料理
両親が仕事で出かけ、三人だけになった東雲家。
夕飯を作ることになるが、またもや戦線を張ることになる。
「じゃあ、俺行って来るわ」
何処へ?というと、夕飯の食材調達である。
夕飯は自分達で、とのことだったので、今日の夕飯を何にしたものかと、俺は新品の巨大冷蔵庫を開けてみるや否や、冷蔵庫の中は空っぽであった。さてどうしたものかと思ったが、そう言えば母さんが
『お金置いておくから』
と言っていたのを思い出し、探したところ、食卓のテーブルの上には何も置き紙がある訳でもなく、ただそこにはポツンと福沢諭吉の顔があった。
多分これで何かを買えってことだろう。一応両姉妹というか、双子に訊いて、このお金が二人の物でないか確認をした。
「まって、私も行くぅ~♪」
出かける間際、かんなさんはが突然そんな事を言い出した。
まあいいか。
「いいよ、でも…」
「でも?」
俺は秋桜さんを一人この家に置いておくのは少し危ないと思ったのだ。
『秋桜ちゃんとかんなちゃんにもし何かあったら許さないからね』
母さんの言葉を思い出す。よし!
「じゃあ秋桜さんも一緒に行かないと」
そう言った時、偶々秋桜さんが階段を下りてきて、俺の話を聞いていた。
「う、うん」
小さな声で返事をする。
「早く準備して」
「え~秋桜も一緒に来るの?せっかく悠介さんと2人きりになれると思ったのに!」
え~、急に何を言う。少し気持ちをを揺す振られたじゃないか。
「何?私が居ちゃ悪いの?」
「いや、別にぃ~」
おいおい、姉妹ケンカやめてくれ。それなら1人で行くぞ。
そんな事を考えていたのだが、家から出ると後ろから何か仲の悪い不機嫌な2人が外に出てきたので、俺は鍵を閉めて出かけた。
俺は自転車で行く予定だったが、2人がついてきたので3人で歩いて近所にある、前に一度だけ行ったことのあるスーパーへと足を運んだ。
………………。
近所にあるといっても歩いて10分くらいかかるところだ。その間、秋桜さんとかんなさんはまだお互い機嫌がよろしく無いようで、一言もしゃべらなかった。気が重いな…。
「ん、そういえば2人とも料理って出来る?」
やっとの第一声。俺は料理は毎日していたのでてっきり自分で作ろうかと思っていたのだが、この2人は料理は出来るのだろうかとふと疑問に思った。できるならぜひお願いしたいから。
「あたりまえでしょう」秋桜さんがあるかどうか微妙な胸を張ってそういった。
すると、
「うそー!?」とかんなさんがもう何もかもが信じられないような驚く顔を見せて秋桜さんに訊いていた。
「何言ってるの、料理はね、女子力の見せどころよ。料理くらいできなくちゃ」
「でも東雲家で作ったためしないよね。ほとんど買ったものばっかし食べてたし」
何!?そんなんじゃ栄養失調になるぞ!と主婦?の俺からそう言ってやりたかった。
「そういうかんなは出来るの?」
「うっ、ま、まぁ、人並みにわね」
何か五十歩百歩な気がするなぁ。じゃあちょっといじってやろうかな。心が疼いた。
「じゃあ今日は2人に夕飯任せていい?俺とってもたのしみだなー」
あからさまの棒読み。それにイラッと来たのか、
「じゃあ悠介さんは料理できるんですか!?」
かんなさんから強意のある疑問を投げかけられた。そんなのお構いなしに、
「うん、できるよ。余裕」
宣戦布告してやった。
「じゃあ何か作ってくださいよ」
「明日作ってあげるから、今日は2人に譲るよ。せっかくおいしい料理を作ってくれるっていうし」
思い切り嫌みったらしく言ってあげた。
「うう、」
向こうも頭に来たようだ。安心して、そんな事させないから、俺の飯がなくなっては困るからな。いざとなれば俺が作るさ。
なぜ俺がこんなにも自信ありげに事を言っているのかというと、俺は知っていのだ。 何を?
現代の女性はあまりに女子力欠乏症の人が多いことに。
それは学校の家庭科で知った事実。そしてこういう風に自信を作り話にしている女子程、そういうのには疎かったりするのだ。
そして一方俺の事なのだが、母さんがいつも家にいなかったせい、おかげで、俺は超家庭的男子へと育ってしまった。朝昼夕と三食作っていた俺には不思議だった。中3の修学旅行中に勝手に食事が用意されていることが。そんな高校生なのだ、俺は。
双子との多々の無駄話の末、今日は両親が不在なのだが、いち早く引っ越し祝いをしようという事になり、そのため渡された福沢さんをフルに使い切ってしまう勢いで買い物カゴの中へどんどんものを入れ込んだ。ほとんどジュースとお菓子なのだが…夕飯は簡単なものにしようという事でオムライスにすることにした。米とケチャップ、肉と野菜、調味料で安易にできる。
予算を超えてないか確認したところで、かんなさんはこんな余計な事を呟いた。
「悠介さん、オムライスって、デミグラスソースをかけるんじゃないんですか?」
「ん?うちはケチャップ派だけど…」
「東雲家ではデミグラスですよ」
「ちょっと聞かせてもらうが、それは誰が作るんだ?」
「お父さんです。ケチャップでなんて食べたことないですよ。第一ケチャップで味付けされたご飯の上にまたケチャップってくどいじゃないですか」
「だから、なんだ、作るのは俺だぞ、たぶん、そういう事になるから…」
「何それ、悠介くん、私たちがオムライス作れないと思っているんでしょ」
「うわぁ~嫌な気分」
2人が俺を罵りやがった。はたから見れば単なるきょうだい喧嘩だがな。
「じゃあ作ってみてくださいよ。そのデミなんちゃらっていうオムライスをよぉ」
我ながら性格最悪の貧乏性のある言い草な気がしなくもなかったが気にしなかった。
「そうだ。じゃあ、3人で作って、誰が一番上手にできるか勝負をしよう。勝ったら、勝った人のオムライスを東雲家のオムライスとして認定される。これはどう?」
「何、その自信、どこから出てくるわけ?」
「いいよ、らくしょーだよ」
ふっ、上手く口車に乗ってくれたか。こうすれば、俺は安定して自分の料理が食べられる訳だ。飯がなくなる心配はない。一石二鳥。
またもや火花を散らす3人。今回は運試しのじゃんけんなんかではなく完璧に実力が求められる勝負であって気の入り様が違かった。
俺たちは兄妹としての関係じゃないと結んでいられない気もしたが、まあいいか。
どーも水無月旬です。
今回は、三人が仲良く話し合っているシーンですが
作者は料理はからっきしです。
この間家庭科の授業で奇跡的に卵焼きがうまくいったのは良いけれど、それ以外は作ったことはありません、炒飯くらいは出来ます。
心底悠介がうらやましいですね
料理ができない水無月旬でした。