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青き疾風

 町は今日も賑わい、とても平和だと実感できる。

 露店の並んだ通りには多くの人が集まり、それぞれ楽しそうに話している。

 空には青が広がり、気持ちを晴れやかにしてくれる。

 町に吹く風は頬をなで、髪を揺らす。

 今日も変わらない日常が始まった。

 こんな日常が送れるのも英雄がこの街を守ってくださったからだろう。


~とある青年の日記~











 エレナの初戦闘から4日。別に毎日やる必要はないのだが、本人がやりたいと言っているので町の外で戦闘を繰り返している。一人でも十分に戦えるようになってきているのがよくわかる。これなら俺がいちいち何かやることもないだろう。

 それと、拠点になりそうな場所は見つからないのでそのうちこの町を出ることになるな。エレナのような魔族がいるのだから恐らく魔界があるのだろう。いつまでも俺が付いていても何か面倒事が起きてしまう。町を出た後は情報を集めながら魔界を目指すことになるだろう。その後は何をすればいいだろうか、まあその時に考えればいいか。


「ん、おはよ。」

「ああ、最近は起きるのが早いな。」


 一昨日あたりから、起きるのが早くなってきているエレナ。俺的には魔物、魔族は基本夜行性のイメージがあるのだが…まあそれは置いて置こう。


「今日は何も作ってないんだね。」

「ああ、考え事をしていてな。」

「例えば?」

「いつ頃この街を出ようか、そのあとはどうしようか、とか色々だ。」

「えー、この街から出ちゃうの?」

「いつまでもここに居たら俺の金が持たん。」

「それなら仕方ない…かな?」


 実際は創ったものを売ったりしているのだが、いつまでもそれを続けていると色々面倒な事になりそうだからな。一体どこから入手しているのか、とか聞かれた時は答えようがない。早くてあと3日くらいで出ようかと考えている。


「おなか減ったなー。」

「朝食までまだ時間があるんだがな。」


 忘れていたが、俺はいくら動いても腹が減ることは無いし、スタミナが枯渇することもまずないので同じ時間に誰かを起こすと腹減っただの、それなら動いてこい、と言ったらおなか減った状態じゃ動けない、とか色々とある。エレナには適当に本でも読んでろ、と言っておき、俺は剣のほうは割と良くできるようになったので、今度は防具、鎧とかではなく、その上に羽織る者を創ることにした。剣は造るところを見たことが無かったので、イメージが湧かなかったが、裁縫はやったことがあるので、どんな感じに創れば動きやすいか、などは簡単にイメージ出来る。

 良いものが早く出来たので、今度は色と追加の効果にこだわってみる。とりあえず魔力と同じ七色を創ってみた。雷の黄色と土の茶色がイマイチだが、その他は良いと言えるだろう。追加効果、まあエンチャントは色によってつけるものを変えている。攻撃上昇、防御上昇、速度上昇、魔法耐性など。一通り完成したところでちょうど良い時間になったので下の階に下りて朝食にしよう。


「おい、そろそろ朝食の時間だぞ。」

「やった、ご飯!」

「廊下を走るんじゃない。」


 とてててて、と廊下を走るエレナを注意しながら俺も一階の食堂に行く。いつもお得なので日替わりのメニューを頼んでいる。今日のメニューは何だろうな。頼んだ後で、そんな他愛のないことを考える。


「おまたせ、日替わりセット。2つね。」

「ああ、ありがとう。」


 運ばれてきたのは、野菜が多く、ベーコンが少し入ったスープ、輪切りになった、ファンタジーではありきたりな黒パン、ここの黒パンは普通のところよりもやわらかく、食べやすい。それから目玉焼きに腸詰の肉が5本。飲み物はミルクがついてきている。エレナは俺が追加料金を払って少し多めにしてもらっている。そうしないとエレナの食欲じゃ足りそうにないからな。


「いただきます。」

「もぐもぐ。」

「がっつきすぎてのどに詰まらせるんじゃないぞ。」

「わふぁっふぇうよ。」

「せめて呑みこんでから言え。」


 やれやれ、と軽く首を横に振りながら自分の前に置かれた朝食を食べ始める。






 朝食を終え、飲み物を頼む。


「早く町の外に行こうよ。」

「たまには休んだ方が良いだろう。」

「えー、だって、」

「だってもなにもない。休まないと体を壊すぞ。寝ているとはいえ5日間も戦闘を続けてやっているんだ。」

「ちぇっ、ケチ。」

「それに―――」


 そこまで口に出した時だった。


ドゴォン! ドォン! ダァン!


