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アーネの過去

短めの話となってしまったので続けて更新します。

前の話を読んでいない方はそちらを先にどうぞ。

 過去に囚われているということは、前に進むことができないということとも言えるのではないだろうか。

 ~世界の記憶 第2014章 第6節 22項~











「やっぱり、私じゃ、無理なのかなって、魔法も、武器も全然だめで…」

「…何があったのか、詳しく教えていただけますか?」

「はい…。」











 十年ほど前、とある町にいる少女、彼女は個人家族だが、兄と姉は町から出て行ってしまい、家にはいない。三人しか残っていないが母とも父とも違う、赤い髪を持って生まれてきたことから腫れもののような扱いを受けていた。アーネの両親は二人とも蒼い髪色をしている。兄弟たちもそうだ。

 そして、学校では…


「アーネ、君は本当に真面目にやっているのか!」


 怒鳴りつけるのはその当時の教師、無論、アーネ自信はこれ以上ないほどに真面目に取り組んでいるのだが…


「武器が使えないのはまだいいだろう、筋力が余りないのは子供だからと割り切ることができる。だが、魔法どころか魔力を感じ取ることができないというのはふざけているとしか思えん!」

「…すみません。」


 このころの彼女はとても自分を表に出せないような人物で、周りからのいじめもあって発言することすら得意ではなかった。すでに自分には


「この学校は優れた人材を数多く出しているんだ、お前みたいなやつがここを出て行ったら我が校の評判が落ちる!」

「はい…」

「今日は家に帰らずここに残りなさい。」

「はい…」


 また別の日、


「お前こんなこともできねぇの?もしかしたらお前神様に見放されたんじゃね?」

「うっわ、マジかよ…、こんなのと一緒に居たら俺達まで危ないんじゃね?」

「私もこんなのと一緒に居るのなんてお断りだわ。」

「…」


 またある時、


「私のペン知らない?」

「俺しらねー?」

「私も知らない。」

「俺も。」

「…あの、さっき、あっちに落ちてたんだけど…」


 そう言ってアーネはその持ち主に返すのだが、


「うわ、お前盗んだのかよ!」

「え?」


 いきなりこんなことを言われれば誰だってこんな感じになるだろう。


「あなたがそんな人だと思わなかったわ。」

「未熟者のゴミが人様のもの取ってんじゃねーよ!汚ねぇな!」


 そう言った男子生徒がアーネのことを蹴り飛ばす。続いてその周りに居た者もそれに加勢する。

 そこに教師がやってくるが、アーネのことを袋叩きにしていた生徒を叱りつけることもなく、それどころかアーネに罪がかぶせられる。親切に物をとるだけでも、彼女に罪をかぶせる。本来ならとっくに人間不信まで陥っているだろう。


「なぜこんなことをしたんだ!この恥知らずめ!」

「先生、私は…」

「何だ、言い訳は要らん!」

「うぅ…」


 そして、家に帰っても、


「アーネ、あなたがそんなことをする子だなんて思いもしませんでした。」

「お母さん、私やってない!」

「黙りなさい!先生もやったと仰ってました。周りの子たちもあなたが盗むのを見たと言っているんです!」

「でも…」

「今日は夕飯抜きです。朝まで魔法が使えるようになるまで練習しなさい。」

「…」


 何をやっても、頑張っても、いい成績を出しても、何かしらの理由をつけられ、必ず悪人のように扱われ、さらには自分の家族にすら信用を得られない。だが、


「アーネ、お父さんは、そんなことはしていないと思っているからな。」

「うん。」


 彼女は父親からは信じてもらえていると思っていた。

 しかし、最後に追い打ちをかけたのが父親だった。ある日の朝である。


「アーネ、部屋に来なさい。」

「はい。」


 そして部屋に入るなり、アーネの頬をひっぱたいた。


「…」

「私はもっとお前をいい子だと思っていた。だが、話を聞いてみればどうだ、魔力を出せない、武器の扱いも学校で一番下、その他の魔法史なども下から数えたほうが早い。さらには盗みを働いたらしいじゃないか。私は今一番後悔をしている。お前を甘やかしたことを、お前みたいなやつが生まれてきたことを、私の面目はお前のせいで丸つぶれだ。一体どうしてくれるんだ?」

「…」

「…もういい、出て行きなさい。そうすれば私の印象もこれ以上悪くならずに済む。」

「…え?」


 突然言われたことに驚きを隠せない。当り前だろう。急にそんなことを言われれば。


「出て行けと言っているんだ!お前みたいな出来そこないが家にいたんじゃ迷惑だ!」

「…わかり…ました。」


 そう言って家から飛び出し、町の外にでる門まで走って行こうとするが、


「お、出てきたぜ!」

「さっきのすごかったな!」

「親に、出て行け!だってよ!」

「やっぱり神様に見放されてるんだよ!」

「じゃあ町から出てもすぐに死んじまうな!」

「「「アハハハハ!」」」


 さっきの怒鳴り声が外に聞こえていたらしい。周りには同じ学校の生徒が集まってきていた。その中には朝の市に出かけていた母がいた。そして、


「あなたが居なくなったら清々するわ。」


 とだけ言った。











「それだけ、その数年間のトラウマをほじくり返された、と。」

「…」

「それを魔法によって悪夢として見せられた、それも何回も。」


 黙って頷くアーネ、その目には涙があふれ、頬まで濡らしている。


「なるほどね。」


 さてと、流石の俺もこればっかりは許せないかな。


「では、私はこれで失礼しますね、アーネさん。」

「はい…」


 変なことする奴もやっぱり居るんだな、と思いつつ、歩き出す。


「落ち着いたら、戻ってきてくださいね。」


 と言い残し、俺は部屋から出た。

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