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才能

 土台なくして才能はあらず、努力なくして芽は出ない。土台を生かす効率の良さが才能で、目を出すための栄養が努力なのではないだろうか。誰にでも才能はある。しかし、生かす方法が分からないから自分には向いていないと諦めてしまうのではないだろうか。

 ~記述 2990番~











「そうだ、そのまま…少し乱れているぞ。」

「ああもう!分かったから少し静かにしてよ!」


 今現在、俺はエレナに魔力の練り方を教えているのである。宿を借りて一晩過ごし、朝食を食べたところでエレナが魔法を教えてくれと頼んできたのである。もともとそのつもりだったから困ることは何もないが。

 俺が今エレナにやらせているのは、集中力を高め、魔力を練り上げさせているのだ。魔力はわざわざ練らなくても魔法を使うことはできるが、練った方が安定して出せる。俺はその辺全部すっ飛ばしてるけど。しかし、ダメ出ししてはいるものの、普通の冒険者とかと比べると上達が早い。大会の時の冒険者たちはピンチになると魔法を暴発させたりしていたからな。正直緊急時に一人で戦えと言われればまともに戦えないだろう。

 もちろん攻撃魔法よりは防御魔法のほうが覚えやすいので、今俺が教えようとしているのは防御魔法だが、それが破られダメージを受けることもあるだろう。そのため覚えが早ければ回復魔法も教えるつもりだ。


「だったら早く集中するんだな。」

「むぅ…。」


 こっちを見て頬を膨らませているがスルーだ。それにしてもなー俺は一週間くらいでようやくこのくらいまで安定するようになったのになー。一時間ちょいでやられたらなー。流石にへこむわー。やっぱり魔族のほうが魔法とか魔力の扱いに長けてるのかな。この辺は大人の魔族じゃないと分からないかな。しかし妬ましい。まあ俺寿命ないから普通の人より最終的には強くなるからいいけどね。


「…そこまででいいだろう。」

「え?もう?」

「ああ。実際に魔法使った方が良いだろう。慣れというものもある。」


 この場合の慣れ、とは魔法を繰り返し使うことによる魔法の組み立ての速さや、質の向上のことを言う。大魔法や儀式魔法になると詠唱に結構な時間を要するが、慣れれば数秒で使うこともできなくはない。初級の魔法は詠唱が短いとは言え、最初は連射はできない。しかし、上級者の大半が初級ならばマシンガンのように連射してくることもある。だが、それほどまでに何回も魔法を使うかと言うと、そうでもないのだ。

 なぜなら、ある程度のラインまで行くと成長が一気に遅くなるからだ。その壁に当たった奴は大体他の魔法に手を出すか、何を勘違いしたのか、自分にはもう才能が残っていないとか言い出して使うのをやめるのだそうだ。

 俺は魔法の特性上、慣れとかその辺もいじれるから何の問題もない。やらないのはただ単に初めからチート使って早くても詰らないから、という理由でもある。と言うか、今修行とか必要なのって俺のような気がしてきた。あれから使ってないけど、魔法で剣動かしたりとかって集中力鍛えるには結構良い手段だと思うんだよね。あとインベントリの中に大量に作った剣とか盾とか余ってるし。

 今はまだ使えないだろうけど、集中の精度が上がれば魔法操作で槍とか、媒体使った魔法とか、弓とか使えそうだし。…それで無双できたらカッコ良いよな。


「プランク、どうしたの?ボーッとして。」

「ん、済まない色々考え事をだな。」

「それよりも早く魔法教えてよ。」

「そうだな。俺が教えるのは防御魔法だから、魔力の膜で自分を囲うような感じでやってみろ。…手本を見せたほうがいいか。《バリア》。」


 魔法を唱えると俺の周りに薄い透明な膜ができる。物理で叩いたら速攻で壊れそうだが、魔法や遠距離からの攻撃ならそれほどでもない。


「わー…。」

「いや、すごそうに見てるけど、お前にもやってもらうからな?」

「難しそう…。」

「さっき俺が言ったようにやってみろ。」


 とは言っても、結構いい加減な教え方だからあまり成功できるとは思わないが。


「えーっと、こうやって…《バリア》!」

「…えっ」


 …出来ちゃったよこいつ。一体俺がこの辺までたどり着いた苦労は何だったんだよ。とはいえ、確かにエレナの周りを魔力が囲ってはいるが所々薄く、ムラが多い。あと形も地味に背中側がへこんでいる。