 小さいものの、三連続で爆発音が響く。町は振動し、この宿の中に居た人も悲鳴をあげ、パニックになりかけている。


「なんだ!」

「プランク、怖い…」

「少し待ってろ!」


 急いで外に出る、まずやるべきことは周囲の状況の把握と安全確保だ。西側に二つ、東の方に一つ、ここから爆発で上がったであろう煙が確認できる。町の門のほうに雪崩のように人が流れている。その表情からは必死さが伝わってくる。だが、


「おい、早く前に行け!!」

「こっちだって急いでいるんだ!」

「じゃあなんで進めねえんだよ!!」

「前の奴が動かないんだよ!!」


 と、自分の事を優先するあまり他人への配慮ができていない。町の門は4つ。そこにこの大きな町の人口が一気に押し寄せているのだ。町の奥からはまだ人が走ってきている。

 ここでいったん宿の中に戻る。


「プランク!」

「今の状態では町からは出られないだろう。何とかして冷静に行動してもらわないと…」


 また町が揺れる。何処かで爆発が立て続けに起きているのだろう。そのせいで、宿の中に居た人も宿屋から飛び出していく。このまま人が密集した状態で爆発なんて起こされたら見るも無残なことになるだろう。ここは率先して動くべきか。


「俺は誘導に行く。お前も逃げられる準備をしておけ。」

「なら私も手伝う!」

「その必要はない。急げ、誘導中に何かあった時にお前を守れるとは限らん。」

「…わかった。」


 二人で町の外に出る。俺は屋根の上から門の近くまで行き、魔法で大きな音を出す。そして一瞬静かになったところで、


「ここに居る全員、特に門の前に居る奴は良く聴け。門に押しかけていてはいつまでたっても門は開かない。一旦離れて力のある奴で普段使う門ではなく、大門を開けろ。空けた後は無暗に走らず、落ち着いて町から出るんだ。」


 と、これからやることを説明、もちろんこの時に声を響かせるための魔法を忘れない。


「なんだあいつは!」

「おい、あの爆発はあいつの仕業じゃないのか!?」

「これは罠だ!」

「いや、でも皆で逃げるならあいつの言った方法をとった方が早いかも…」

「どうでもいいから早く門を開けるぞ!!」

「分かった、手伝う奴はいないのか!」


 多少疑われたものの、助かるためなら人の指示に従うのが良いと踏んだのだろう。これで少しでも避難が早くなればいいのだが…

 門が空き始めたところで宿屋の方から爆発が起こる。少し急いだ方がいいな。俺も門を開ける側に回ろう。


「あ、さっきの奴だ!」

「話は後だ、今はこの門を開け、避難を最優先とする!」


 俺が力を入れると大門はギギギギギ…と音を立てながら開き始める。それを見て周囲に居た男が門を押す。


「よし、開いたぞ!」

「これで町から出られる!」

「門の外に出たらまっすぐ行かないで横にずれるんだ!」


 よし、町の人たちだけでも指示を出しあっている。これなら良いだろう。






 そして門の前に居た人たちのほとんどがいなくなった後、


「あなたー!どこに居るのー!?」

「うちの子供を見ませんでしたか!?」


 と多数の人が身内を探している。これは町の中に戻って生きている人を探す必要があるな。


 門をくぐり、町の中に戻る。そこは初日に見た賑やかさと美しい町並みはすでになく、多数の煙と燃える建物、崩れ落ちた建物、ところどころには逃げ遅れたのであろう、人が倒れていたりする。

 俺はそんな町の中を走り回り、生存者がいないか探して回る。

 …見つけた。10人ほどの人が走って門の方へ行く、中には子供も混じっているようだ。だが、それを追いかける黒いフードと全身を隠した三人ほどの人。その手に持っているのは、


「あれは…銃か!?」


 すっかり忘れていた、ここに来るまでに、銃弾らしきもので殺された人たちがいた、すでに崩壊した町のことを。あの時の犯人はこいつらか。いや、こんな少人数だとは思えない。大多数でこの街に攻撃を仕掛けたと見るべきだろう。だが、まずは目の前の逃げる人たちを助けるべきだろう。

