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お嬢様

 人の上下関係は自らを滅ぼすこともあるだろう。

 ~世界の記憶 第2039章 第6節 1項より~











「あー、今日は休みましょうよー…。」


アーネさんがそんなことを言い始める。三日に一度くらいの頻度だろうか。そんな彼女に、


「借金、返さないなんてことは…ないですよね?」


 左手をニギニギしながらアーネさんに聞いてみる。

 アーネさんが借金を作ってから1週間。まだ金貨4枚分くらいしか返してもらっていない。金貨一枚でも十分大金だけどさ。


「ももも、もちろんですよ!返さないなんてことはしませんから!」

「それならいいです。」


 うん。この質問をすると必ずこう答える。面白いんだけど、飽きてきたな。


「何か面白いことがあればいいんですけどね。」

「面白いって、例えば?」

「例えをあげることはできないかな。その人によって面白いことの基準が違ったりするし。」

「何か起きるのを待つのもいいかもしれませんけど、自分から行動を起こすのも面白いと思いませんか?」

「一理ありますが、後処理が面倒になりそうなので自分から行動を起こすのは止めておきたいですね。」


 だって、それが原因で国から追放されるとか、ちょっとシャレにならんでしょう。どっちかって言うと面倒事を解決したい側だし。まだ神様らしいことを何もしてないような気がするし。また魔法の練習でもしとくか?制限緩和がどのくらいなのかまだ分かってないし。


「ところでさー、人少なくない?」

「そういえばそうだね。何かあったのかな?」

「そうだとすれば、解決してお金を…」

「金の亡者にならないで下さいよ?」

「なりませんよ!」


 だって、発言がいかにもな感じしかしないし。


「ちょいと失礼。」

「あ、はい、何ですか?」

「確かこのギルドにはAランク以上の冒険者が何人かいると聞いたんだが。」

「それなら今、遠征に行って帰ってきていませんよ。」

「そうか、済まない。」

「今は居ないですが、E+の冒険者が20人は居るよ。」

「それらしい奴らなら、隣国から来た伯爵令嬢を見るために大通りのあたりに来ているが、帰りの護衛が務まるような奴は見たところいなさそうだったからな。」

「伯爵令嬢?」

「ああ。本来なら俺達みたいな兵士だけでいいんだが、最近は魔物が活発に活動しているからな。余程魔力や魔素がこの辺にたまったりしない限りこんなことはないんだが、今はそのせいで護衛の務まる冒険者を探しているんだ。」


 あー、たぶん、いや絶対と言ってもいいか。俺が原因だなー。


「その護衛って、お金もらえるんですよね!?」

「アーネさん…少し落ち着いて…」

「一応それなりの金額が支払われるはずだ。」

「それならぜひ私たちが引き受けましょう!」

「ちょっと、アーネさ…」

「分かった。だが、お嬢様になにかあろうものならば、貴様らの首が飛ぶぞ?」

「やめておきましょうよ、アーネさん。」

「何を言っているんですか、キシナミさん!ここでやらねば返済の道が遠のいていくばかりですよ!」

「理由はどうでもいいが、とりあえず一緒に来てもらうぞ?」

「はぁ、分かりました。行きましょう…」






 大通りに止まっている馬車には人だかりができている。その前に立っているのが…伯爵令嬢だろうか。何か様子がおかしくないか?確かに冒険者がたかっているとは聞いたが、皆目がギラついている。


「ちょっと、離れなさいよ!」


 そのお嬢様らしき人物が大声を出してそう叫んでいる。この冒険者は身代金か何かが目当てで襲おうとでもいうのだろうか。そんな冒険者たちを前に彼女は顔を青ざめさせ、後ろに下がろうとしている…が後ろには馬車がある。早く馬車の中に入ればいいのに。


「お嬢様!」


 一言だけ叫んで駆け出したのは俺達をこの場所に連れてきた兵士。他の奴らはどこ行ったんだよ…。


「おい、あんた伯爵令嬢なんだろ?だったら金ぐらい持ってるよな…よこせよ。」

「そうだよ。なんで俺達はこんな危険な目に遭って金稼いでるのに、お前みたいな力も持たねーような奴が楽して豪華な暮らししてんだよ。」

「お金なんて持っていませんわ!」

「ふざけるな!そんな嘘ついたってバレバレだぞ!おい!身ぐるみはがせ!」


 …うわー、ベタすぎるわー。なにこの時代劇とかで良くありそうなやりとり。本当にあるんだな…。なんか同じ冒険者やってるやつとして恥ずかしいわー。


「待て!」

「何だぁ?てめぇは?」


 そこまで離れてないのに駆けつけるの遅くないですか?兵士さん。こんなんで務まるもんなのか?


