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合成魔法

 人を、生物を、世界を救うのは、誰の義務でもない。

 ~世界の記憶 第2023章 第10節 24項~











「《セット》―――」

「ちょっと待って!」

「どうした?」

「今どうやって過去を見ようとしたの?」

「どうって、合成魔法で…」

「合成魔法は魔法陣の順番で効果が変わったりするから気をつけないとだめだよ。」

「そうなのか。」

「そうだよ。例えば、火属性のあとに水属性を混ぜると相性が悪くて相殺しちゃうけど、水の後に火をやると自然発火する水ができるんだよ。」


 面白いな。今度色々試してみるか。確か8つくらいまで魔法陣出せたし。でも危ないのができたらやだな。この周辺荒野に変えたりしたらちょっと責任とれないな。


「じゃあ、どんな順番で合成すれば過去の状態を見れるんだ?」

「そうだね、時間を戻す魔法陣に何かを見る魔法を重ねれば良いんじゃないかな。」

「わかった、早速やってみる。《セット》、《クリエイティング》、《リ・バース》、《イルミネート》、《コンフレーション》。」

「キシナミ。」

「何?」

「長いよ。」

「え?」

「魔法の発動と詠唱が長い。」

「え、あ、うん。」

「短くできないの?」

「やり方が分かんない。」

「しょうがないな、今度教えてあげるよ。」

「よろしく。それはともかく、覗いてみるかな。」


 魔法陣越しに過去の世界を覗く。白黒でしか覗けないようだ。少し視界が悪いが見えないほどでもない。しばらく覗いていると今立っているところの右側から、何の動物とも取れない鳴き声、いや、雄叫び、あるいは咆哮のようなものが聞こえてきた。過去を覗くとはいえ、音まで聞くことができるのか。なら白黒でも文句は言えないな。少しすると、その声のようなものが聞こえた方向から植物がしおれ始めた。ここで現在に引き戻される。発動時間をすぎたようだ。


「何か見えた?」

「見えたし、聞こえた。」

「何があったの?」

「何かの生き物の雄叫びが聞こえた後、その方向から植物が萎れ始めた。」

「やっぱり、向こうのほうから?」


 そういってウルが右側を指差す。


「そうだよ。分かってたのか。」

「なんとなくね。でも確証が持てなかったんだ。」

「これは時間を戻すだけじゃ解決しないだろうな。」

「そうだね。正体の分からない魔物を倒さないといけないのは少し厳しいかな。」

「またどこかで行動を起こしてくれると場所を突き止めやすいんだけど…ところでアーネさんは何処に行ったんだ?」

「え?…しまった!!」

「まさか…」

「そのまさかだよ!!向こうに一人で行った!!」

「とりあえず走って追おうか。何もなければいいんだけど…」


 アーネさんは最初に異変が確認できた方向へ行ってしまったようだ。一体何を考えているのか…早く追わないと最悪の事態になりかねない。といっても俺の走る速さならすぐに追いつけそうだが。


「ウル、ついてこれるか?」

「妖精舐めて貰っちゃ困るよ。これでも成長を促せるほどの力の固まりだからね。」

「分かった。」


 それを合図に走り出す。空気の抵抗が重い。そのうちこれも改善しないといけないな。しかしこの速さに追いついてこれるウルも大概だな。素でこれなのだからちゃんと成長する種族だったりしたら恐ろしいことになりそうだ。


「どれくらい遠くに行ったか分からないのか?」

「私の把握できる範囲から出てるんだよ。」

「いつ離れて行ったかも分からないのか?」

「それも気が付いたら居なくなってたくらいだから自分の意思で離れて行った可能性もあるよ。」

「鳴き声による《チャーム》の可能性もあるのか。だとしたら…」

「餌として呼ばれた可能性がある、かな。」

「それにしても離れすぎてないか?」

「もしかしたら、《チャーム》に罹った時だけ何かしらの強制強化がかかるのかもしれない。」

「そうしたらだいぶランクの高い魔物に分類されそうだな。」

「そうだね、そんな魔物だったら、D+~C-位になりそうだ。」


 正直、戦ったことないから言いきれはしないが俺だとまだ勝てない気がする。魔法の発動にも時間がかかるせいでまだ実践レベルまで到達していないと言える。町の時は動きの遅めの魔物だったからいいが、Dランクでも俺に不意打ちをできるのだ。もっと動きの速い魔物だったら確実に一発は貰っているだろう。アーネさんに聞いた話だとSランク冒険者はステータスが6ケタとかあるらしいからな。化け物の巣窟だ。


「見えたよ!あれは…木?なのかな…」

「ウルが知らないとなると新種かなんかか?」

「少なくとも私は分からないよ。それよりもアーネさんが近づいてってる!」

「拙いな、追いつけはすると思うけどこれだと突き飛ばして離すのが精いっぱいだな。」

「この際突き飛ばしてもいいよ。きっと強化されてる可能性が高いし。」

「そうかな、なら…」


 俺はそのままはしてきた速さのまま、感覚的には100mを5秒くらいで走れそうな感じのスピードでアーネさんを突き飛ばす。アーネさんに触れる瞬間、何か堅いものと空気か何かのやわらかいものの両方に勢いを大分殺されるような感じがした。これがウルの言っていた強化なのだろう。

 アーネさんを突き飛ばした時に勢いがほとんど無くなっていたので難なく止まることができた。件のアーネさんは…


「痛たたた…あれ?ここ何処ですか?」


 何もなかったかのようにしていらっしゃる。走ってきた俺たちが馬鹿みたいだ。いや、あのままだったらどうなってたか分からなかったか。どちらにせよ無事でよかった。さて、問題は…


