随分と青い顔をしている上に、うなされているようだ。どうしようかと思っていると、


「ああ君、これが君の通行許可証だよ。本来は色々と手続きがいるんだが、名前だけ教えてくれればいい。問題を解決してくれたし、それなりの実力もあるようだから上にも文句は言われないだろう。受け取ってくれ。」


 と、声をかけてきたこの男性、恐らくこの人たちの上司のようなものだろう。他の人は兜をつけているが、この人はつけていない。俳優が似合いそうな整った顔立ちをしている。


「有難うございます。私はキシナミと言います。以後お見知りおきを。」

「では後日、先ほどの例も兼ねて、冒険者ギルドに使いを出す。そこで正式な礼を受け取ってくれ。」


 許可証に俺の名前を書いた後、俺に手渡してくる。

 目的の許可証も手に入ったし、後は宿をとるだけだな。何よりも具合が悪いというのに、俺を今日一日町の中を案内してくれたアーネさんを休ませないと。


「すみません、このあたりでお勧めの宿ってありますか?」

「宿?それならギルドの近くにある、エルって名前の宿が人気だぞ。」

「分かりました、有難うございます。」











 今俺は衛兵の人たちがお勧めしてくれた宿にいる。なるほどこれなら人気が出るのもよくわかる、とても掃除の行き届き、個人の部屋に風呂まであるような宿なのだ。一泊銅貨20枚という通常より高い値段ではあるが、それでも来たくなる。ちなみにアーネさんは、いま部屋のベッドで寝かせている。今は闘技場の時とは違って、静かな寝息を立てて眠っているようだ。

 さて、本を読んで分かったことだが、この世界の生物は大きく分けると、人間、亜人、魔物、精霊の四つに分かれるようだ。神も精霊の中に入るらしい。魔物は普通の動物も入ってしまっているらしい。人間は言わなくてもわかるだろう。最後に亜人だが、これは他の種族と人間の間に生まれた物の中で人間に味方する物が亜人と言われるようだ。敵対する場合は魔物として扱われるらしい。エルフやドワーフは正しくは妖精になるようだが、友好的なこともあって亜人として扱われるらしい。ピクシーなんかは良く人間に悪戯をするようだが、精霊に位置している。しかし本来、精霊とはこの世の物質が目に見えるように変化したものである。とも書かれている。なんか結構紛らわしいな。…ん?


「あれ?ここ、どこ?えっと、私、確か闘技場で…。」


 アーネさんが目を覚ましたようだ。外を見ると明るくなり始めている。


「よく眠れましたか?」


 驚かさないようゆっくりと声をかける。


「き、キシナミさん?」

「はい、何ですか?」

「よ、良かった…。無事で、わ、私が、私のせいで、あんな、危険な、」


 涙を流しながら俺の無事を確認できて安心できて…いるのかな?まぁ早いとこ慰めてあげないとね。


「フフ、誰のせいでもありませんよ。生きているのだから人生何があってもおかしくないですし…。」

「そ、それで此処は?」

「ああ、ここはエルという名前の宿屋ですよ。」

「え?あの毎日人気でいっつも部屋がとれない宿ですよね、何で入れたんですか?」

「恐らく、衛兵の方々が根回しでもしたんでしょう。ギルドカードを貰っただけで十分なのに大げさな人たちですよね。」

「でもなんで私まで此処に?」

「私だけ宿に泊まっていては不平等だと思ったんですよ。」

「で、でもお金のほうは?」

「それなら心配いりません。まだそれなりにありますので。」


 実際金貨200枚以上あるし使いきれるかどうかさえ分からない。元の世界では考えられないことである。


「そ、そうですか、キシナミさんは今日はどうするつもりですか?」

「衛兵の方々がお礼を受け取ってもらう為にギルドに使いを出すと言っていたので、ギルドに行こうと思います。」

「そ、そうなんですか。」


 

 そう言って急にもじもじし始めてしまった。どうしたのだろう。


「あ、あの…。ギルドまで案内しましょうか?」

「はい、よろしくお願いします。」


 今日も案内してくれるのか、と心の中で思いつつ、登り切った太陽を背にアーネさんに手を取られて歩いていく。どんな所か楽しみだな。

戦闘描写が難しくて何度も書き直したのにこの有様。

やっぱり文章力ないと難しいですね。

精進します。

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