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装備

「…」

「…やりすぎだったか?」

「そうだね。予想外とはいえあれは…ねぇ?」

「あの冒険者には後々何か有利に事が運ぶようにしておこうか。」

「いや、もうすこし別の何かのほうが良いんじゃないか?」

「むぅ…」

「任せろと言ったからお前に任せたんだが、これじゃあなぁ。」

「むぅ…」

「まぁ次何かするときは俺がやるよ。」

「すまない。」

「いやー、誰だってミス位するさ、うん。」


~??会話記録~











「で、あの冒険者を監視しておこう、ってわけですか?」

「ああ、こういうことが一回だけで収まるとは思えん。」


 一見、小さめの部屋に丸テーブルと椅子が4つあるだけの部屋に見えるこの部屋。ここはギルドの中でも地位を持っていないと入れない部屋である。ここではかなりの回数重要な会議などが行われるため、強力な防音結界が張ってある。そんな部屋に居る2人の男女。

 男のほうは今でも現役だと名乗れるほどの雰囲気を出しているが、実際はすでに引退している中年の元上級冒険者である。現在はこの街のギルドを管理している一人である。

 そしてその向かい側に座っている女性は現在でもまだ冒険者活動を続けている。その容姿は美しいの一言に尽きるだろう。そしてその実力はもちろん上位に入る。取ろうと思えば簡単にSSSランクくらいなら取れるが、彼女は現在Sランクにとどめている。それと言うのもSSSあたりになると色々な地方に引っ張り出されてしまうため、ギルドの管理が行えないのだ。また、彼女は各地のギルドを回っていたりもするが、そこは触れないでおこう。


「確かに良い判断だとは思いますが、たかが一回事件を起こしただけで監視役をつけるのはどうでしょう?もしかしたらあの冒険者も被害者かもしれませんし、他の何かが事件を引き起こした可能性もあります。」

「それもまた有り得る、だが逆にあの者が事件を引き起こした犯人だった場合を考えてみると良い。そうなれば町中に何かしらの罠を張って一気にこの辺を崩壊させる可能性もある。」

「だとしたら、その行動をとる前にあんな目立つような行動を取る意味が無いのでは?目立ってしまってはもちろん監視のめがつくことも分かっているでしょうし、そもそもあの方はFランクなのですよ?それほどの力があるとも思えません。」

「わざと目立った可能性が否定出来るわけではないだろう。目を引き、監視がいることを承知で事を起こす。中にはこういうことをする奴が居てもおかしくは無い。それに、ここだけの話だが…」


 と男は話す声を小さくする。防音結界が張ってあるので大丈夫だろうが、それでも盗聴されないとは限らないということだろう。


「あの男の泊まっている宿に魔族がいると言う情報を密偵が持ち込んできた。」

「何ですって?じゃあ本当に…」

「そういうことが起きないとも限らない。一度その魔族も連れてこっちに来てもらうことにするか、敵意があるようならば…」

「排除する、と。」

「ああ。それが最善だろう。」

「まぁ監視をつけるのは構いませんが、それでも本人に影響が出ない範囲でお願いしますよ?」

「もちろんだ。」


 それを言い終わると男は席を立つ。そして、


「ここで話したことは何一つ明かさないようにな。」


 と言い残し、部屋から出て行った。






 買い物を終え、宿に戻るときにふと防具やの鎧やら兜やらが目に入った。


「そういえばちゃんとした防御力のある防具を何一つとして創っていないな。」


 もしかしたらそれが原因でこの怪我をしたのかもしれないし、一度くらい真面目に何かを創った方がいいかもしれない。あと、鎧を見るまで自分が義足だった事を忘れていた。なじみ具合がとても良いのだ。だが、義足である以上、さっきまで気にしてなかったがガッシャガッシャと鉄の音がして結構うるさい。宿に戻ったらとっとと治してしまおう。後はもう一度ローブを創りなおす必要があるだろう。いきなり出てきたというドラゴン(聞いた話だが)の攻撃によってボロボロになってしまい、使えなくなってしまったので処分してしまった。ついでに中に来ていた服もボロボロだったのでギルドで安い布の服を買って着ている。この前は見た目重視で創ったため高い属性耐性は偶然付いていたものの、防御力が無かったっぽい。よって、炎の特性の火傷とかは確かにとんでもない火傷やらを負ったがそれで済んでいる。だがこれが強力な剣で切られでもしたらあっという間に首と胴体がおさらばだろう。まぁ何にしてもこの辺の創る作業は余り人に見られたくは無いので、依頼を受けて長い時間かかるようであれば製作をすることにしよう。