「どうします?アーネさん。アーネさん?」

「ちょっと用事思いだしましたんで、私向こうに行ってますね。」

「そうですか。」


 絶対この人数には勝てないと思って逃げたパターンだ、これ。


「ウル?」

「何?」

「お前は何もしないの?」

「めんどくさーい。」

「そうか、私にやれと申しますか。」


 はぁ、護衛やると言いだしたアーネさんはあれだし、ウルはこれだよ。何で面倒事ばっか俺に押し付けるかね。おっと、そんなこと話してる間にさっきの兵士さん吹っ飛ばされていったぞ。狙ってるのか?お嬢様なんか両手で頭抱えてしゃがみこんでるし、ギャグの世界なんじゃないかな。


「だ、誰か、助けて!」


 これ助けなくて戦争とか起きるのもやだしなー、護衛の兵士とやらは使えないし、本来助ける側の冒険者があれだし、仲間はこれだし、もうこの国から出て行こうかな。

 お嬢様とやらに冒険者の手が触れる瞬間、足を上げて思いっきり地面を踏みつける。とてつもない轟音とともに、道を作っていた煉瓦が砕けてその辺に飛び散った。その音で彼女に触れようとした人はもちろん、全員がこちらを振り返った。ウルはいつの間にか何処かへ行っていて、俺に視線があつまる。

 そいつらに俺はただ一言、大量の魔力を放出しながら、


「彼女にてをだすなら、私が相手になりますよ?」


 微笑みながら言った。しかし、相手を威圧できるように。すると、行動を真っ先に起こした少し太めの男が、


「ハッ!その魔力には少しばかり驚いたが、そんなことをしたらお前の魔力は空っぽだ!そんな奴に何ができる!」


 と言い返してきた。


「試してみますか?それとも私に負けるのを周りの人に見られたくなくて、手が出せませんか?」


 軽く挑発してみよう。こういう輩なら大概…


「何だと!?後で泣いて謝ったってその場で殺してやるからな!」


 ほらきた。教科書に載りそうなほどの食いっぷり。言いきると同時に殴りかかってくるが、それなりに距離が空いているのでこっちに来るのが遅い。それに今の俺の動体視力ならこの程度見切るのは簡単すぎる。プロの野球選手にはボールが止まって見える、と聞いたことがあるが、まさにそれだ。見切った後は身体能力に任せてよけるだけ。


「くっ、この、すばしっこい、小娘め!」


 この人には俺は少女として映っているらしい。心は男なんだけどな。

 そんなことはどうでもいい。よけるのも飽きたので、大ぶりのパンチにカッコつけてクロスカウンターを放つ。もちろん、顔面にクリーンヒットだ。一発で倒してしまうのもつまらないので手加減はしている。


「このガキィ…ぶっ殺してやる!」


 鼻を手で押さえながら、こちらを睨みつけてくる。背中の斧を手に持って切りかかってくる。子供相手に本気出す大人ってどう思うよ。

 俺は半歩右に出て斧をよける。そして更なる挑発をする。


「子供相手に武器まで使って、恥ずかしくないの?」


 周りからはくすくすといった、笑う声が聞こえてくる。襲われそうになっていたお嬢様は、こちらを見て愕然としている。


「ぐぐぐ…おい!お前らも手伝え!」


 おっさんは仲間を呼んだ!

