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東雲草の花言葉  作者: 水無月旬
第三章
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決意の夜に

ナンパに絡まれてしまった秋桜を助けようと悠介は勇気を振り絞り…


それとは裏腹祭りを楽しんでいるかんなたちは


「ちょっと何やってるんですか!」


 俺は勇気を出した。秋桜(あいか)が危険な目にあっている。考える前に体が前に出た。


 秋桜を守る!


悠介(ゆうすけ)くん!!」


「なんだお前、こいつの彼氏か?」


 五人の内の一人が訊ねてきた。顔はへらへらと笑っている。完全に俺をなめきっている態度だった。周りの連中を見る限り、何も武器になるような物は持っていない。こいつらはただのチンピラ共のようだった。


「ち、違います…」


 声が震える。少しは大丈夫だと思ったがやっぱり、自分より年上は恐い。


「じゃあ、いっか。この子はお前なんかより俺達といたいんだってさ。さあ、ガキはさっさと立ち去りな」


 その言葉に釣られて周りの奴等が不快の笑いを上げる。はっきり言ってこいつら下衆い…


「さぁ、君ぃ、いくよ」


 秋桜の腕をぐいぐい引っ張る。


「ちょっ、やめてください!ぐふっ…」


 秋桜は彼らの内の一人に口を手で塞がれ声が出せなくなっていた。その男共は五人いたのでその全員で秋桜を囲み、一見周りから見ても秋桜は死角で見えないようになっていた。


 っつ!!


 男共の囲む隙間から秋桜が見えて、彼女と目が合った。一瞬だけだけど、目に涙を浮かべていたのが見えた。


 俺はどうしようもなく怒りが立ち込めた。


 もちろんこのチンピラたちに、そして自分の不甲斐無さにあっさり秋桜を連れていかれてしまった事に!


 俺は震えていた。もう怖さなんかじゃない。


 何もかもが許せなくなって、やっぱり体が前に勝手に出ていた。


「おい、お前等!!」


 わざと大きい声を出した。こんな祭りの状況でも半径10m位には届くように。


「おいお前、なんだ?ふざけてんじゃねーぞ」


 言葉は怒り交じりの言葉だったが、相手の発言には威厳が感じられなかった。


 さっきの怒鳴り声が周囲に聞こえてしまったので、相手は少し困惑しているようであった。結局こんな奴等だ。


 周りが少しざわついていた。


「お前達、今すぐ秋桜をはなせ」


「はぁ?こいつは自分からついてくると言ったんだぜ。なぁ?」


 そうだそうだ、と他の奴らが言う。


 そんな事を俺は訊いているんじゃねーんだよ。


「いいから、放せ」


「やだなぁ、俺達を勝手に悪者みたいにしちゃって」


 笑いながら言う。しかし俺にとっては馬耳東風だった。


「最後に言うぞ、秋桜を放せ。 今日は祭りだから警備に出ている警察も多い。ここから呼べば五人は来るだろうさ。警察のお世話になりたくなきゃとっとと去れ。未成年飲酒ばれたら困るでしょ?」


「くっ、こいつ生意気な事言いやがって」


 目の前にいる年上の男は秋桜を放して近くの路地裏へと姿を消した。通りかけの野次馬達が数人周りで見ていたからだ。しかし誰も奴等を追う事はしなかった。


「悠介くん!」


 秋桜は感極まり俺に飛び込んできた。俺はそれを受け止めると、


 パチパチ、とその場で拍手が起こった。さっきの野次馬達だった。そうして俺はほぼ頭が真っ白で動いていた自分に気が付いて、呼吸がぜーぜーと荒くなる。今のは絶対、やばかった。小市民的ではなかった。


「ありがとう悠介くん」


 秋桜はまだ俺の胸の中にいた。震えていて、そして非力に俺を抱いてくる。


 俺は周りにその光景を見られていて顔に紅がさす、が秋桜はただただ感情を自分にぶつけているようで、震えていた。


 俺は秋桜の両肩を持って少し話してこう言った。眼を見て。


「ごめん!本当にごめん!俺の不甲斐無いせいで!」


 本当は秋桜に顔を見せたくないくらい自分が惨めだと思ってた。秋桜の眼を見るその時までは。


「うん、いいよ。結局悠介くんが助けてくれたから…」


「ごめん…」


 俺は本当に情けない奴だと思った。結局は秋桜に励まされて…


「ここじゃ目立っちゃうから行こう」


「うん…」おれはまたも情けない返事をした。


 でも秋桜は俺の手を右って引っ張った。何もないかのように手をしっかりと、ぎゅっと握った。


 俺は秋桜に助けられたような気がした。


 こんな俺でも引っ張ってくれる。



『私が悠介くんを幸せにするから!』



 またあの一言がよみがえる。


 二日前の夜、両親の話の時に言った秋桜の言葉。


 本当は俺が守らなきゃいけないのに、なんで秋桜は…





 そして俺はある決意を胸に閉じ込めた。




 


 行間


 買った焼きそばを食べていたかんなさん達。


「向こう側が何か騒がしいね」


「ん~、そうだね」


 『はなせ!』だとか『ふざけんな!』となそんなような声が聞こえていた。その周りに野次馬たちが囲んでいて良く見ることは出来なかった。けれどなんなさんは見に行こうといなかった。尾行は好きでも野次馬は好きではなかった。それに戯言ばかり聞こえるので、それはもうケンカ以外の何事でもないと分かっていたからだ。


拓磨(たくま)さん、あと花火見たら帰りましょう。どこか花火が良く見えるところってあります?」


「あっち」


 ジュンは素っ気なく指差す。


 そして二人は祭りの光と人ごみの中へと消えていった。





どーも水無月旬です。

ベタなナンパ展開を終えて次から2,3話は引き込んでいくいい感じになると思います。

まだ起承転結の起の途中です

水無月旬でした。

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