「これをどうするか、だね。」

「え?何です?この…木?みたいなの?」

「これが元凶だと思うよ。」

「この惨状の、ね。」

「じゃあ早くやっつけて…」

「それができたら苦労しないよ。」

「なにか分かったのかい?ウル。」

「ああ、どうやらこれを倒すと吸った養分の量に比例して爆発を起こすみたいなんだ。」

「そんなのいつ調べたんだ?」

「魔法を使って、ね。」

「でも詠唱どころか魔法陣すら出てなかったけど。」

「慣れればできるさ。コツは今度教えてあげるよ。」

「…頼む。ま、それはそれとして、手っ取り早く倒しちゃおうか。」

「でも倒したら爆発が…」

「時間の減速と攻撃魔法、それから結界とかバリアとかで囲めば倒しても爆発まで時間があるし、被害も抑えられる。ついでに運が良ければ能力封じで爆発しないかもしれないよ。」

「それもそうか。じゃあよろしく。」

「はいはい。《セット》、《クリエイティング》、《スロウ》、《アンチスキルエリア》、《ウォール》―――」

「一旦ここで発動させたほうがいいかもしれないよ。」

「なんで?」

「そのほうが攻撃に回せる魔法陣が多くなる。」

「そういえばそうだった。じゃあここで切って、《リ・セット》―――」

「じゃあ今から私の指示通りにやって。」

「…何を考えているかは分からないけど、まあいいや。」

「じゃあ、魔法陣を空に。」

「はいはい。」

「次に範囲、大きくできるよね。」

「忘れてたな、できるよ。」

「次は土の魔法陣と、火の魔法陣。土が上ね。」

「《クリエイティング》、《ロックバレット》。《ファイアボール》。」

「それから物質巨大化と、落下速度加速の魔法。」

「《ジャイアント》、《ファール・アクセル》。」

「じゃあ、あとは雷、風、光、闇の順番で。」

「いきなりいわれてもなぁ、《スパーク》、《エアロ》、《シャイン》、《グルーム》。」

「仕上げに展開した順番に混ぜて。」

「あ、ああ。なんか見たこともない魔法陣が出来上がってるんだけど…。」

「あとは発動だけだね。使ったら、アーネさん背負って全力でダッシュね。」

「…なんですか?あれ。」

「メテオ。」

「「は?」」

「まーいいからいいから。」

「《メテオ》!」

「よし!成功だ!逃げるよ!」

「分かった!」

「え?きゃあ!キシナミさん!?」


 発動した瞬間、色々な色に光る、下級とは思えない大きさの岩、いや極小の星か。が、とんでもない速さで落下してくるのを背後にダッシュをはじめる。本当に下級魔法か?これ。それにしても、結構高いところに魔法陣置いといてよかった。低い所だったら時間が稼げないからな。


「ここまで離れれば十分か?」

「そうだね。」


 と言った瞬間、どうやら着弾したようだ。まるで太陽が近くにあるかのような光と、遅れて耳を劈く轟音と、爆発によって起きる台風のような豪風。そして大地が揺れる。震度で言ったら5強~6弱くらいだろうか、爆発によって立った砂ぼこりは400mくらいありそうだ。


「ウル、これ本当に下級魔法なのかな。」

「違うよ。」

「…」

「メテオは確か上級に入ってたはず。」

「制限で下級魔法しか作れないはずなんだけど…」

「合成させれば関係ないってことでしょ。」

「じゃあ、あの良く分からない合成の順番はなに?」

「ああしないと正しく発動しないんだ、理由は―――」


 ウルの話を纏めるとこうなる。

 土に火を混ぜることによって、土を核、火を核を覆うものにして土の拡散を防いだらしい。

 続いて巨大化させてから加速することによって物体が崩れるのを防ぐ。

 雷で周りの塵を滅して、風によって空気抵抗を減らす。

 光と闇で無属性魔法にしたらしい。


「巻き添え食らってたらどうするつもりだったんだ?」

「君なら治せるでしょ?」

「そこまで万能じゃないと思うけどなー。」

「キシナミさん。そろそろおろしてください…」


 忘れてた、アーネさんが顔を真っ赤にしながら訴えてくる。これだけ色々あったら疲れるよな。宿で早めに休ませないと。


「キシナミ。」

「何かあったの?」

「今回は運が良かったと思うよ。」

「…」

「向こうが木のような動けない魔物だったからあの長い詠唱もできたけど、あれが進化して葉を飛ばしてきたりするような相手になったりしたら…」

「要するに動作や詠唱、魔法の発動に時間がかかりすぎてるから本当の戦いでは使えないってでしょ。」

「うん。向こうに戻ったら魔法書の応用編とかを読んで試すか、それでも長かったら私が稽古をつけるよ。」


 何はともあれ、問題は解決したし、後は…


「薬草採らないとクエスト達成できませんけど、どうします?」

「目をつぶって耳ふさいでくれますか?」

「え?あ、はい。」

「《セット》、《クリエイティング》、《ディステンション》、《リ・バース》。」


 魔法の発動とともに、土地の時間が巻き戻る。さっきの魔物によって枯らされた植物が甦っていく。時間戻してるだけだから厳密には違うかもしれないけど。


「さて、薬草集め、始めましょうか。」

「え?え!?えええ!?」

「驚かなくてもいいよー?魔法だもん。」


 ウルがまた口調を子供っぽくする。胡散臭いことこの上ない。

 そうして俺たちはギルドに薬草を持ってって、薬草だけで銀貨を200枚受け取ったのだった。受付のお姉さんが薬草の数みて引いてたが、それは放っておこう。

グダグダになりかけてますが、許してください。

私の表現力は無いに等しいのです。


感想、評価等、本当にありがとうございます。

皆様の感想でここ最近狂喜乱舞してました。

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