「…できてる?」

「ああ。」

「やったー!」

「でもこれは魔法を防ぐ防御魔法だからな。」

「じゃあ物理攻撃はどうやって防ぐの?」

「お前には見せたほうが早いだろう。《シールド》。」

「わー…。」

「さて、この場合の魔力はどう動いているか、わかるか?」

「えーっと…、わかんない。」

「そうか。まあやってみろ。」

「…むぅー、」


 どうやら説明しなかったから魔力を形作るのが難しいらしく、少し時間がかかっているようだ。だが、


「《シールド》!」


 まあ出来るよな。あのいい加減な説明でバリアができるんだもん。なんか羨ましくなってきた。だが、エレナのシールドは俺のより薄く、やはり壊れやすそうではある。しかし上達が早いのに変わりはない。俺が限界を感じたあたりで才能を引き上げるか。まあ魔法の使い方が違うから限界がどう来るかわからないが。

 もちろんレベルを上げるのでも魔法の強さは上がるが、今の俺では経験値を上げるアイテムとかを創ることはできないらしい。上級が使えるようになったら創れるようになるかな。


「合格だ。後は暇な時間に何度も繰り返して慣らしておけ。」

「うん!」


 魔法がうまく発動で来たからか、えらく上機嫌である。気楽なものだ。俺もこのくらい気楽ならもっと楽しい高校生活を…っと、いまさら何言ったって帰ってこない時間は仕方がないな。


「じゃあ、俺は消耗品を買い足してくる。外に出るなよ、まあ何か危険だと判断した場合は仕方がないから逃げろ。」

「うん。」


 そういえば、どうも俺の言ったことに対する返事が冷めてるんだよな。今まで人、いや仲間の魔族か。それと話したことがないとはいえ、子供ならもっと色々言ってみるもんだがな。いや、飯のことになると結構突っ込んできてたな。







 昨日も来た中央通り、何やらキョロキョロとあたりを見回してるいかにも怪しい奴がいるな。あれは…


「あ、おい!居たぞ!」

「何!どこだ!」

「あそこだ!追いかけろ!」


 確か昨日店で買い物した時に絡んできた奴らだったな。昨日は何もしなかったが、今日も絡んでくると言うならば少し、やっちゃっても、いいよね?ああいうのは放っておくと面倒だし、逃げてばっかだと変な誤解されそうだし、何よりも腹が立ってくる。


「ははは!これで逃げ場が無いな!」


 やっと俺のところに男どもは、昨日と違って三人ではなく、八人で囲んできている。これがお前らのパーティー、といったところか。でも囲んだだけじゃ意味無いんだよね。逃げ場が無いって言っても上ががらあきなんですもん。にしても、もう野次馬が集まってきたよ。食いつきいいな。入れ食いフィーバーか何かか?


「さて、昨日コケにしてくれたからな。やっちまえ、野郎ども!」

「「「おおおおおおおおおおお!!!」」」


 気合いを入れて突っ込んでくる男ども。これが女ならまだいいんだが、暑苦しい野郎どもだとノーサンキューだ。いや、女でも暑苦しいから嫌だけどね。


「邪魔だ。」

「うわっ!」

「何だ!?」

「体が…」

「動かない…?」


 おっと全員動けなくなったか。怯ませる為に軽く魔力を発散させただけなんだが、いかんせん耐性が無いか、レベルが低いらしい。まあこのままだと野次馬も冷めるし、俺の苛立ちも収まらないから一回解くか。


「お、お前、何をした!?」

「何もしていないぞ。」

「この野郎…」

「もう一度だ、行くぞ!」


 八人同時に武器持ってこられてもなー、チームワークがほとんど無いんじゃイマイチ効果ないんだよね。俺に対して。


「《オクタグラム・シールド》。」

「何ッ!」

「8つも同時に魔法を使うだと!」

「《パラライズ》。範囲指定、半径8メートル。」

「「「ぐびゃっ!?」」」


 攻撃防いだら反撃、基本中の基本ですね。ちなみに、範囲指定しておかないと、効果範囲は俺の見える範囲全体になってしまうので色々危ない。野次馬まきこんだらそれはそれで問題になるし。


「さて、良く聴け。」

「はいぃ!」

「二度と俺に近寄るな。次何かするようであれば何処かの辺境にでも吹き飛ばしてやる。」

「ハイィィ!」

「に、逃げるぞ!」

「「「アイアイサー!」」」


 ピューッ、とでも効果音をつけたくなるような逃げ方で男どもは逃げて行った。

 野次馬もなんかしらんが満足したようで歓声を上げている。


「おっと、忘れるところだった。すまんが、そこの男。」

「な、何でしょう?」

「…そんなに畏まらなくても良いぞ。」

「あ、はい。で、何でしょう?」

「冒険者ギルドはどこにある?」

「それならこの通りの向こうのほうにあったと思います。」


 そういって、通りの奥の方を指差す男。


「そうか、助かる。」

「いえいえ。こちらこそ良いものを見せてもらいました。」

 

 軽く礼を言って指刺された方に向かって数分して足りない物を買いに来たことを忘れていたことに気がつくが、先にギルドのほうに言ってしまおうと決める俺だった。

初めからチート級の魔法使える主人公が才能云々言っても…ねぇ?

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