 恐らくいつもパーティを組むような奴を呼んだのだろう。二人ほど男が出てきた。片方は身長が高く、剣を持っている。もう一人はガッシリした体系で鉄でできた棍棒を持っている。


「おいおい、こんなガキ相手に何手間取ってんだよ。」

「リーダーさんは何事にも本気ですからねぇ。」


 お仲間さんにも笑われてどんな気持ちだろうな。顔が今にも噴火しそうなほど真っ赤になっている。


「うるせぇ!さっさと手伝いやがれ!」

「はいよ。」

「了解でーす。」


 三人になっても結果は変わらないと思うけどな。見たところ三人とも近接戦闘向けだし。せっかくだから心をポッキリと折ってから倒してあげることにしよう。


「どうだ!俺一人ならまだしも、パーティーを組んだ俺達には誰もかなわねえ!このコンビネーション、交わしてみろ!」


 …コンビネーションの欠片もないな。三人が好き勝手に武器振りまわしてるだけじゃないか。


「俺にはまだ奥の手があるんだ!くらえっ!」


 何か白い球を投げつけてきた。俺の目の前で弾けて広がる。片腕をあげてそれを防ごうとする。

 これは…網か?粘着性があって体にまとわりつく。地面ともくっついて、足が上がらず身動きがとれない。


「ハハハ!そこだっ!」


 斧を持った男が横薙ぎに斧を振るう。

 鈍い音が響く。地面に何かが落っこちたようだ。

 それを見た周りがざわざわしている。


…ヤロウ、俺の右腕落としやがったな。断面から血が止まらない。


「どうだぁ!痛いか!ハハハハハ!」


 男はただ笑っている。満足げな歪んだ笑みとともに。


「…な、なぁ、ホントにやっちまって良かったのか?」

「あ?あたりまえだ!俺をこんなに馬鹿にしやがったんだ!」


 HPほとんど減ってないけどね。それよりも不思議なのは俺にダメージが通ったことだが、まあいい。


「じゃ、次はこっちの番だな。」

「は?もう勝負ついただろ?片腕が無いのにないをするつもりだ?」

「私を殺すまでが勝負じゃなかったのか?」

「あ、あれは、その…」

「《セット・セプタグラム》。」

「え?」


 奴らの頭上に七つの魔法陣を展開。もちろん属性は七属性全部だ。

 何でもできるって、楽しいよね。


「《マジックセプテット》。」


 発動と同時に初級の魔法が魔法陣から自動的に打ち出される。


「た、助けてくれぇ!」

「な、何で俺達まで、うわっ!」

「あ、俺帰りますんで、失礼しました。」


 三人のうち剣を持っている奴はなかなか素早いらしく何処かに行ってしまった。にしてもこの魔法、燃費悪いな。魔法陣から一発出るだけでMPが100くらい持ってかれる。そろそろ止めるか。


「す、すんませんっしたー!!」

「ま、待ってくれよぉ!」


 さて、ここに残ったのは、俺の腕を落としやがった斧持ったこいつだけだ。


「ひぃ!い、命だけは!命だけは助けてください!」

「…斧、貸してくれるかな?」

「は、はいぃ!ど、どうぞ!」


 とてもおびえた様子で斧を差し出してきたので、叩き壊してやった。男は俺の斧がー!と叫んでいるが、気にしない。そして男に向き直って、


「今ここで死ぬか、真面目に冒険者やるか、どっちがいい?」


 わざとらしく聞いてやる。俺は優しいからね。


「ぼ、冒険者をやらせていただきます!」

「ああ、そう。じゃあ周りの人も一緒に行くように言ってくれるかな。」

「はい!」


 とりあえず、これで一件落着かな。


「き、キシナミさーん!って、キシナミさん!腕が!血が!」

「キシナミー、大丈夫ー?」


 見計らったかのように戻ってきた。アーネさんが俺の心配をしているが、あんたがどっか行ったせいだよ。俺は大丈夫だ、と軽く流して、お嬢様のほうを向く。


「怪我はありませんか?」

「あ、ありませんわ。でも、あなたの腕が…」

「これなら大丈夫ですよ。すぐに治ります。」


 とは言ったものの、さっきから血が止まってないんだよね。クラクラする。どうやらHPとはあまり関係が無いようだ。


「じゃあ、ここで寝ている兵士さんたち起こして、さっきの人も探してきますか。」

「お願いしますわ。…あの、お名前は何といいますの?」


 俺は振り返って微笑みながら、


「私はキシナミ。Fランクの冒険者ですよ。」

 

書きたいこと、言いたいことが表現できずに困ったことってありませんか?

私はこれを書き始めてからそればっかりです。



不自然な表現と思ったもの、何か疑問に思ったものなどありましたら

コメントでご報告ください。出来る限りお答えしたいと思います。

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