性質
物資、魔力、生命力に至るまで、全てのものは有限である。
~世界の記憶 第2025章 第5節 17項より~
「魔力の流れを感知する。その流れを操って魔法陣を描く…」
魔法書初級応用編効率化の項にはそう書かれているがさっぱりだ。
さて、何をしているかというと、一週間ほど前、ウルに言われた魔法の発動までが長いと言われた点を改善しようと頑張っているところである。しかし、
「まず魔力の流れが分かんないんだよなー。これ改善すれば魔力の消費も抑えられるって言ってたんだけど…」
ウルいわく、俺は魔法を使うとき、魔力が体全体からダダ漏れらしい。俺はそんな感覚しないけどな。と言ったら魔力量が多すぎるから、と言われてしまった。一時的に魔力の流れが見えるようになるアイテムとかあればいいんだけどな。
「初級基礎編になら書いてあるかな。」
これを取り出したのは久しぶりのような気がする。この世界の知識をとりいれようとしていたころだったか。ついこの前のことだけど。しかし、だ。やっぱり魔法のない世界から来た俺にとっては難しい。他の奴に言ったら、こいつ何言ってんの?常識だろ?という目で見られそうだ。ウルは知ってるけどさ。
「詠唱の組み立て方、かこれなら何かあるだろ。」
独り言が加速し始めている。なるべく抑えなければ。にしても詠唱は魔法の基本だもんな。効率化を図るためにやるのだと書いてあった気がする。ちゃんと覚えてればしなくても魔力の消費は変わらないらしいけど。
「属性のイメージを言葉にし、魔力を引き出すイメージを形作る…」
要するに、火や水を自分のイメージしやすいように言葉にしろ、ということだろう。同じ魔法でも詠唱が人によって違うのは此処にあるらしい。いや、もちろん他にもあるけどさ。魔力を引き出すイメージは自分の体から出すのか、空気中に漂っているのを使うか、はたまた、話に聞いた龍脈やら霊山やらから借りるかとからしい。最後に言ったのが一番威力が強いらしいが、習得にも時間がかかるそうだ。
「とりあえずこの辺の魔導書もって誰もいないところに行くのが一番だろ。」
近くの草原にでも行くか?それとも闘技場貸してもらおうかな。いや、そもそもの問題として、無属性の魔力と思われるものを他の属性の魔力に変換するところから始めないとだめかもしれないな。適正の属性魔法以外の魔法使ってる人は変換してる人が多いらしいし。この辺は中級から上級買わないとだめかなー。でも高いんだよな。下級でも何か参考になることが書いてあれば良いんだけどな。
「よし、ここなら良いだろ。」
そう言ってやってきたのは一番初め、目が覚めた場所である。まだ俺によって倒された木は残っている。誰も来ていないということは、誰にも見られることもないということだ。ちなみに、少し前のメテオは結構な話題に上がっていた。悪魔が来る、魔族が団結して人間を蹂躙しにくる、という人もいれば神が魔族を退けてくれた、という人もいた。後者の意見はまぁ合っていると言っていいだろう。俺、神だし。
話がそれてしまった。今重要なのは、魔法の効率化と、詠唱の短縮だ。基本となる魔力を弾にして飛ばす場合の詠唱が確か…
「光の弾丸よ、我が魔力を持って敵を撃ちぬけ! 魔力弾・光!」
…当然何も出ない。しかし理論としては、「光の弾丸」が魔法の形状、属性で「我が魔力」と言っている部分で自らの魔力を引き出していることになるだろう。威力の目安が「敵を撃ちぬけ」といったところか。この辺の魔力を変換するのは必須か。ギルド内で風の魔法使ったのは、創造魔法で風の魔力を創ったから使えたわけだしなぁ…。メテオの時も同じだ。物質の巨大化は無属性、というよりも属性にかかわらず魔力使えば良かっただけだからできたわけだけど、それでも詠唱が長いって言われたしな…。
「魔力の属性が合わない…か。クリエイト宣言して創りだすまでの時間も30秒はかかるしな…。物創る時はそんなに時間かからないんだけどな。属性ないからか。」
