帰り道
夕方、俺は秋桜と二人で帰っていた。
あの後、結局永遠と秋桜は富豪になり続け、俺は永遠と貧民になり続けた。
「悠って本当に大富豪弱いよね」
勝つことがそんなに嬉しいことか、今までにない誇らしい笑顔を俺に見せ、嫌味ったらしいセリフを秋桜は吐く。
「ほっとけ」
俺は秋桜の相手をしていては負けだ。と自分にきめつけ、前を向いて、自転車を引いていた。
せめて、運が悪いと言ってくれ。それでも十分傷つくがな。
カナカナカ。
蜩が寂しそうに鳴いていた。いや、寂しそうかどうかはわからない。ただ、俺はこの声を聞くたびに、寂寥感に浸ってしまうのである。
肌でも感じられてしまう夏の終わり。秋の夕方となると、残暑も残り切らず、涼しい風が吹き始める。
街もどことなく、静けさを感じた。
俺と秋桜は、二人横並びになって、自転車から降りて、引いて歩いている。
なんで乗らないか、と聞かれると、それはどうしてだろうと自問したくなる。
ただ、理由づけとしては、そこまで急いで帰る理由もないし、今日は確か母さんも早く帰って来ているはずだったので、夕食を作る手間もない。そこまで暗くはないから、帰路も危険な道のりではなかった。
と言っても、感覚的、というか、必然的にそうなってしまった。
さっきまで一緒に部活をしていた、かんな、ジュン、テスト終わりの雄平先輩たちは、かんなは楽器屋に用事があるとのこと、ジュンと雄平先輩は帰る方向が前とは別で別れてしまった。そう言う理由で、秋桜と二人で帰っている。
夏至からはもう一か月以上は過ぎていて、夕日の傾き具合も、少し低くなってきた。そのせいか、後ろには俺と秋桜の並ぶ影が長く伸びて、影の周りには赤く染まったアスファルトの道があった。
カラカラと、引かれている自転車のタイヤが回る音がする。背中には真っ黒いギターケースが密着していて、歩くたびに小刻みに左右に揺れる。
俺が一応自分のレスポールを持っていて、秋桜が自分のフライングVを持っている。
大きな家電量販店、スーパーを横に過ぎていき、その近くに少し広い公園があった。
周りは少し木々に囲まれていて、中はすべて芝生で覆われていた。綺麗に整備されており、結構な費用がかかっていそうな公園だった。
俺たちはそこを通り過ぎる。なぜなら、この公園を突っ切って行けば、近道になるからだった。
中には、小さい子供しかおらず、こんなにも暑いのに、未だに元気にはしゃいでいる姿から俺は眼を反らしたかった。
子供が嫌いなわけじゃない。自分だって子供だ。
ただ屈託なく、人生を送っている姿を見ると、どうしてか今の自分と比較してしまう。よくない癖だった。
公園に入っても、秋桜と横並びに自転車を転がしていたが、急に秋桜が止まって、自転車のカラカラというタイヤの回る音は俺のものだけになった。
「少し寄っていこっか」
俺が足を止めた秋桜を気にかけ、後ろを振り向くと、近くにある木製のベンチの方を見て、そう言った。
どういう理由なのか、どういう魂胆なのか、俺にはよく分からなかった。
それでも、俺は気にせずに、
「いいよ、どうせかんなも帰っていないだろうし」そう言った。




