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東雲草の花言葉  作者: 水無月旬
第六章
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革命

(ゆう)、ほら早く、二枚カード渡してよね」


「はいはい」


 俺は言われるがままに、手札にある、一番強いカードであるエースを二枚 渡す。


 もうこの時点で2かジョーカーが入っていない時点で、俺は運が悪すぎる。


「えっ、これが一番強いカード?」


 秋桜(あいか)は不服そうに俺を見る。


「うるさいな、さっさと、俺にもカードを二枚よこせよ」


 そういうと、また秋桜は不服そうな顔をする。


 その横で楽しそうに笑っているかんながいた。


「なんだよ」


「べっつにー」かんなは手札で顔を隠して、こっちを見ようとしない。


「そうかい、そうかい」


 俺はそう言って、秋桜からもらったカードに視線を戻した。そして俺は驚いた。


「おい、秋桜…」


「何?」


「このカードは?」


 俺はカードと秋桜を交互に視線を動かしていた。俺はとても驚いているのだが、秋桜は何もなかったように平然としている。


 貧民とのカード交換でジャックを渡してくるのはどうしてもおかしい。


 そういう結論に至った。


 渡されたカードは9とJだった。何と言っても数字が大きすぎる。普通渡すなら3とかだろ?


「えっ?それが一番要らないカードだけど…」何故か困ったように、秋桜はそう言う。


「ごめん、秋桜、つかぬ事を聞くが、大富豪のルール忘れた?」


 その問いに秋桜は、


「失礼な、これも戦略のうちなの」


 怒った様に言う。


「ま、ま、まさか…」俺はわざと椅子から転げ落ちそうな演技をする。


「まさかって何よ」


「おまえ、まさかあの(・・)『革命」を狙うつもりなのか?そうなのか?そう言う魂胆だったのか?」


「なわけないでしょ。違う、8とかは必要なカードだし、ペアも作戦としては幅広く使えるけれど、その二枚はペアがなかったの」


 そう言われると俺は納得した。


「なるほどね」


 本当は俺のルールでは「11バック』はあるのだが、秋桜たち姉妹は知らないと言うのでそのルールは無しになった。


※11バックとは、Jを出すと、その回だけにおいて革命と同等の効果が得られるルールである


「それにしても…」


「それにしても?」秋桜はおうむ返しのように聞いてきた。


「いや、別に」その先は言わなかった。


言うとなんだかんだで、俺が悲しくなる以外の結果を生み出せないからだった。


 本当はこう言おうとしていた。


『強いだけじゃなくて、運もあるんだな』という事を。


 俺は今まで、俺の身体で生きて来て、何一つ運が良いとは思ったことがない。


 しかし、だがしかし、だがしかしbut。今現在俺の身体で生きている秋桜は、今とてつもなく強運を示している。それも大富豪に5回、いや10回くらいなってしまうような程の強運を。


 そして、容姿端麗、頭脳明晰で今までを生きてきた。幸運な少女、東雲(しののめ)秋桜の身体の元で生活をしている俺が、今こんなにも運が悪いという事は、またこれも、身体そのものの持つ特性ではなく、生まれ持った。精神や、メンタル的な、いや同じことか、それらの持つ特性と言うものではなかろうか。


 結論付けてしまえば、俺は生まれつき、不幸で、秋桜は生まれつき強運である。この場合不幸の対義語は幸運だが、秋桜は幸運より強運だろう。


 それでも、俺はどこそこの神に与えられてしまった運命を自力で切り開いていかなければならない。それは人生にしても大富豪にしても同じだ。


 どうにかして、実力で貧民を脱退しなければならない。


 今、俺達が与えられている状況もはっきり言ってしまえば同じなのだ。


 今までどうにか誤魔化し、はぐらかしてきたが、頭の良い秋桜もそんな事では納得しないだろう。


 今まさに強運と言った秋桜も、実はそれと同時に、俺と同様の不幸の持ち主かもしれない。


 俺たちは、どこそこの神に与えられた、『入れ替わり』という状況を自力で、実力で切り開かなければいけないのだろうか。


俺は考える。


 

 それでも俺は答えが導き出せないので、今このように大富豪で苦戦をしているのか。


 不幸で全てを片づけるのか、それとも実力が足りないのか。そんな事は誰が決めるものでも無いような気がするが、それでもいつかは大富豪のように決着はついてしまうものだ。運であっても、実力であっても勝ち負けがついてしまう。


 けれど結局、大富豪はゲームであって、遊びである。楽しむのが、本来の目的である。


 それから言えることは、今の状況を楽しめ、という事ではなくて、それに見合った目的をなすべきだ。そいう事かもしれない。自分で解釈をしておきながら難しいことである。


 今の状況だから、しなければいけないことがある。今の状況だからできないことがある。



 きっと俺は、俺たちはそれをしていかないと、きっと元には戻れない。


 そう考えてもやはり難しいものだった。


 もう一度俺は視線を数枚のカードを持っている手元を見る。


 さてこの状況をどうしようか。


 俺は四枚ある9のマークを見て、考えていた。


「さあ始めるか」


「また一番とるよ」


「秋桜ばっか、一番とらせないもんね」かんなも生き生きとした目線を送る。


「ふぁーあ」今まで忘れていたジュンが欠伸をする。


 起こすか、起こさないか。


『革命』という二文字が俺の頭を過る。



どーも水無月旬です。

高校生として一度は学校でやったことあるものが、大富豪だと思います。

本当は面白みを増すために、麻雀をやろうとしていたのですが、麻雀を一から学ぶのは少し大変だったので…楽しました、はい。

地方によっては色々なルールがあって面白いですよね、例えば、『5とび』とか『7渡し』とか、『スぺ3返し』とか、まあ色々です。

聞いた話によると、全てのルールを取り入れると、全カードに何かしらの効果があるらしいです。

話がそれました。

それではまた。

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