…ん?何か引っかかる。確か、時間操作とか空間魔法は使える人がいないって言ってたな…。この辺は魔力だけで使えるわけではないのか?でも巨大化は…何かこんがらがってきたな。少し整理するか。
まず、七属性はそれに対応した虹色魔力を使わなければいけない。魔力を使うだけで出来るのが、簡単な、物を浮かせたりとか、動かしたりする魔法。遠くを見るための魔法もそうだったか。物を仕舞うことのできるインベントリとかは空間魔法に入るから、無色魔力、無属性が必要になってくる。時間を加速する魔法なんかも無属性に入る。俺の使っている創造魔法も無属性に入るのかもしれないが、正直怪しくなってきたな。もしかしたら属性の関係ないもっと別のカテゴリに…待てよ?確か俺の魔法の分類は属性魔法じゃなくて超魔法になってたな。何が違うのか分からなかったが。となると、属性だけにとらわれず、もっと色々なことを試すべきなのかもしれない。
「もしこの魔法の性質が属性魔法と大きくかけ離れているなら…」
この魔法書たちは役に立たないことになる。詠唱が遅いのも無理に既存の魔法を使っていたから、とかだったら、本当の意味で一から、俺の考えた通り、俺の思った通りに魔法を創ってしまえば、使いやすくなる…かもしれない。
よくよく考えてみれば、剣を操る魔法を使用してる時はどう動かすのかを自由に考えていたからだった。他の人が同じ操作の魔法を使うなら、魔法陣にそれだけの回路を組み込まなければいけない。しかし、俺の場合、考えると同時にその回路が組み込まれていたのだとしたら…まあ要するに魔法のスケールが違うんだから、無理に他の枠に入れなくても、自分で作った枠に自分の好きなように入れればいいということかな。
「この考えが合ってればこの魔法相当、いやあり得ないくらい強いかもしれないな。」
何でもできると聞くと範囲が広すぎて逆に何をすればいいのか分からなくなるな。しかし、まだ下級だけしか使えないということは、それはつまり、もっとできる幅が広がるということだろう。スキルを考えたらチートなわけだし。クールタイム長いけど。後はLVを上げればいいのかな。いや、それよりも先に本来の目的を果たさなければ。今日はとりあえず火属性の魔法が効率的に使えるようになればいいか。
しかし、何でもできる魔法で火を出すって、なんというか、難しいな。詠唱については魔法考えればパズルみたいな感じで作られていくけど、魔法のイメージが沸かない。やっぱ最初は地面から噴火みたいなイメージかな。
「全能の魔法、その一端を用いて悪しき者を焼き払う炎を上げよ! 炎柱!」
創造まで約2秒。地面に出た魔法陣が赤く光ると同時に、炎の柱が噴き上がる。でも魔導書のフレアは炎柱ではなく火柱だった気がする。これが枠組みの違いだろうか。単純な魔力も関係しているのかもしれない。そのへんは置いておいて、目的が達成できたのでひとまず安心できる。まだ何か物足りないが、いったん帰るか。もう日も落ち始めてるし。移動に時間がかかりすぎだ。
「そういえば、アーネさんとウルなにやってんだろう。」
「アーネさん、そろそろやめようよ…」
「良いじゃないですか、せっかくお金が入ったんですから!」
此処は冒険者地区の端っこにある屋台街。今日も賑わってはいるが、朝から約8時間、ずっと食べ歩きをしているこの冒険者、アーネ。その隣でさすがに金を使いすぎていないか心配している少女、ウル。
「昨日の今日でなんで稼いだお金の3分の2が無くなるほど食べてんのさ!」
キシナミを一人で行かせたのは間違いだったかな…。早く帰ってきてよ、このまんまじゃ宿代無くなるよ…。
「ウルちゃん!次あっちの屋台行きますよ!」
「そこの屋台に行くの4回目だよ!」
お願いだから早く帰ってきて…キシナミ。
遅くなってしまい申し訳ありません。
まだ連載は続くのでこれからも
宜しくお願いします。
魔法に関しては、あくまで主人公の解釈です。