散った花
かんなたちとお互い別行動を取ることになった悠介たちは、悠介の過去の同級生、増花薫と出会う。
「あれ?横山だ。久しぶり」
後ろで俺の名前が呼ばれたので振り向く。もちろん今の苗字は東雲なのだが、それが俺にあてられたのだと気づくのにはそう時間がかからなかった。
「ん?」
俺は後ろを振り向いた。するとそこには少し派手な格好をした二人のカップルが立っていた。派手ではなく、チャラい感じだった。
「あ、増花」
一人は面識があった。まず面識がなければ声をかけられないと思うが。
「久しぶり『にあったのに挨拶もないわけ?」
「よ、よう、久しぶり」
「相変わらずね」
彼女は増花薫。中学の同級生だ。高校は俺とは別の所に通っている。
俺はこいつが苦手だった。ある理由があって…
「こいつ誰?」
「中学の同級生」
「ふ~ん」
ちなみに俺の事をいきなり『こいつ』呼ばわりしたそいつは、はっきり言って誰だか知らない。まあしかし、増花の彼氏だって事くらいはいくら空気が読めない奴でもわかるだろう。俺と秋桜さんが微妙な空間を空けて並んでいる前で堂々と腕なんか組んでやがるからだ。
「それにしても、へぇ~。横山に彼女が出来るとはねぇ」
か、かっ、彼女!?
秋桜さんの方を見る。秋桜さんも俺を見た。そして一瞬何を言われたのかに気づくのに遅れて、お互いにうつむいて頬を互いに紅潮させた。
「ち、違うこいつは俺のきょうだいだっ」
何とか言い分を考えた。あながち間違いではないだろうし。
「へぇ~、横山きょうだいとかっていたんだ。ちなみに姉?妹?」
「妹」ボソッ。
躊躇わずことなく言った。たぶんかんなさんだったら姉と答えていただろうと思うが。
俺は気づかなかったが、そう言った直後に秋桜さんは隣で震えていた。別に寒いから震えていたからでもない。怖いことがあるからでも、緊張からでもない。言えばそれは怒りの震えだった。
「ねぇ、もういこうぜ」
増花のそいつがいった。いいよ、さっさと行ってくれ。
「うん、じゃ、じゃね」
「うん、じゃあ」
愛想笑いを浮かべ、手を振る。
増花たちがいなくなったのを確認して、秋桜さんを見る。見ると何故か秋桜さんは俯き様だった。
「どうした、秋桜さん?」
優しく声をかけると、予想外の反応が返ってきた。
「妹ってなんですか!妹って!私達同年齢ですよね!しかも即答って!私ってそんな幼いですか?童顔ですか?大人っぽさに欠けてますか!?」
「あっ、ごめん、ほんとごめん!」
「謝ってすむ事じゃありません」
ふん、と顔を背ける。
じゃあ、何て言えばよかったんだよ。俺たちの関係を説明するには少し苦難だぞ。
うん、まあ、そういうところが子供っぽいかな、と笑ってみせる。
「って、なんで笑ってるんですか。反省の色が見えません」
「ごめん。お詫びにお兄ちゃんが何か買ってあげるぞ、秋桜」
秋桜さんの反応があまりに子供っぽくて、面白いので、滑るの覚悟でボケてみた。そして秋桜さんの名前を初めて呼び捨てにした瞬間だった。
「ううううううううぅ!」
逆効果だった、そもそも秋桜さんは怒ると唸る特徴があるようだ。じゃんけんの時もそうだったな。
「秋桜、ちょっとここで待ってて」俺は秋桜さんをこの場に止めて、俺は少し機嫌直しのアイディアが浮かんだので、この場を去ろうとする。
さっきのがまだ残っていたのか、呼び捨てで言ってしまったのだが、秋桜さんはあまり気にしていないようだ。俺もそろそろ『さん』付けで呼ぶのは疲れてきたと感じていたころだ。
「待っててって?」
「ほんの二、三分で戻ってくる。迷子になんなよ。ケータイ持ってないんだから」
「えっ、あっ、また子供扱いして!」まだ怒っていた。
そして俺はこの場を去る。秋桜さんを一人残して。
どーも水無月旬です。
テスト終わりました。辛い。
苦行でしかなかった。
今気づいたのですが、この話季節外れの夏の話ですね(笑)
これを書いていたのが秋だったので、ついつい普通に載せていました。
まあいいでしょう。
水無月旬でした。