 俺は黒い奴らの前に立ちふさがる。


「なんだ、てめぇ。」

「貴様らこそ何者だ。」

「おい、構うな、殺せ!」


 そして、現実の軍隊などと比べるとお粗末な構え方で銃をこちらに向ける。


「気を付けてください!あれはとんでもない速さで何かを飛ばしてくる武器です!」


 後ろからさっきまで逃げていたであろう男性が叫ぶ。


「大丈夫だ、お前らは早く逃げろ。」

「ですが、」

「早く!」

「は、はい!」


 後ろを見て、逃げたのを確認してから前に向き直る。


「待っていたとは、随分律儀な奴らだな。」

「は、これでも喰らえ!」


 ダダダダダ、と弾幕が俺に迫るが、


「《シールド》。」

「何、展開が早い!?」

「それになんて硬さだ!」

「俺は急いでいるんだ、いつまでもお前らに付き合っている筋合いはない。」


 と、後ろに回り込み、二人の後頭部を魔法で撃ちぬく。そして、残った一人に、


「答えろ、何が目的だ。」

「そんなもん、答えるわけねえだろ!この馬鹿が!」

「そうか。」


 答えないのなら、用は無い。こいつの頭も撃ちぬく。倒れ様に見たが、こいつらは人間ではないようだ。皮膚は青く、茶色の斑点が大量にあった。


「だいぶ時間を食ったな。急がないと。」


 と呟き、インベントリから、今朝創った上着を取り出し、鎧を外す。着るのは速度上昇をつけた青いマント。それに加えて


「《アクセル》、《アクセルブースト》、」


 自身の速さを上げて行く。こうしなければ町全体を回るのは不可能だろう。


「《ドライブ》、《ダブルドライブ》、《トリプルドライブ》。」


 この辺で体が嫌な音を立て始めたのでこれ以上の加速は止めておく。そして、走りだした俺のスピードは音速には及ばないが風よりも早いだろう。これなら町全体を回るのに30分もかからない。

