無謀?
ランクのみで敵の強さを計ることは難しいだろう。
~記述第6番~
昼なのに酒を飲み騒ぐ。それは男も女も関係ない。その男女が着ている物は普通の布で出来たような服ではなく、ある者は全身を包む金属の鎧。それとは少し違う、腕と胸を守るプレート、またある者は多少動きにくそうではあるが、引きずりそうなほど長い裾のマントやローブ。そう、ここはイチヤの冒険者ギルドである。
俺はそんな賑わいを見せるギルドに登録を兼ねてあいさつに来たのだ。なお、カードさえあれば見せるだけで他のギルドでもすぐに登録ができるのが、この大陸で広がっているギルドの良いところだろう。
それにしても、こんな時間から酒飲んでるのか、俺だったら無理だな。そもそも未成年だから飲まないけど。そんなことを考えつつ、ギルドの受け付けに行く。
ギルドの受付嬢、人気のある仕事ではあるが、中にはしつこく絡んでくる冒険者も居るのでそれを受け流すくらいには話しのスキルも必要となる。そんな受付嬢の中の一人、ホーリ。正しい名前はホゥリではあるが、大した差も無いので、皆はもちろん、自分で名乗るときもホーリと言っている。問題としてはふざけてホルィだのハーリーだのと呼ばれることだろう。しかし、そこまで気にしないがホゥリである。だが、ランクの低い冒険者には彼女の毒舌が炸裂することがある。
「ふぅ。ようやく種類の整理が終わったわ。」
「あら、なかなか早いのね。御苦労さま。」
そう声をかけてくるのは先輩のノーレ。彼女はホゥリがこのギルドに務める五年は前に来ていたため、冒険者の顔見知りも多く、なかなかの評判があるベテランだ。
「先輩、お疲れ様です。」
「ええ、最近は依頼も増えてきてるのよね。原因は何者かの魔力の過剰な放出とか言われているけど、そんな大きな魔力持った人なんてこのあたりには最近居ないわよ。」
「そうですね。あ、受付に人が来ているようなので、私出ますね。」
「分かったわ。」
受付に来たのはまだ若い、恐らく成人してからまだ一年経っていないような少年だった。その格好は特に変わったところは無いが、どちらかと言えば、魔法使い寄りの装備だろうか。なかなか綺麗な金髪を持っている。
「すまない、冒険者登録の受け付けはここでいいか?」
「ええ、間違いありません。」
こんなに若い時から冒険者を始めるのって結構事情がありそうね。少し警戒するべきかしら。
「それでは、カードの提示、新規の方なら書類を用意してきますので…」
「ああ、カードならここにある。」
「そうでしたか、失礼しました。…プランク様ですね、それでは名簿に登録しておきます。」
なんだ、Fランクなのね、まだまだひよっこと言ったところかしら。それにしては履歴のほうに、自分より高いランクの依頼を受けた記録が残ってるわね。まあ、同行者が強かったのでしょう。ゆっくりしたいし、そろそろ流そうかな…。
「そうだ、昇級の為の試験を受けたいんだが、用意はできるか?」
「確認をとりますので、少々お待ちを。」
「わかった。」
Fランクのくせに余り仕事増やさないでほしいわね。こういうのって結構確認面倒なんだから。
「先輩。」
「ん?どうしたの?」
「昇級希望の方が来ているのですが、今昇級モンスターを扱える人っていますか?」
「あー…今はCランク以上の魔物しか扱えない魔物使いしか居ないわね…。昇級希望の人って、ランクは?」
「Fランクです。」
「じゃあダメかな。一応吹っかけてみて、多分そうしたらおとなしく帰るでしょう。」
「了承しました。」
わざわざ確認なんかしなくてもFランク何だから受けるわけないでしょ。面倒だなぁ…。
「えー、確認をしたところ、現在Cランク以上の昇級しか、」
「それでいい。」
「え?」
「Cランクで問題無い。」
…ああ、こういうの馬鹿って言うのね。いや、命知らずって言ったほうがいいのかしら。Cランクは一匹でも小さな町一つくらいなら十分に破壊出来るのに。とりあえず、自分の実力と魔物の強さが理解できていないのね。
「Cランクになりますと、危険が伴いますが、よろしいですか?」
「ああ。」
私はもう警告したからどうなっても自己責任ね。たまにこういう馬鹿が居るからこの仕事って面倒なのよね。
「では、少々お待ちください。」
「先輩、Cランク以上になるって言ったんですが、それでも良いって言ってるんですが…。」
「そう。それならそれで良いじゃない。痛い目見るのはそのFランクの人なんだし。」
「それもそうですが…。」
「心配なら何をしてでも止めさせればいいのよ。」
「まあ、一度痛い目見たほうが良いかもしれないですね。じゃあ魔物使いの方に声かけてきます。」
「ええ、いってらっしゃい。」
