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東雲草の花言葉  作者: 水無月旬
第五章
33/49

最悪な


 八月三十日


 結局夢落ちなんてベタな展開はなかった。


 昨日秋桜(あいか)の匂いが異常なほどいい薫りがしたのでドキドキして寝れなく、朝、右側で痛んだ頭を押えて、顔でも洗おうかと洗面台へ行き鏡を見たら、俺の外見はやはり極上品美少女、秋桜に違いない容姿だった。さてどうしたものか…


 起きた時、既に秋桜は布団にいなかったので、リビングに行くと秋桜はいた。俺の身体で。あとかんなももちろんいた。昨日とたて続いて、今日の朝食を準備していてくれているようだった。


 昨日の夜は両親は帰ってこなかったらしい。そういえば遠いとこに仕事に行くだとか…


「おはよう」


 少し寝ぼけた声になってしまった。


「「おはよう」」二人が返事を返してきた。一人はかんなの声、もう一人は俺の声。


「ごめん手伝うよ」


「悠介、いいよ。それより悠介(ゆうすけ)、お誕生日おめでとう」かんなは笑顔でそう言った。


「えっ?」


「悠介今日誕生日じゃないの?」


「今日何日?」別にとぼけている訳ではなかった。


「8月30日だけど」


「なんで知ってるの、俺の誕生日」


「なんでって、秋桜が今日だ!って前々から言っていたから」


「かんな、余計な事言わなくていいの!」秋桜はすぐさまかんなの言ったことに反応して、怒っているようだった。


「ごめんごめん」なんかバカにしているようににやにやと言っていた。


「覚えてくれていたんだ…夏祭りの時だっけ?言ったの」


「うん、悠、お誕生日おめでとう」照れくさそうに言う。


 素直に嬉しかった。たとえ言ってくれている人が俺の姿の秋桜でも、何となく面影として秋桜からしっかり伝わっているような気がする。


「ありがとう二人とも。二人は9月8日だよね、覚えてるよ」


「ありがとう。悠、後でプレゼント渡すよ。だけど今の悠には…」


「ん?」


「いや、何でもない!」


「そっか、ありがとうね」


 そう言って俺は朝食を待っていた。かんなにばかりやらせたら申し訳ないから、後で秋桜と後片付けでもしようと考えていた。


「はい、できたよ」


 かんなが朝食を持ってきてくれた。


「うまそう」


 かんなが作ったのはサンドイッチだった。8枚切りの食パン2枚にハムとレタスを挟んだだけのものだった。そう言うと言い方が悪いが、実際には栄養バランスが良くてサンドイッチ自体の見栄えもよかった。さらに美少女手作りのサンドイッチを食べれるなんてうまさ何倍か増しだろう。


 テーブルに置かれた瞬間、すぐに手が出た。


「いただきます!」


 サンドイッチを両手で持ち、口を大きく開けて口へと運ぶ。


 すると、サンドイッチのうまさに浸りたかったのに、かんながこんな余計な事を、これを言わなかったら、よかったのに…


「悠介、課題終わったの?今日夏休み最終日だけど」


「えっ?」


 口を開けたままサンドイッチが口に入りかけたところで硬直した。何をを言った、かんな。しばし頭がぐるぐると回転…どうにか言い訳を!


「ああ、か、課題?何の?夏期休暇の?今日が最終日ね。はいはい、それはそれは、今日が誕生日の人なんかは困るよね、課題が終わってなかったら追われる羽目になるんだから。しかしですね、終わってありますよ。とっく、とっく、とっくの昔に終わっていますよ」