 少し走り、瓦礫の奥に人が固まっているのを見つけた。瓦礫が邪魔で逃げられないのだろう、と判断した時にはもう体では目の前の障害物を切り裂いていた。


「早く逃げろ、またいつ爆発が起きるかわからん。」


 瓦礫がいきなり無くなったことにより呆けている人たちにそれだけ伝えて走りだす。その直前にハイ、と返事が聞こえたので、気持ちを持ち直せたのがわかる。


 その後も、時々居る黒い集団を切り裂きながら町の人の救助に当たる。最終的に終わったのは20分後くらいで、住民は一か所に集まっているようだ。

 その中の、一人、最初に助けた人を見つけたので気になることを質問してみる。


「あいつらがどこから沸いたのかわかるか?」

「いえ、わかりません。」


 なるほど、いきなり出てきたのか、爆発にまぎれて出てきたか、はたまた町に潜んでいたのだろう。


「ただ、町の中央のほうに行くのを見ました。」

「町の中央?何故だ?」

「詳しくは分かりませんが、町の中央、王城の地下には大きな力を持った宝石があるそうなのです。」

「宝石?どんな?」

「見たことは無いのでどういう色や形をしているのかはわかりませんが、その宝石のおかげでこの街には魔物が来ないそうなのです。」

「つまりそれを壊すために来たとしたら…」

「あ…」

「拙いな、この都市が落ちればこの国が崩壊する可能性が高い。」

「は、早く衛兵にこのことを伝えないと!」

「いや、いい。」

「どうしてですか!?」

「話が漏れると混乱が起こるだけだ。」

「た、確かに…」

「俺が―」

「俺が一人で行ってくる、なんて言わないよね、プランク。」

「エレナか。」

「まったく、探したんだよ?」

「そうか、まあいい。俺は行くからここで待っていろ。」

「…何でそうやって何でも一人でやろうとするの?」

「…」

「たまには私に頼ってくれたって良いじゃない。」

「どうした、いきなり。」

「だって、プランクは一人にすると絶対に怪我して帰ってくるんだもん。あのときだって足が…」

「それでも俺は一人で行く。」

「やだ、私もついていく!」

「駄目だ。」

「どうして!?」

「…」

「ちょっと、待って―」

「《スリープ》。」

「あ、待って…よ、わた…しも…」

「そいつを頼んだ。」

「え、あ、はい。いいんですか?」

「何がだ?」

「だってとても心配していましたし、って、この子魔族ですか?羽がありますし。」

「そこは黙っててくれ。」

「…では一つだけ言わせてください。」

「なんだ?」

「魔族が人間を信用、もしくは人間になつくことは、子供のころから面倒を見ていたとしてもほぼありません。」

「…わかった。」


 そして俺は再び門をくぐり、町の中央へ向かって疾走する。






「ここが中央部か。」


 まっすぐ走るだけなら時間はかからない。3分ほどで着いた中央部では重装備の兵士たちと黒い奴らが戦っていたが、銃が予想以上に対応しづらいのだろう。防御だけで手一杯のようだ。

 そんな兵士たちの前に立ち、


「何だ、誰だお前は!」

「答える義務は無い、が少なくとも味方であるということだけ言っておこう。」

「助太刀してくれるのなら、助かる。」


 いきなり現れた俺に驚く兵士たちと、戸惑ってしまい攻撃が止む敵。その数は中央部以外にいた人数よりもはるかに多い。戦線は南の方が崩壊しているらしく、城への侵入もじわじわと許してしまっているようだ。急がなければ、取り返しのつかないことになってしまう。


「《アクセルブースト》。」


 敵を倒すだけなら大した加速は必要ない。魔法を一つだけ唱えて鍛冶屋で打った剣を取り出す。その切れ味は落ちること無く、敵を切り裂くたびに幻想的な軌跡を残す。俺の剣の速さは魔法によって加速しているので、その剣舞は青い光を振りまく。

 敵が減れば相手の前線に突っ込み、走りぬけながら剣を振るう。光が舞えば敵は減る。それをしばらく続け、敵は数を減らしていく。しかし、


「ふふ…ふ、残念だったな!!リーダーはすでに、城の中に行った!!もうすぐ《守りの宝玉》も砕かれる!!そうすれば俺達の力が十分に、」


 そこまで言ったところで敵の首を落とす。そして近くの兵士に


「《守りの宝玉》とやらはどこにある!?」

「し、城の地下、王の間の玉座の下の階段を降りたところに!」

「わかった!この戦線を崩すな!」

「りょ、了解であります!!」


 そう言い残し、駆け出す。走りながらさらに加速の魔法をかけ始める。

  加速(アクセル) 加速(アクセル) 加速(アクセル) 加速(アクセル) 加速(アクセル) 加速(アクセル) 加速(アクセル) 加速(アクセル) 加速(アクセル) 加速(アクセル) 加速(アクセル)

 これだけでも相当な速さが出ているだろう。だがこの程度の速さでは間に合わない!


「《アクセルブースト》、《ドライブ》、《ダブルドライブ》…くぅっ」


 この時点で俺の体からは血が噴き出し、インナーは朱に染まっている。はいているジーパンにも血が染み始めている。だがまだ王の間どころか庭を走り抜けている段階だ。


「《トリプルドライブ》…《フォルスドライブ》…《フルドライブ》。」


 周りの景色が後ろに流れる。空気の抵抗が重い、まるで川の流れに逆らいながら進んでいくかのようだ。庭の敵を切り裂きながら突き進み、王城へ入る。廊下を駆け抜け、立ちふさがる敵を引き裂く、ヒュッ、ヒュン、と風を切る音が聞こえる。まだだ、もっと速く!!


「《オーバードライブ》!!」


 この瞬間に音速を超えたのだろう。耳を劈く高音が鳴る。目の前の敵は斬る必要もなく、音速によって起きる衝撃波によってバラバラになる。だが、抜き身の剣は青い軌跡を連れてくる。走り去った廊下、階段の壁には切り裂いたような跡が残る。そして、


「《レジスト・エアロシールド》!!」


 目の前に薄くはあるが半透明の風を完全に防ぐ盾を創る。この盾によって空気の抵抗が消えた。それと同時に走る廊下の色は赤と青に変わる。とてつもない速さで見えるのは赤色と青色だけというのは本当だったのか。耳を劈く音はもう聞こえない。それと同時、俺の脚の感覚も麻痺しているが、進んでいるのだからそこにあるのだろう。最奥の階段を上り、扉を開ける正面にあったであろう玉座は少し横にずれ隠し階段を露わにしている。