なんか受付の奥に行くときに哀れむような目で見られたような気がしたが気のせいだろう。まあ、Cランクって言っても俺からすれば大したこと無いかな。
「準備ができましたので、こちらへどうぞ、昇級モンスターはワイバーンの成体になります。」
「分かった。」
確かワイバーンは空を飛ぶ竜の一種で広い範囲で活動して前いた場所らへんだとボスモンスターとして扱われてた気がする。俺にとって厄介なのは空飛んでるってところかな。俺も空を飛ぼうと色々やってるが、まだ10分程度しか飛んでられないんだよな。まぁここは色々合成魔法とか創作魔法とか試してみるかな。…創作魔法は固有魔法とも言われてた気がするが、その辺はどうでもいいだろう。
連れて行かれた場所は大会やった時の闘技場より一回り小さいくらいの広さだった。まあそれでも十分広いんだけどさ。周りにはワイバーンが変な所に飛んでいかないように結界が張ってあるな。
「それでは、お気をつけて。」
「ああ。」
なんかこの受付嬢俺のことやけに見下してる気がする。後で色々言ってやるか?でもそれで問題になっても面倒なんだよな。そのうち気にならなくなるだろ。今は戦闘に集中させて貰うか。
「GUOOOOOOOOO!!!」
「ん、出てきたか。やっぱり空は飛んでるのか。」
出てきた敵を観察する。体長は大体10メートルはありそうだ。その体は黒い鱗に包まれて2枚の大きな翼を羽ばたかせ、悠々と飛んでいる。良い迫力だ。まだこちらを敵とは認識していないのか、見向きもしない。軽く威嚇射撃と行こうじゃないか。
「《ウィンドカッター》。」
手を上にかざし、魔法を唱える。緑色の魔法陣からは薄めの刃が数枚飛んでいく。熟練度が高ければ彼味とか飛んでくスピードとか色々変わるんだけどな。
飛んで行った風の刃はワイバーンに当たらず、そのまま消失する。流石に当たるとは思ってなかったよ?うん。…ターゲットがこちらに向いたのを確認して、相手が射程圏内まで降りてくるのを待つ。
「GOAAAAAAAAAA!!!」
おっと、射程圏内に入ったのはあっちも同じか。竜らしく、火球を飛ばしてくる。一発一発が初級の上ランク程度の大きさと威力を持っているようだ。火球が当たった地面が黒く焦げている。だが、狙いは粗く、俺に当たるようなコースで飛んでくるものはない。
「《オクタグラム》。《アイスジャベリン》。」
8つの魔法陣から速さの高い槍を撃てば流石に当たるだろ。発射速度は12秒で一発くらいか。
数のほうは問題ないが、発射速度が遅いせいで結構避けられる。ワイバーンは避けるたびに俺の方へと接近してくるが、大した問題でもない。氷槍を維持したまま、次の魔法の詠唱に入る。
「《ヘクサグラム》。《ラピッドアイス》。」
ジャベリンの間を埋めるように氷の弾、それも速さを重視したものを撃ち始める。その威力はワイバーンを貫く、とまではいかないが、ダメージは入るようで、再び距離を取り始めた。火球を撃ってこないところを見るに、そこまで連射は利かないのだろう。だが、連射の代わりに、ひときわ大きな物を撃ってくる。それは結構な熱量を持っているらしく、俺の魔法が次々に消されていく。
「さて、どうするか…」
高いところから撃ってきたため、着弾まで時間はあるが、余りゆっくりしてられないだろう。
「……い」
「ん?」
「はや……さい」
何やらさっきの受付嬢が声を上げながら近づいてくる。何を言っているかよく聞き取れないな。
「早く逃げてください!死にますよ!」
ああ、俺に逃げろっていってたのね。て言うか俺に声聞こえる位置まで来てたら範囲内でしょう。
おっと、よそ見をしていたせいで結構近くまで火球が来てるな。まだそれなりに離れているが、結構熱い。球の半径は4~5メートルくらいかな。これだと確実に爆発の範囲も含めて受付嬢も巻き込まれるな。
仕方が無いので俺は受付嬢の前まで移動する。
「何で逃げないんですか!?」
「いや、よく聞こえなかったし、お前も巻き込まれるだろ。」
「ああもう、これだから魔物の脅威も知らないFランクは!」
「それが本音か。」
「あなたみたいなのに少しでも気を使った私が馬鹿だったわ!死んだら恨んでやる!」
「はいはい、うるさいな。」
もう火球は目の前まで迫っている。この距離で5分も居たら肌が真っ黒になるな。
「ちょっと、あなた、何を…」
一歩前に出て迫りに迫った火球を見据える。そして―――
さて、この後主人公はこの攻撃をどうやってかわすか?
3択-ひとつだけ選びなさい
1、ハンサムな主人公は突如反撃のアイデアがひらめく。
2、後ろの受付嬢が助けてくれる。
3、かわせない。現実は非情である。
はい。完全に遊びました。ごめんなさい。




