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東雲草の花言葉  作者: 水無月旬
第四章
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花言葉


 俺は本当に怠惰な人間だ。


 あれから食器を洗って、いざ課題!と思って机に向かったのが1時。


 今現在俺は家の庭に向かおうと階段を下りている。


 なぜかって?花に水をあげる為さ。


 なぜ水をあげるのかって?それは枯れない為さ。


 というのは嘘で、ただ単に勉強が嫌になった。


 ただそれだけ。


 秋桜(あいか)の部屋の方を見る。あれ?先程までドアが閉めっきりで部屋に閉じこもっていたのに、今、ドアが開いている。どこへ行ったのだろう。


 階段を下りて外へ出る。相変わらずこの家は広いなと思う。


「あれ?(ゆう)


 玄関から外へ出て、裏の庭へ回ると、庭の花壇の前には秋桜がいた。


「何してるの?」俺はすかさず尋ねる。じょうろを持っている様子から、秋桜も花に水をやりに来ているのだと推測できるが…


「花にお水をあげてるの」


「今、俺もやろうと思ってたんだけど…」


「悠は課題でもやってれば!」


 怒っているようにそう言った。忘れてた、まだ秋桜怒ってるのかな…


「まだ怒ってます?」


「知らない!」ふん、と顔を反らす。


「ごめん…」そう言うしかなかった。


「で?」


「ん?」


「だからどうなのよ」秋桜が焦らして聞いてくる。


「何が?」


「だから、課題の進み具合はどうなのよって聞いてるの!」また怒っている。


「ああ、」


「ああって何よ」


「いや、終わってないんだけど、集中力が切れちゃって」


「そう…」少し落ち込んでいるようだった。


 俺は正直なところを話した。秋桜だって本当は心配してくれてるのが今わかったから、しっかりやんなきゃな、と思った。


 秋桜は手に持っているじょうろで花に水を与えている。今日は良く晴れた日だったので、じょうろの先から出た水が虹を作り出していた。与えていた花の花弁や、その葉に水滴がたくさんついて、キラキラ輝いていた。



「悠、朝顔の花言葉って知ってる?」


 秋桜が朝顔に水をあげていたところだった。その朝顔は紫色よりも少し濃い色をしていた。


 花言葉?秋桜は確かにそう言った。


「ううん、知らない…」


「友情、愛着、固い約束、愛情の絆、そして儚い恋」


 秋桜は何か遠い目をして朝顔を一心に見つめてそう言った。


「へぇ~、詳しいな」俺はそうとしか思っていなかった。


「花と、花言葉は詳しいの」


 女子力低いのに意外と女の子っぽいところもあるんだな…


「ここにある朝顔は普通のと違うの。西洋朝顔で、“ヘブンリーブルー”って言ってね、花言葉は普通の朝顔と変わらないんだけどね、『結びつき』っていうのが主になっているの。今は少ししか咲いていないけれど、ヘブンリーブルーは涼しくなると咲頃を迎えて、花の色は気温が高いと赤紫色になって、夕方にはもっと赤くなるの。本当は青色が鮮やかな花だけど、青色になるのは気温が下がってから、日本で言うと十月くらいかな」


「本当に詳しいんだな、花屋になれるんじゃないか?」


「好きで覚えただけだから…」


 照れた顔でそう言う。まるでそこにある朝顔のようにだんだんと紅がさしていって、何とも可愛らしかった。


「あと、朝顔は別名『東雲草』とも言うんだよ」


「東雲草…なんか俺達に似合ってるね」


 東雲という苗字がすぐに頭に浮かんだからだ。秋桜の方を向いて言った。


「う、うん…」


 秋桜が急に顔を反らす。どうしたんだ?


「あ、そうだ。もっと他の花の花言葉教えてよ」


「悠、課題は?」秋桜は目をきつくしていた。


「いいから、いいから」なんて能天気な野郎だ、俺。


「もう!しょうないんだから、で、何が知りたい?」


 課題の事にあんな厳しく言ってたのに、こうもあっさりとあきらめてくれるなんて、花の事を話すのはまんざら嫌ではないようだ。本当に花が好きなんだな。


「うーん、そういえば、秋桜って、コスモスの事だよね、コスモスの花言葉は?」


「えっ?」秋桜は驚いているようだった。なんで?


「秋桜ってコスモスって意味なんじゃないの?」


「あ、あー…コスモスね……わすれちゃった…かな?」


 ん?何かわざとらしいけど…慌ててる?


「自分の名前なのに忘れる訳ないよね?」


 俺は少し突いてみた。だって秋桜嘘つくの下手過ぎなんだもん、こないだのギター黒歴史の話とか。


「そーだね、あはは…あはは…。 そうだ、かんな!かんななら覚えてるよ、かんな、かんな。カンナは永続、情熱、堅実な未来。夏の花だよ。私達夏に生まれたからね、ハハハ… あ、あと、今水あげているのは向日葵なんだけど“イタリアンホワイト”っていう品種で、向日葵の花言葉は、憧れ、光輝、愛慕、なんだよ」早口でそう続けた。


「いきなり多弁になったな…」


 秋桜が言っていた向日葵を見る。色は普通と違って薄く、レモンのようだった。なかなか美しくて、しかもあまり見ない小ぶりの向日葵だった。何となく暑苦しさも抜けるような見た目の花だった。


「この向日葵は、開花前の蕾を食べることが出来るんだよ」


「えっ、食えるの?」


「でも、食べちゃだめだよ。ここにある花はあくまで観賞用なんだから」


「ちぇっ」


 俺は口を尖らせた。


 それを見て笑う秋桜は水を浴びた花のように輝いている気がした。




 それよりコスモスの花言葉は?


 秋桜が話をはぐらかしたってことは言いたくなかったってことだな。なんで言いたくなかったのかはわからないけど、


 いいや、あとで自分で調べよう。




どーも水無月旬です。


ようやくタイトルの意味がわかり始めた今回。


やっと物語が進んでいくような気がします。


読書もしたいし、小説も書きたい。ミステリも書きたいし、こっちも書きたい。

軽音部も頑張んなきゃいけないし、演劇も公演が控えてる。

そして課題が…

御多忙な作者水無月旬でした。

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