「じゃあ見せて!悠」秋桜が手を伸ばす。


「あ、えっと、その…」


「早く!」


「すみませんやってないです」俺は席を立ち、土下座した。


「ほんと!?悠、正気なの?」


「申し訳ありません昨日は、色々とありまして、課題の事は頭になくてですね…」


「確か昨日は一割って言ってたけど、昨日の午後で何割になった?」


 もうものすごく秋桜が怖かった。


「半分にございます」


「本当は?」俺を睨みつける。


「2割にございます」これは事実だった。


「何やってるの!!」


「本当に申し訳ありません」


 俺は土下座してる反面、ちらっとテーブルの椅子に座っているかんなを見た、秋桜には目を合わせられない。


 すると、かんなはもう秋桜に任せたようで、一人で黙々とおいしそうにサンドイッチを食べている。


「どこ見てるの!」秋桜はまた俺を罵倒した。悪いのは俺なんだが…


「はいすみません。しかしですね秋桜様、憤怒は7つの大罪の一つでっ…」


「うるさいっ!怠惰も大罪の一つなの!」


「申し訳ございません」


 もう一度深々と頭を下げた。これじゃあ完全にSMじゃないか…


 秋桜の方をもう一度見ると、何故か秋桜は難しい顔をしていた。なんで俺の課題にそこまでするのだろう?


「悠、あなたは馬鹿だからわからないかもしれないけど…」


「なんだって!?」聞き捨てなりませんな。


「いいから聴きなさい」秋桜は思い詰めていた。


 なんだ?


「悠は良いかもしれないけど、今の状態を再認識して。今、悠と私は入れ替わっているのよ?これがどういう事かわかる?」


 えっ?俺は頭をめぐらせた。まず秋桜として、学校に登校するでしょ。そして課題を出します。


 これを秋桜が俺の姿でやったら…


「ま、まさか…」


「そのまさかよ、悠が課題をやっていない=私が悠の姿である限り悠の課題は出せない。そして私は悠の体で、課題をやっている私が代わりに怒られないとならないよの」


「じゃあ、秋桜がやった課題を出せばいいじゃん」


「ほんっと馬鹿」秋桜は呆れたように言う。


「なんだよ、バカバカって」


「いい、私がやった課題を悠の姿で出したって、課題にはもう名前が書いてあるの、それに筆跡ですぐ悠がやってないってばれちゃうじゃない。それに悠の姿で私が課題を出したら私の姿になっている悠はどうなるの?悠は怒られてもいいかもしれないけど、外見は私なのよ?転校早々課題を忘れるなんて馬鹿のレッテル貼られたくないよ。名門校から出てるから、余計、前のがっこうで落魄れてこっちに転校してきたと思われちゃうじゃない」


「そっか…」


「だから早く課題やってよね」秋桜が少し心配している。俺を心配するのでなく、あくまで自分を…


「でも、今からじゃせめて半分くらいしか終わらないよ…」


「じゃあ、もうしょうがないから私のを見せてあげる」秋桜はもう呆れていた。


「それでも、半分くらいしか終わらない…」


「何?もう写させてもらうの計算に入れてたんだ!?ほんと有り得ない」


「家庭科や、現社のレポートとか写せない課題もあるし…」


「徹夜でも無理なの?」


「徹夜を計算に入れて無理です」


 なんかもう秋桜が落胆していた。俺が課題をやらなかったことに悔んでいるのか、それとも入れ替わってしまった事に悔んでいあるのか…どっちもだろう。


「じゃあ、ふたりでやったら?」


 急にかんなが声をかけてきた。先程食べていたサンドイッチはもう食べ終え、皿を重ねて、運ぼうとしていた。


「二人でやれば今日中には終わるんじゃない?無理だったら私も手伝うけど」


「「えっ?」」俺と秋桜の声が重なった。


「それより、早く食べてよね。早く片づけたいんだから」


 やっぱかんなはいざというときに役に立ってくれると思った。


「それで、悠の課題が終わるんだったら…」


 秋桜も、秋桜で俺を心配してくれていたのかもしれないと思った。


 全部俺が悪いのだけれど、秋桜とかんながいてくれて本当に良かったと思う。


 最悪の誕生日にならなくて済みそうで、本当二人には感謝してる。早速今から机に向かおうと思った。



どーも水無月旬です。

やばい明日と明後日の更新分がありません

どうしましょうか、今から頑張って書きますが、満足いくものが出来るものか…

元々満足できるものは書いていませんが…

続きもよろしくお願いします

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