「おっと、もう着いていたのか。」


 顔を上げるとすでに宿屋の前まで来ていた。考え事をしていたせいで歩いている時間を忘れていたようだ。宿屋に入り、宿主に一言伝えて部屋に戻る。


「今戻った。」

「あ、やっと戻ってきた。」


 暇そうにベッドに寝転がっていたエレナだったが、俺が部屋に戻ってきたのを確認するとこっちにパタパタと足音を立てて近づいてくる。


「色々あってな。いくつかやらないといけないことができた。」

「この足もそうなの?」


 流石に気づくか。イメージとしては鉄だから結構目立つんだよな。日光が当たると反射しまくるだろうし。


「それもある。後は防具とかをどうにかしないと強力な敵が出てきたときにいらん怪我をする。」


 そういって、足を治療、と言うよりは再生させるため義足を外す。ついでに背中の火傷もどうにかしないとひりひりして痛い。


「足無くなってるよ?大丈夫なの?」

「どうということはない。すぐに治せる。」


 俺が足を治療しようとすると、エレナが不安そうな声を出す。正直色々面倒だな。


「《ハイ・ヒール》。」


 魔法を唱えると、無くなっている太腿あたりを淡い緑色の光が包む。そしてものすごくゆっくりとではあるが、確実に足が再生していく。

 ハイ・ヒールは中級の治癒魔法だが、聞いた話によると魔力が高ければ古傷や部位欠損も治せるらしいので試してみる。と言うか上級以上になると魔法陣を重ねないといけないため、余計にMPが必要になってくる。ともかく治ってくれるみたいでよかった。






「すっかり治っちゃったね。」


 これで背中の火傷も治った。治療が終わるとエレナがまずその一言を挙げる。と言うかこんな治療見てても暇だっただろうに。


「治ったのはこちらとしても助かったな。これで動きが鈍るようなことは無くなるだろう。」

「気にするのそこなんだ。」

「どういうことだ?」

「いや、気にしてるの見た目のほうかなーって思っただけ。」

「動きが鈍かったら俺一人ならともかく、お前を連れて逃げれないだろう。」

「私だって一人で大丈夫だし。」

「ほざけ、小童。」

「むー!」


 知能的にいえば本を読み始めたあたりから結構良くなってきているが、この辺は意地を張りたい年頃らしい。子供だから仕方が無いのだが。いざという時は有無を言わさず無理やりにでも抱えて逃げるけどな。


「さて、次だな。」

「治療は終わったよ?」

「そうだな、だから次は怪我をしないために防具を創るつもりだ。」

「防具?私のはあるよ?」

「俺の防具に決まってるだろう。俺が来てるこれはもうボロボロだし、素材が布だから物理攻撃に対する防御力が不安だ。」

「ふーん。」

「ついでに言うとお前のそれも魔法とかは大丈夫だろうが、剣で斬られたりすれば無事ではすまないだろう。」

「そうなの?」

「ああ。だから次は動きに支障が出ない重さの鎧を創る。」

「俺は作業に入るから適当に本でも読んでろ。」

「はーい。」


 よし、これでエレナに見られずに済みそうだ。あいつは一度本を読み始めると回りが見えなくなるからな。外では気をつけてもらわないと困るが。






 …約40分が経ったが創り終わったものはどれも動きに支障が出てきてしまうな。さて、この出来そこない、というか使うには苦しい20の鎧たちはどうしたものか。売るのが一番手っ取り早いだろうがもう日が傾き始めている。まあ急げば大丈夫だろう。


「エレナ、少し用事が出来た。すぐに戻ってくるからおとなしく留守番をしてろよ。」

「うん。」


 本に夢中になっているせいで生返事な感じだが大丈夫だろうとっとと行ってくるか。


「いらっしゃい。ここは防具の店だよ。」

「そうか、いきなりですまないが、この余った鎧を買い取ってほしい。」

「ん?どれどれ…ほう、これはなかなか良い出来の鎧だね。自作かい?」

「一応そうなる。出来ればそれなりの防御力があって出来るだけ軽い鎧が欲しいのだが。」

「なるほどね。本来はインナーの上に着るようなものだけど、鎖帷子なんてどうだい?」

「見せてもらえるか?」

「ああ、これだよ。」


 鎖帷子か…やはり重いな。出来ればもっと軽いものがいいのだが。


「もっと軽いものは無いか?」

「これ以上軽いものだとレザーアーマーになるね。」

「そうか、ならそれでいい。」

「良いのかい?少し切れ味のいい剣で切られただけで簡単に傷がつくくらいに防御力は無いんだけど。」

「構わん。自分で改造してみる。」

「そうかい。じゃあそちらさん鎧の売却金額から引いておくよ。」

「わかった。」

「それと、これがレザーアーマーと金貨11枚、銀貨7枚ね。」

「確かに受け取った。では失礼する。」


 予定とは少し違ったが、元がこれだけ軽ければ何とかなるだろう。後は俺が自分で軽くて頑丈な金属を作って張り付ければいいだろう。なぜその金属で鎧を創らなかったか、だって?そんなもの俺にそれだけの技量が無いからだ。






 さて、部屋に戻って作業を再開。すでにあたりは暗くなり始めているが、気にしない。エレナはまだ本読んでるからな。まずは金属を作ってしまおう。それから、レザーアーマーの肩部分を解体し、そこにはめ込む。後は肩の内側、関節部を同じ金属の板に変え、胸のところに同じ金属で創った鎖を編む。それから中のレザーを取り出し、脇腹を強化。余った部分は腹の部分の補強に使った。多少重みは増したがこれを着ても結構身軽に動ける。完成だ。

 ちょうどエレナも読み終わったようで、一回に降り、夕食を食べてからこの日は眠りについた。

と言う訳で主人公が鎧を装備。その上にはもちろんローブを着ているわけですが。



全話の魔法の表記を変更しました。

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