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東雲草の花言葉  作者: 水無月旬
第三章
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3つの質問

ナンパに絡まれた秋桜をようやく助け出した所で悠介は秋桜にされた質問で昔の事を思い出してしまう。


悠介(ゆうすけ)くん、悠介くんに3つ聞きたい事、訊いていい…?」


 秋桜(あいか)が歩き始めてすぐ思い出したように開口一番にそう言った。


「う、うん、何?」少し緊張した。


「まず1つ、悠介くんはなんであの人たちが未成年ってわかったの?」


 ん?何の事だ?と一瞬思ったのはあの時頭が無意識に近かったからな。


「いや、あの五人の内、一人が中学の時の2つ上の先輩だったんだ、髪染めていたから確かとまではいかなかったんだけどね。あの五人がタメじゃない可能性もあったんだけどね」


「じゃあ飲酒の事は?」


「あれは鎌をかけてみただけ、ああいう時って大体は飲んでるだろ?はったりさ」


「ふ~ん、そう」


 並んで歩く。もう手は繋いでいないが、お互いに微妙だった間隔が少し縮まっていた。


「じゃあ二つ目、なんで私を置いてどこか行ったの?」


 少し怒っているようだった。それはそうだろうな、本当に悪いことを俺はしたんだ。


「なんでって、俺は、あの時秋桜の機嫌をとろうと…」


 言葉が詰まった。俺は大切な事を忘れていた!!


「ああ~!!」


 俺は思わず叫んでしまった。


「どうしたの?」


「か、か、かき氷が!」


「かき氷?」


「いや、秋桜が機嫌悪くなっちゃったからかき氷屋台の一番高い『練乳宇治抹茶金時』を買って、持っていこうと思ったら、秋桜がチンピラに囲まれてて、それを慌てて助けようと思って…」


「思って?」


「近くの石段に置いてきました…」


「ちなみにいくらだったの?」


「700円…」


「700円!?」


「言わないでぇ~」


 俺は悶えた。今から取に戻るのは可能か?いや不可能だろう。


 すでに歩いてから10分は経っているし、かき氷を置いてからはかなりの時間が経っている。そして何より俺はあの時は慌てすぎてかき氷をどこに置いてきたのか覚えていなかった。 不覚…。


「悠介くん、いいよ。また買おう!今度は安いやつでいいから」


「うん、そうだね…」


 今度は俺の分も買った。俺はピーチ味にして、秋桜さんはメジャーだけど、人気がそれほどあるわけではない、いちご味にしていた。どこかの石段の上に腰を掛けて座って食べた。


 時々頭がかき氷の冷たさでキーンとなる。秋桜さんもそうだった。俺はその少し辛そうな顔を見て微笑ましく思った。そして口の中はたぶん俺はピンク色、秋桜さんは朱色に染まっているだろう。小さい頃、舌をベーと出して友達とふざけ合っていたものだ。


「でさ、あと1つ」


「何?」


「さっき会った中学の同級生の事なんだけど」


「あー、…」


「言いたくなかったら言わなくていいよ。あの人と何かあったの?」


「どうしてそう思った?」


「いや、あの人と会った時、悠介くんが嫌そうな顔をしていたから…」


「俺、あいつ苦手なんだ」


 俺ははっきり言った。言いたくなかったけど、秋桜になら話してもいいと思った。


「苦手?」


「俺、中学の時、あいつの事が好きでさ、それで告白したんだけど、こっぴどく振られてさ。まあ、それも昔の話なんだけどね」


 そう昔の話。


「そう、なんだ…なんかごめんね」


「秋桜が落ち込むことないさ」


 ……………。


「今でも好きなの…?」


 秋桜は恐る恐る訊いてくる。秋桜は必ずと言っていいほど、話をするときは人の顔、目を見て行って来るのに、今だけは、下を向いて話していた。


「もうどうでもよくなった」


 氷がもうほとんどなくなって、後は溶けた水とシロップの混合液が器には残っていた。


 そうこんな風に俺の気持ちも溶けていったんだろうな。


 俺はそれを一気に飲み干して、まるで自分の気持ちを飲み込むように、一気に器の中の物を飲み干したくて、器の中から消したくて、冷たい液体を飲み込んだ。


 秋桜もそれを飲み込むと、俺の空になった器を俺の手から取って自分のと重ねて、


「あの時、彼女のフリでもよかったのに…」


 と、よく聞こえない声量でそう言って、ゴミ箱へそれを捨てに行った。






どーも水無月旬です。

テストが2月にようやく終わって、それから公立高校入試で休講だったのですが、思ったようにこちらが進まず、少し期間が空いてしまいました。

しかし今週もいつも通りに投稿させていただきます。

1月の終わりごろから書いていた、短編もこの間やっと完成いたしまして、自分の中では一応に自信作を仕上げることが出来ました。

いつか皆さんに読んでもらえるとうれしいです。まだ投稿はいたしません。

水無月旬でした。

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