 最後の階段を駆け下りる。狭い通路には鉄がぶつかる音が聞こえる。所々に何か鉄のパーツが落ちているが気にしている暇は無い。


「見つけた、」


 そこに居たのは一人の黒い鎧を着たリーダーと呼ばれているであろう魔物、同じく一人、王直属なのだろうかという騎士と、その後ろに王らしき豪華な服を着た人物、両隣りにいるのは王妃を王女だろう。そしてそのさらに後ろ。飾り気の少ない、シンプルな小さい、それでいて神秘的なものを感じさせる台座と瑠璃色に輝く宝石。

 騎士が剣を弾かれ、振り下ろされる瞬間、


「オォォォォォォォォオオオオオオオオラアアアアァァァ!!!」


 雄たけびと共に黒い鎧の後頭部に拳を叩きつける。振りおろそうとして前に体重をかけていたのだろう。そのまま頭を上半身を石畳の床にたたきつけ、跳ね返りの反動で天井にぶつかり、落ちてくる。リーダーらしき黒鎧はピクリとも動かないまま、騎士に首をはねられた。


「間に、あった…か。」


 その場に腰を落とし座り込む。すると、


「何者だ、貴様。」


 と騎士に問われる。

 それに対して俺は一言。


「唯の、冒険者です。」

「何しに来たのじゃ?」


 と、俺答えた後に問いかけるのは王らしき人物。


「色々情報を集めて、突然の襲撃の狙いはそこにある、《守りの宝玉》ではないか、とい結論に至りここに来ました。」

「つまり、味方と言うことでいいんじゃな?」

「はい。」


 そこまで話したところで隣に居た王女が、


「ありがとうね、小さな英雄さん。」


 と言われたところで自分の状態に気付く。

 魔力切れで元の姿に戻っちゃったよ。


「ああ、せっかく変装してたのに。」

「変装?どんな?」

「こんな感じの奴。」


 と一瞬だけさっきまでの姿に戻る。


「変装魔法か面白い冒険者もいるもんじゃのう。」

「そうですね、あなた。」


 フフフと笑い会う王と王妃に、俺の魔法に驚いてキョトンとしている王女。年は10~11くらいだろう。


「それでは、私は外に出ます。先ほどまでのご無礼、お許しください。」

「構わんよ、命を救ってもらったのだからの。」

「では失礼します。《ワープ》。」






 門の外に戻って来れたようだ。日がもう落ち始めている。爆発があったのは朝だったのに。俺はエレナとさっきの男性を探す。どの辺に…おっといたいた。エレナはもう起きているようだ。


「ああ、疲れた。」

「えっと、誰?」


 普通に近づいていく俺にエレナは俺が誰かわからないようだ。


「この装備で分からないか?」

「それは、朝にプランクが作ってた…えっと、もしかして、プランク?」

「正解。」


 と言った瞬間エレナは俺に抱きついてきた。この状態の俺の身長はエレナと大して変わらないので後ろに倒れてしまう。


「よかった、戻ってきてくれて…良かった、バカ…」

「…すまなかった。」

「やだ、許さない。」

「…どうしたら許してくれる?」

「これからもずっと一緒に居る。」

「約束はできないかな。でも、」

「でも?」

「出来るだけ近くに居てあげるよ。」

「…ありがと。」











 ―後日俺は王城に招かれて、王様に報酬として中央地区に拠点と、一枚のカードを貰った。このカードはこの国の中なら町に入るための税金などを無くしてくれるものなのだそうで。

 それと、町の住民からは、ものすごい速さで、しかも青い上着を着て町の中を走り回ったせいで《青き疾風》と呼ばれるようになりましたとさ。正直すごい恥ずかしい。



 復興作業は今日も続いているが、それでも守れたものは大きいと思う。青い空を見上げ、頬に風を感じながらそんなことを考える俺だった。

さて、第二部完、と言ったところでしょうか。


誠に勝手で申し訳ありませんが、この小説の投稿ペースの維持が難しくなってきてしまったため、死ぬ直(以下略 は一旦お休みさせていただきます。


かといってここまで読んでくださった皆様を退屈させてしまうのも個人的にはとても心苦しいため、ゆっくりではありますが別の作品も書いてみようかと思っています。機会があればそちらの方もどうぞ宜しくお願いします。














え?宣伝乙?いや、そんなつもりは…、HAHAHA…。

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