幸福のオムライス
オムライスを作ることになった三人だが、完成した料理を見て…
「ねえ、これナンデスカ?」
ガチなる疑問。純白のプレートの上に乗っかっている黒い灰団子を見てそう言った。
「オムライス…」ボソッ
「どこがっ!」
軽く秋桜さんとかんなさんを怒鳴ってやった。少し萎えたようになった。さっきまでの威勢はどうした?
ここで俺が一応にオムライスとなる食べ物について話しておこう。
オムライスというのは日本で生まれた米飯料理である。ケチャップで味付けされたチキンライスを焼いた卵で覆い包んで作るいたって簡単な料理だ。オムライスという料理は味も美味なりて、日本では赤いものを黄色いもので包むのは縁起が良いとされ、その外見からも長らく愛されてきた料理なのである。
そして差し当たって、この器に乗りたる暗黒物質。これは食べ物と呼ぶべきか否か。
「はぁ~」俺は溜息をつかずにはいられなかった。
2人を見た。俺を見ないでずっと皿に乗った黒い物質を見て落ち込んでいるようだった。これは、よほど反省しているように見えた。
「まぁ、しょうがない」
俺は恐らく疲れ切った顔でとことこと台所へ歩み寄り、まだ大分残っている白米(米はしっかり炊けたようだ)を野菜などと炒めた。それをケチャップで赤く染めて、調味料で味付け、炒めている間に卵を割って溶く。そういえば昼も焼飯だったな、これもある意味焼飯だし。なんて思いながら、卵に牛乳、砂糖を入れる。チキンライスを別の容器へ移動させ、フライパンにバターを入れ、卵を注入して卵を焼く。
我ながら手際良い作業だったと思う。
皿には上手に出来上がった黄色く輝くオムライスが乗っている。そしてその完成形の皿は2枚ある。両方ケチャップがかかっているタイプのオムライスだ。
「ほらよ」
俺はそれを手にもって、台所から食卓のテーブルにもっていく。そこにはさっきと同様、真黒な物質を見つめている双子が座っていた。俺はそこに差し出した。
「えっ?」
「いいの?」
「食べな。こっちは俺が食うから、ちょうどデミグラスのが食べたかったんだけど、生憎そっちはケチャップかけちゃったから」
そういって俺はガツガツと暗黒物質、または灰団子を食べた。
いや、恥ずかしい。たいしてかっこよくね~、と顧みる。しかもデミグラス食べたいって言ったのに、この黒い物質をよく見ると、チキンライスの焦げたバージョンらしく、デミグラスはおろか卵すらない。これじゃあやっぱりただの焼飯じゃねーか…。
それにダブルアタック。暗黒物質のまずさが俺を襲ってくる。顔を平然と装う事すら儘ならない。恐るべしきょうだい。
「いただきます…」
2人は申し訳なさそうにスプーンを手に取り、一口。
「おいしいっ!」「悠介くん、おいしいよ」
2人から感銘の声。2人に笑顔が戻った。
「た、たいしたことねーだろ、そんなもん」
またかっこつけた…自分でも分かっていたが、2人はそんなのお構いなしに、
「すごい悠介くん。プロみたい」
「こんなおいしいオムライス初めて食べた」
そう、これだ!
別に俺は恰好つけるために2人に作った訳じゃなく、ただ単に俺の料理を食べて欲しかっただけだった。
おいしいと言われて良かった。2人の笑顔が見れて良かったと思った。
今まで孤独に1人で食事をしていたから、これがどんなに嬉しいか、今ですら実感がない。たとえどんなにおいしくないチキンライスを食べていてもそう感じられた。
しかし、こんな結果になるとは、俺はかつて暗黒物質のあった皿と、笑顔に咲く二人を見て俺はそう思うのだった。
「気をつけて帰ってくださいね」
2人が靴を履いている俺に声をかけた。
「うん、明日もよろしくね」
「今日はありがと…」
秋桜さんが言ってきた。最初に比べて随分と俺と喋るようになったなと今更になって感じた。
出かける前に時間を確認する。
午後9時。あれからジュースを飲んで、お菓子を食べたりしながら他愛のない四方山話をしていたのでもうこんな時間だ。
ふとあることに俺は気づいた。1件メールが届いていた。送信者の当人はジュンだった。何か嫌な内容しか想像つかない。夕方もそうだったもんな。しかし、そうでもなかった。逆にありがたい知らせ、つまり俺にとって朗報だった。
『悠介、夏祭りどうする?一緒に行く?俺、明日なら行けるけど。』
そうだ。
「ねえ、明日、夏祭り行かない?」
俺は2人の美少女たちの前でそう言った。
どうも水無月旬です。
テスト期間なのに構わず書いてます!
どうせこれが俺の黒歴史になるだろうと思いながら書いてます(笑)
この小説は、本当は書きたいミステリーを書くために、地の文の練習用に書いています。どうしても会話表現が多い推理物ですから、一回それを離れてみようかと…
今回の話はオムライスの話、途中でオムライスは縁起の良い食べ物だ、と言っていますが、自分の中ではそうであると信じています。
まあそんな事で明日もお楽しみに
水無月旬